あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

しゃーりん

文字の大きさ
2 / 8

2.

しおりを挟む
 
 
自身の生誕パーティーでいきなり息子が婚約破棄騒動を起こしたことを知った国王陛下が慌てて声をかけてきた。


「ノックス、こんな場所で騒動を起こすとは何を考えているのだ!」

「父上、こんな場所だからです。私の決意をみんなにも知ってもらうべきだと思いました。アヴリルとは夫婦になれません。何の愛情も湧かない。それに比べてシーラはいつも私を優先してくれるし癒してくれる大切な人です。彼女と別れることなどできません。」

「いや、だが、お前の恋人は子爵令嬢なのだろう?学生時代だけの関係のつもりじゃなかったのか?」

「そんなわけないじゃないですか。私は不誠実なことをするつもりはありません。彼女は私の妻に相応しいと思えたからこそ、アヴリルとの婚約を破棄したいのです。父上、認めてくれますよね?」


ここまで大々的にアヴリルではなくシーラを選ぶと言ってしまったノックス殿下に、国王陛下は頭を抱えたい思いだろう。今更、別室で話し合おうというレベルではなくなっているのだ。
国王陛下としては、正式な妻はアヴリルで、シーラは側妃か愛妾にしろと叫びたいところなのだ。

そんな二人に口を挟んだのは、アヴリルの父、ウィンターホール公爵だった。


「国王陛下、よいではないですか。私は娘との婚約を破棄にしてかまいませんよ。おそらく、アヴリル自身も本心からそう思ってノックス殿下からの命令を受けたのでしょうから。」

「いや、しかし………」

「愛情が湧かないとまで言われた娘を嫁がせるわけにはいきませんからね。それに国王陛下もノックス殿下の女性関係をご存知の上で放置なさっていたということは、こうなる可能性もお気づきだったはず。」

「いや、だが、教育が……爵位も……」

「そうですね。だが、しかしそれは王家の問題でしょう。長年の婚約者である娘を無下にし、このような形で婚約破棄を言い渡された側からすればそこは関係ありません。
進言と致しましては、子爵令嬢の教育や爵位の問題を解決するためにノックス殿下を第一王子の身分に戻してはいかがでしょうか?その子爵令嬢が王族に相応しいと認められるかは重要なことです。
そうしていただけるのであれば、婚約破棄を婚約解消としてもかまいません。」


アヴリルの父は、本来、王太子妃として相応しいのは他国の王女か自国の公爵令嬢または侯爵令嬢、あるいは伯爵令嬢でも本人の資質と家柄に問題がなければ、という条件に子爵令嬢シーラが全く当てはまっていないが、王子妃としてならば、相応しいと判断されれば問題ないのではないかと言っているのだ。
王太子妃ではない。王子妃としてだ。
 
暗に、ノックス殿下を王太子の座から降ろせばいいのだ、と。

そうするのであれば、ノックス殿下有責による婚約破棄の莫大な慰謝料を帳消しにしてやると言っているのだ。


それに気づかないノックス殿下は、『シーラが頑張れば家の爵位も上げてもらえるのか』と勘違いして喜んでいる。

その様子を見た国王陛下は深くため息をつき、ノックス殿下を諦めてウィンターホール公爵の進言を受け入れた。


こうして、アヴリルとノックス殿下の婚約は無事に解消されたのだった。
 

  

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

何でもするって言うと思いました?

糸雨つむぎ
恋愛
ここ(牢屋)を出たければ、何でもするって言うと思いました? 王立学園の卒業式で、第1王子クリストフに婚約破棄を告げられた、'完璧な淑女’と謳われる公爵令嬢レティシア。王子の愛する男爵令嬢ミシェルを虐げたという身に覚えのない罪を突き付けられ、当然否定するも平民用の牢屋に押し込められる。突然起きた断罪の夜から3日後、随分ぼろぼろになった様子の殿下がやってきて…? ※他サイトにも掲載しています。

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

隣国へ留学中だった婚約者が真実の愛の君を連れて帰ってきました

れもん・檸檬・レモン?
恋愛
隣国へ留学中だった王太子殿下が帰ってきた 留学中に出会った『真実の愛』で結ばれた恋人を連れて なんでも隣国の王太子に婚約破棄された可哀想な公爵令嬢なんだそうだ

【完結】離婚しましょうね。だって貴方は貴族ですから

すだもみぢ
恋愛
伯爵のトーマスは「貴族なのだから」が口癖の夫。 伯爵家に嫁いできた、子爵家の娘のローデリアは結婚してから彼から貴族の心得なるものをみっちりと教わった。 「貴族の妻として夫を支えて、家のために働きなさい」 「貴族の妻として慎みある行動をとりなさい」 しかし俺は男だから何をしても許されると、彼自身は趣味に明け暮れ、いつしか滅多に帰ってこなくなる。 微笑んで、全てを受け入れて従ってきたローデリア。 ある日帰ってきた夫に、貞淑な妻はいつもの笑顔で切りだした。 「貴族ですから離婚しましょう。貴族ですから受け入れますよね?」 彼の望み通りに動いているはずの妻の無意識で無邪気な逆襲が始まる。 ※意図的なスカッはありません。あくまでも本人は無意識でやってます。

【短編】婚約破棄した元婚約者の恋人が招いていないのにダンスパーティーに来ました。

五月ふう
恋愛
王子レンはアイナの婚約者であった。しかし、レンはヒロインのナミと出会いアイナを冷遇するようになった。なんとかレンを自分に引き留めようと奮闘するも、うまく行かない。ついに婚約破棄となってしまう。

幸せな人生を送りたいなんて贅沢は言いませんわ。ただゆっくりお昼寝くらいは自由にしたいわね

りりん
恋愛
皇帝陛下に婚約破棄された侯爵令嬢ユーリアは、その後形ばかりの側妃として召し上げられた。公務の出来ない皇妃の代わりに公務を行うだけの為に。 皇帝に愛される事もなく、話す事すらなく、寝る時間も削ってただ公務だけを熟す日々。 そしてユーリアは、たった一人執務室の中で儚くなった。 もし生まれ変われるなら、お昼寝くらいは自由に出来るものに生まれ変わりたい。そう願いながら

【短編】捨てられた公爵令嬢ですが今さら謝られても「もう遅い」

みねバイヤーン
恋愛
「すまなかった、ヤシュナ。この通りだ、どうか王都に戻って助けてくれないか」 ザイード第一王子が、婚約破棄して捨てた公爵家令嬢ヤシュナに深々と頭を垂れた。 「お断りします。あなた方が私に対して行った数々の仕打ち、決して許すことはありません。今さら謝ったところで、もう遅い。ばーーーーーか」 王家と四大公爵の子女は、王国を守る御神体を毎日清める義務がある。ところが聖女ベルが現れたときから、朝の清めはヤシュナと弟のカルルクのみが行なっている。務めを果たさず、自分を使い潰す気の王家にヤシュナは切れた。王家に対するざまぁの準備は着々と進んでいる。

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」 ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。 それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。 傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……

処理中です...