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しおりを挟むしかし、いくら父が沈黙しても、子爵家はいずれ気づくだろう。
「そのミオナさんが亡くなったということは、おそらく子爵家の魔石で気づくのではないですか?」
「いや、平民との結婚を選んだことで魔石と共に勘当された可能性は高い。
しかも、彼女は貴族籍を捨てて平民籍を得た後、別の平民籍で夫と結婚している。縁を切って、後を追えないようにしたようだ。」
ではなぜこの調査結果があるのか。そこは伯爵家としての何らかの力があったのだろう。
子爵家では教えてもらえない何かが。
「ということは、子爵家がナターシャについて何か言ってくることはないと?」
「そう思っている。だが、本当の父親については検討もつかない。」
魔力が多い場合、親子、あるいは兄弟だとわかる方法はある。
例えば、手を繋いで魔力を流し合い、受け入れられれば血の繋がりがあるのだ。
親兄弟以外ではなんとなく反発が起こる。
父親が既婚者の場合は、ナターシャの存在は歓迎されないだろう。
よくて、魔力を有効活用されるだけになる。
それに、ナターシャはターリオを父親だと思っていたのだから、本当の父親は別にいるけど相手がわからないなんて言われたら戸惑うだけに違いない。
結局、ナターシャに素性を知らせても意味がないという父と同じ結論に達するのだった。
学園の後期が始まった。
友人に会えるのは嬉しいが、婚約者との付き合いがまた始まると思うと憂鬱になる。
ルーズベルトの婚約者は1学年上の侯爵令嬢メリッサ。
少々、派手な令嬢である。
何が派手なのか。顔も服装も髪型も。存在も派手だろう。
彼女の学年には、王族も公爵令嬢もいない。
そのことが、メリッサの派手さを増長させる一因でもあった。
巻き込まれたくないと引いている令嬢たちが多いため、目立つのだ。
だが、傲慢とは言えず、ただ、自分を着飾ることが大好きな令嬢である。
何か、とんでもないことをやらかして婚約が解消になってくれないかとルーズベルトは祈る日々である。
「やあ、ルーズベルト。領地で静養してきたか?」
友人の公爵令息クレメンスがやってきた。
静養、か。言い得て妙だな。
「おはよう、クレメンス。やっぱり領地は空気がおいしいよ。」
クレメンスの休暇の話を聞いて笑い合っていると、クレメンスの婚約者、ジェシカがやってきた。
クレメンスと一緒に来たのに、別の令嬢と話をしていたようだ。
「おはよう、ジェシカ嬢。」
「おはよう、ルーズベルト様。表情が明るくなったわね。」
「ははは……」
長期休暇前はメリッサに領地に帰るなと言われ続けて疲れ果てていた。
買い物・観劇・お茶会・ピクニック。
その繰り返しで長期休暇が潰れるだなんて、耐えられずに領地へと逃げた。
あぁ、今すぐまた領地へと戻りたい気分だ。
そう思いながらも新学期を楽しんでいた数日後、ジェシカを見て顔を青くすることになるとは思わなかった。
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