あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

しゃーりん

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国王陛下の生誕45年パーティーの最中、それは起こった。


「アヴリル・サマーフィールド、お前に離婚を命ずる!」


ふと目が合った第一王子殿下ノックスが、アヴリルを指差しながらそう告げた。

この王子殿下はまた何を言い始めたのだろうか。
アヴリルはかつての婚約者ノックスに呆れ果ててため息しか出てこない。

そんなアヴリルの肩を優しく抱いた夫スタンリーが怒りを露わにアヴリルに言った。


「なんで勝手に離婚させられなきゃいけないんだ?こんな横暴な王族、もういらないんじゃないか?」

「……そう思うわ。」


アヴリルはスタンリーに同意した。


ノックス殿下は、またやらかした。

そんなノックス殿下は周りから失笑されていることにも気づかない。

今からどんな寸劇が見られるのだろうかと期待されていることも。 


二年前、この同じパーティーでノックス殿下はアヴリルに同じようなことをした。

『アヴリル・ウィンターホール、お前に婚約破棄を命ずる!』と。

それにより、アヴリルはノックス殿下との婚約を解消することになったのだ。




二年前当時のノックス殿下はまだ王太子だった。
アヴリルの1歳上。
ノックス殿下が12歳、アヴリルが11歳の時に婚約した。
 
婚約当初は仲は悪くなかった。
しかし、教育が進むにつれ、アヴリルは淑女で聡明に。ノックス殿下は不真面目に。

年下なのに賢いアヴリルに勝手に劣等感を抱き、アヴリルを避けるようになっていた。

やがてアヴリルが学園に入学した頃には、ノックス殿下の隣に常に同じ令嬢がいるようになっていた。

子爵令嬢シーラ・ノンブレイン。

アヴリルが入学するまでの1年の間に、ノックス殿下の最愛にまで成り上がった令嬢である。

シーラとその外にもノックス殿下に言い寄る令嬢がいたことはアヴリルも把握していた。
愛妾にでもするのか、国王陛下の許可を得て側妃にすることまで考えているのか、いずれにせよアヴリルにはどうでも良かった。

ノックス殿下の相手をしてくれるのであれば有難い。そう思っていた。

それから二年近く、ノックス殿下とシーラの関係は卒業間近になるまで変わらなかった。

それどころか、卒業1か月前にあった国王陛下生誕43年のパーティーでアヴリルに婚約破棄を言い渡したのだ。
 

『アヴリル・ウィンターホール、お前に婚約破棄を命ずる!
俺はお前みたいな小賢しい女と生涯を共にすることを考えるだけで虫唾が走る。女はシーラみたいに癒しになる存在であるべきなんだ!お前との婚約を破棄して、俺はシーラと結婚する!!』

『……かしこまりました。婚約破棄をお受けいたします。』
  
アヴリルは、ノックスとの結婚を仕方のないことだと諦めて受け入れていたが、向こうが結婚したくないと言っているのであれば何も問題はないではないかと解放感に舞い上がってしまいそうだった。


しかし、それを止める声が聞こえてきた。


「待て待て待て待て!勝手に何を言っておるんだ!!」


国王陛下だった。

 



 
 
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