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しおりを挟む自身の生誕パーティーでいきなり息子が婚約破棄騒動を起こしたことを知った国王陛下が慌てて声をかけてきた。
「ノックス、こんな場所で騒動を起こすとは何を考えているのだ!」
「父上、こんな場所だからです。私の決意をみんなにも知ってもらうべきだと思いました。アヴリルとは夫婦になれません。何の愛情も湧かない。それに比べてシーラはいつも私を優先してくれるし癒してくれる大切な人です。彼女と別れることなどできません。」
「いや、だが、お前の恋人は子爵令嬢なのだろう?学生時代だけの関係のつもりじゃなかったのか?」
「そんなわけないじゃないですか。私は不誠実なことをするつもりはありません。彼女は私の妻に相応しいと思えたからこそ、アヴリルとの婚約を破棄したいのです。父上、認めてくれますよね?」
ここまで大々的にアヴリルではなくシーラを選ぶと言ってしまったノックス殿下に、国王陛下は頭を抱えたい思いだろう。今更、別室で話し合おうというレベルではなくなっているのだ。
国王陛下としては、正式な妻はアヴリルで、シーラは側妃か愛妾にしろと叫びたいところなのだ。
そんな二人に口を挟んだのは、アヴリルの父、ウィンターホール公爵だった。
「国王陛下、よいではないですか。私は娘との婚約を破棄にしてかまいませんよ。おそらく、アヴリル自身も本心からそう思ってノックス殿下からの命令を受けたのでしょうから。」
「いや、しかし………」
「愛情が湧かないとまで言われた娘を嫁がせるわけにはいきませんからね。それに国王陛下もノックス殿下の女性関係をご存知の上で放置なさっていたということは、こうなる可能性もお気づきだったはず。」
「いや、だが、教育が……爵位も……」
「そうですね。だが、しかしそれは王家の問題でしょう。長年の婚約者である娘を無下にし、このような形で婚約破棄を言い渡された側からすればそこは関係ありません。
進言と致しましては、子爵令嬢の教育や爵位の問題を解決するためにノックス殿下を第一王子の身分に戻してはいかがでしょうか?その子爵令嬢が王族に相応しいと認められるかは重要なことです。
そうしていただけるのであれば、婚約破棄を婚約解消としてもかまいません。」
アヴリルの父は、本来、王太子妃として相応しいのは他国の王女か自国の公爵令嬢または侯爵令嬢、あるいは伯爵令嬢でも本人の資質と家柄に問題がなければ、という条件に子爵令嬢シーラが全く当てはまっていないが、王子妃としてならば、相応しいと判断されれば問題ないのではないかと言っているのだ。
王太子妃ではない。王子妃としてだ。
暗に、ノックス殿下を王太子の座から降ろせばいいのだ、と。
そうするのであれば、ノックス殿下有責による婚約破棄の莫大な慰謝料を帳消しにしてやると言っているのだ。
それに気づかないノックス殿下は、『シーラが頑張れば家の爵位も上げてもらえるのか』と勘違いして喜んでいる。
その様子を見た国王陛下は深くため息をつき、ノックス殿下を諦めてウィンターホール公爵の進言を受け入れた。
こうして、アヴリルとノックス殿下の婚約は無事に解消されたのだった。
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