夫不在でも義母がいれば楽しい

しゃーりん

文字の大きさ
46 / 47

46.

しおりを挟む
 
 
そしていよいよアリアとヴィンスの結婚式の日になった。

ヴィンスはテッセン侯爵家の次男である。
侯爵家の跡継ぎは長男であるクリスであり、ヴィンスは王都で高位貴族として社交や国政に携わる父や兄に代わり、領地経営に携わるために領地で暮らすのだ。

テッセン領は広いため、地方それぞれに代官も置いており、ヴィンスの結婚式のために多くの者が集まる。

アリアのお披露目の意味もあるのだが、実はアリアはもう既に各地で義母シャロンの客として挨拶を済ませていたため、顔合わせは初めてのことではない。

そのため、ヴィンスの嫁がアリアだと知れた時は、誰もが”やはりそうだったか”と思うだけで笑顔で祝福してくれた。 

シャロンはまるでこうなるだろうことを予測していたかのようだった。
 


「では、誓いの口づけを。」


アリアは顔を少し上げてヴィンスを見た。
ヴィンスはようやくだと言うように少し微笑んだ後、アリアにキスをした。

……二十秒ほど重なっていたように思う。

腰と後頭部に手を回されて、アリアは顔を離すこともできずに息が苦しくなった。
 
これがアリアのファーストキスだった。

ヴィンスが領地に来てから、急速に仲は深まっていた。
手を繋ぐことも、腕を組むことも、抱きしめられることもあった。

そしてキスをするような雰囲気になるとアリアが避けたため、キスをしたいと口に出して言われたが、”初めては結婚式で”と言ったのはアリアだった。

結婚式まであと数日先なだけである。
もういっそのこと、誓いの口づけが二人のファーストキスでいいのではないかと思ったから。

しかし、軽く触れて終わりだと思っていたのに、こんなに長い誓いの口づけになったのは、ヴィンスを待たせたことに対する反撃なのだろうと思った。

長い口づけに、参列者のひやかす声まであったほど。

しかし、このことでアリアとヴィンスは仲の良い夫婦のようだと周知されることになった。 


ちなみに、サリナは大人しく祝福してくれて、前髪も切り揃えたことからアリアと見間違うほどそっくりという印象は薄まり、未婚だと知られると息子を紹介したいという声もかかっていた。


そして入籍してから半年以上が経ったその日の夜、ようやくアリアとヴィンスは結ばれて白い結婚が終わった。
ヴィンスはとても優しく、アリアは夫となった人が彼で幸せだと思った。

ヴィンスは未経験ではなさそうだったが、経験豊富という感じでもなかった。
おそらく、何度か娼館に行った程度なのではないか。
 
女性は純潔が当たり前。
そんな女性をリードするのは男性。

そのため、男性は経験があって当たり前というのが貴族社会である。

結婚を申し込まれたときは愛人がいると思っていたが、ヴィンスはなかなか身綺麗な男と言っていいかもしれないと思い、アリアは浮気の心配もなさそうだとホッとした。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

婚約する前から、貴方に恋人がいる事は存じておりました

Kouei
恋愛
とある夜会での出来事。 月明りに照らされた庭園で、女性が男性に抱きつき愛を囁いています。 ところが相手の男性は、私リュシュエンヌ・トルディの婚約者オスカー・ノルマンディ伯爵令息でした。 けれど私、お二人が恋人同士という事は婚約する前から存じておりましたの。 ですからオスカー様にその女性を第二夫人として迎えるようにお薦め致しました。 愛する方と過ごすことがオスカー様の幸せ。 オスカー様の幸せが私の幸せですもの。 ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

君に愛は囁けない

しーしび
恋愛
姉が亡くなり、かつて姉の婚約者だったジルベールと婚約したセシル。 彼は社交界で引く手数多の美しい青年で、令嬢たちはこぞって彼に夢中。 愛らしいと噂の公爵令嬢だって彼への好意を隠そうとはしない。 けれど、彼はセシルに愛を囁く事はない。 セシルも彼に愛を囁けない。 だから、セシルは決めた。 ***** ※ゆるゆる設定 ※誤字脱字を何故か見つけられない病なので、ご容赦ください。努力はします。 ※日本語の勘違いもよくあります。方言もよく分かっていない田舎っぺです。

見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい

水空 葵
恋愛
 一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。  それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。  リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。  そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。  でも、次に目を覚ました時。  どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。    二度目の人生。  今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。  一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。  そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか? ※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。  7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m

あなただけが私を信じてくれたから

樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。 一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。 しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。 処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

私の婚約者はちょろいのか、バカなのか、やさしいのか

れもんぴーる
恋愛
エミリアの婚約者ヨハンは、最近幼馴染の令嬢との逢瀬が忙しい。 婚約者との顔合わせよりも幼馴染とのデートを優先するヨハン。それなら婚約を解消してほしいのだけれど、応じてくれない。 両親に相談しても分かってもらえず、家を出てエミリアは自分の夢に向かって進み始める。 バカなのか、優しいのかわからない婚約者を見放して新たな生活を始める令嬢のお話です。 *今回感想欄を閉じます(*´▽`*)。感想への返信でぺろって言いたくて仕方が無くなるので・・・。初めて魔法も竜も転生も出てこないお話を書きました。寛大な心でお読みください!m(__)m

処理中です...