夫不在でも義母がいれば楽しい

しゃーりん

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そしていよいよアリアとヴィンスの結婚式の日になった。

ヴィンスはテッセン侯爵家の次男である。
侯爵家の跡継ぎは長男であるクリスであり、ヴィンスは王都で高位貴族として社交や国政に携わる父や兄に代わり、領地経営に携わるために領地で暮らすのだ。

テッセン領は広いため、地方それぞれに代官も置いており、ヴィンスの結婚式のために多くの者が集まる。

アリアのお披露目の意味もあるのだが、実はアリアはもう既に各地で義母シャロンの客として挨拶を済ませていたため、顔合わせは初めてのことではない。

そのため、ヴィンスの嫁がアリアだと知れた時は、誰もが”やはりそうだったか”と思うだけで笑顔で祝福してくれた。 

シャロンはまるでこうなるだろうことを予測していたかのようだった。
 


「では、誓いの口づけを。」


アリアは顔を少し上げてヴィンスを見た。
ヴィンスはようやくだと言うように少し微笑んだ後、アリアにキスをした。

……二十秒ほど重なっていたように思う。

腰と後頭部に手を回されて、アリアは顔を離すこともできずに息が苦しくなった。
 
これがアリアのファーストキスだった。

ヴィンスが領地に来てから、急速に仲は深まっていた。
手を繋ぐことも、腕を組むことも、抱きしめられることもあった。

そしてキスをするような雰囲気になるとアリアが避けたため、キスをしたいと口に出して言われたが、”初めては結婚式で”と言ったのはアリアだった。

結婚式まであと数日先なだけである。
もういっそのこと、誓いの口づけが二人のファーストキスでいいのではないかと思ったから。

しかし、軽く触れて終わりだと思っていたのに、こんなに長い誓いの口づけになったのは、ヴィンスを待たせたことに対する反撃なのだろうと思った。

長い口づけに、参列者のひやかす声まであったほど。

しかし、このことでアリアとヴィンスは仲の良い夫婦のようだと周知されることになった。 


ちなみに、サリナは大人しく祝福してくれて、前髪も切り揃えたことからアリアと見間違うほどそっくりという印象は薄まり、未婚だと知られると息子を紹介したいという声もかかっていた。


そして入籍してから半年以上が経ったその日の夜、ようやくアリアとヴィンスは結ばれて白い結婚が終わった。
ヴィンスはとても優しく、アリアは夫となった人が彼で幸せだと思った。

ヴィンスは未経験ではなさそうだったが、経験豊富という感じでもなかった。
おそらく、何度か娼館に行った程度なのではないか。
 
女性は純潔が当たり前。
そんな女性をリードするのは男性。

そのため、男性は経験があって当たり前というのが貴族社会である。

結婚を申し込まれたときは愛人がいると思っていたが、ヴィンスはなかなか身綺麗な男と言っていいかもしれないと思い、アリアは浮気の心配もなさそうだとホッとした。


 
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