私が嫁ぐ予定の伯爵家はなんだか不穏です。

しゃーりん

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扉の前にいた使用人を押し退けて入って来たのはリズだった。
リズは3日前から体調不良で医師を呼んでいたはずだが……とティムは元気そうなリズを見て思った。


「ティム、聞いて!」

「リズ、なんでここに……今は来客中だとわかるだろ?」

「だからよ!皆さんにも聞いて貰いたくて!ティム、私、また子供が出来たわ!」

「……………は?なんで?避妊薬渡しただろ?飲まなかったのか?」

「飲んでたわ。でも、その前に既に妊娠していたから意味がなかったみたい。ねぇ、嬉しい?」


サリューシアと話をした後、リズをまた妊娠させたら面倒なことになると気づいて慌てて避妊薬を手配して貰ったけど遅かったってことか。


「……妊娠したら困るから避妊薬を飲ませたんだ。」

「……だよね。でも産むよ!この子も嫡子ってのにして貰えるの?」


呆れたようにティムの父が答えた。


「嫡子にするのはリムだけでいい。君とお腹の子供は平民として元の家に戻って暮らせ。」

「……え?だってティムの子供だし、リムの兄弟だよ?一緒にいないとおかしいよ。」


次に口を開いたのは、ここにいる誰でもなかった。


「そうだよな。ティムも一緒に領地に帰ったらいい。」


答えたのは……テオルドだった。いつの間にか部屋の入口に立っていた。




「テオルド様?!」


サリューシアは驚いた。
1年前に別れた時よりも健康的な体つきになり、病弱さは感じられなかった。


「お前、病気は?治ったのか?」


ブルーエ伯爵も驚いて聞いた。


「ええ。僕のことはまた後で。それよりもティムのことです。彼は父上の息子ではありません。」


ティムがブルーエ伯爵の息子じゃない?


「ど、どういうことだ?確かにカラは妊娠したと言ってきたぞ?」


カラと言うのがティムの母のようだ。


「そのカラさんの昔からの友人が教えてくれました。
 確かに父上の子供を妊娠したそうですが、その後に流れたそうです。
 父上の次に付き合った男の子供をまた妊娠したそうですが、逃げられた。産まれた子供がティムです。」

「だが、産まれ月も記憶していた時期と同じだったぞ?カラが言っていた予定月と。」

「もし、父上がいつか子供のことを思い出したら、養育費を貰おうと思ったようです。
 ティムの実の父よりも父上の方が金払いがいいと思ったのでしょう。
 実際の誕生日から半年ほど早い日をティムの誕生日に決めたそうです。」

「そんな……私の息子ではなかったのか。
 ははっ!だがいい。テオルドが元気になったのであればティムは用済みだからな。
 ティム、聞いた通り、お前は息子じゃなかった。その女と子供を連れて屋敷を出て行け。」

「……え?本当に?」


テオルドはティムに言った。


「ああ。ミナさんという女性を知っているだろう?彼女が教えてくれた。
 留守にしている間にティムが連れて行かれていて驚いたらしい。
 でも勘違いに気づいて帰って来るだろうと思っていたけれど帰って来ない。
 王都で新しい生活を始めたのかと心配していたよ。」

「あ……ははっ……」


ティムはサリューシアに視線を向けたが彼女は何も言わないし、悲しみの表情でもなかった。
彼女が自分に好意があると思ったのも、嫉妬してくれていると思ったのも勘違いだったのだ。


「お前に買ってやった物は全部持っていくがいい。売ればそこそこ金になる。迷惑料だ。」


ブルーエ伯爵の言葉に、ティムは諦めてリズと部屋から出て行こうとした。
その時、リズがテオルドの後ろにいる人を見て言った。


「あら、あなたビリーさんじゃない。ここまで送ってくれてありがとう。
 あ、そうだ。また幌馬車で元の場所まで送ってくれない?ティムも一緒に。」 


ビリーと呼ばれた男は苦笑した。





 

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