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17.
しおりを挟む先に部屋から退出したウィルベルトは両陛下に話し合いの結果を報告するために向かっていた。
いつも通りの平常心に見せかけて、ウィルベルトの心の中は歓喜に溢れていた。
『またディアンヌをこの腕に抱くことができる』
話し合いの一番の目標がそれだったのだ。
ルドルフを王族として迎え入れることは、いくら彼らが拒絶しようと決定事項だったから。
しかし、事前に覚悟を決めていたようで、最後の足掻きほどで拒絶というほどのものではなかった。
いろいろと複雑に渦巻いていた胸中が、満足いく結果に穏やかになっていた。
両陛下の待っている部屋に入ると、国王である父が待ちわびていたようで聞いてきた。
「どうだった?お前の子供だと認めたか?引き渡しに同意したか?何か条件を突き付けてきたか?」
「ディアンヌはルドルフが私の子供であると認めました。
オリアナを女王に、ルドルフを臣下にと今のままデルード家の跡継ぎにすることを望んでいました。
しかし、キャサリンとオリアナの体質の話をすると、引き渡すことに同意しました。」
「そうか。強引に引き離してしまうのは避けたいことだったからな。それで条件は?」
「特には。ですが、毎週、ルドルフに会いに来ることは許可しました。
その際にディアンヌは私の後宮に泊まります。」
「お前の?客室ではないのか?」
「ええ。デルード家の跡継ぎのために、私の子種を授けることにしました。
ですが、囲われるのは断られ、通いの公妾という特殊待遇ですが。」
「子種って、お前、できるのか?反応するのか?
それに、伯爵が許可したのか?」
「ええ。彼女にだけ。
伯爵には実は学生時代からの恋人がいるそうです。ディアンヌは承知で結婚している。
2人は夫婦ですが、男女の仲ではないそうです。
前伯爵との結婚も跡継ぎのためだったそうです。」
「そういうことか。だが、伯爵の恋人が産めば良かったんじゃないか?平民か?」
「伯爵の恋人は、子供を産めないそうですので。」
「跡継ぎのために妻や他の女性を抱く気になれないほど一途なのか。
……いや、ひょっとして、アレか?アッチなのか?」
「そうだと思います。」
「ならば致し方ないか。
となるとディアンヌ夫人の年齢からいっても早いに越したことはない。……励めよ。」
「もちろんです。」
ニコニコと話を聞いていた母が言った。
「非公式でも孫が増えるのは嬉しいわ。ディアンヌさんを妃にできないのは残念だけど。
あなたが側妃を断っていたのは彼女が忘れられなかったのね。」
「……はい。」
ウィルベルトは王太子として、妻となったキャサリンとの間に子供を設けなければならなかった。
やがてキャサリンが妊娠し、オリアナが産まれた。
夫婦仲は悪いわけではなかったが良いわけでもなく、結婚して早々に水が合わなくて苦労していたキャサリンは国に帰りたがっていた。
妊娠するたびに帰国する可能性が下がることを恐れたキャサリンは、『王子を望むのであれば側妃を』と言い、ウィルベルトとの閨事を拒否したのだ。
それにより、妻を抱かなければならない義務、子供を作らなければならない義務から解放されたウィルベルトは性欲がなくなってしまったのだ。
側妃を娶っても反応することはない。子種を授けることは不可能だからと、断り続けてきた。
そんなウィルベルトがディアンヌに子種を授けるという。
つまり、彼女になら、いや、彼女にしか反応しないということだった。
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