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しおりを挟むエドモンドは届いた書類を読んだ後、呆然としていた。
なんとなく、予想はしていた。
自分の子種が、女を孕ませることはできないのではないか、と。
調べねばと思いながらも躊躇し、何年もかかって、ようやくその気になって調べた。
その結果が記された書類を読んだところだった。
『子種に動きは確認できず生殖能力はないと判断する』
正確に判断するために3度に渡って自身の子種を検査局に提供し、調べてもらった結果だった。
エドモンドはリゼルと離婚した後、2年半後に再婚した。
新たな妻、アナレージュは侯爵家の二女だった。
アナレージュと結婚して2年経っても子供ができず、エドモンドは愛人を持った。
しかし、1人目の愛人も2人目の愛人も妊娠しなかった。
3人目の愛人に至っては、別の男と通じたにも関わらず、エドモンドの子供だと嘘をついた。
それがきっかけになり、生殖能力があるか検査する意思を固めたのだ。
自分にはレーゲン公爵家の跡継ぎをつくることができない。
それを父に報告しなければならなかった。
書類を握りしめ、重い足取りで父の執務室へと向かった。
エドモンドはよほどひどい顔色をしていたのだろうか。
父はお茶を入れさせた後、人払いをしてエドモンドに向き合った。
「何があった?」
「……これを。」
エドモンドは検査局からの書類を父に渡した。
父は書類に目を通した後、自分の机の引き出しから何かを取り出してエドモンドに渡した。
「……これはっ!」
「私のだ。」
渡された書類は父の子種も生殖能力がないと示すものだった。日付は1年ほど前だった。
「どうして……私は、父上の子、ですよね?」
「ああ。そこは疑ってはいない。つまり、お前が生まれて以降のことだと思う。考えられるとすれば、ルキアに飲まされた心臓発作を起こさせる薬物の副作用か、あるいはまた別で盛られていたか、だ。」
今はもう無いアストリー侯爵家は様々な薬物を扱っていた。
リゼルに避妊薬を飲ませていたのだ。子種を殺す薬物もあっただろう。
「では、私も?」
「そこがわからない。シモーヌはお前の子供を産む気だったはずだ。だから、シモーヌが捕まったあの夜以前に私と違ってお前が薬を盛られる理由はない。」
「それは……そうですね。ということは、私は元々、でしょうか。」
「さあな。こればかりは調べなければわからないのだから。」
「……父上はなぜ検査を?」
「なかなかお前に子供ができないからだ。もしお前にその能力がないのであれば私が後妻をもらうか、遠縁の子供を養子にするか考えねばならなかった。だから、念のために調べた結果がコレだ。」
若い妻を貰っても妊娠させられなければ無意味になる。
確証が欲しくて検査をしたが、思わぬ結果に何が原因なのかを考えていたらしい。
「……養子を貰うしかないですね。」
「そうなるな。アナレージュには養子が決まるまで何も言うな。」
「何故です?」
「幼い子になるか、成人間近の男になるか、わからないからだ。あの嫁は一応、公爵家の子供を産むために嫁いできている。産まなくて済むなら痛い思いをしなくて済むと喜びそうな嫁だが、養子が15歳以上の男に決まればアナレージュはその男の子供を産もうとするかもしれない。」
身籠ってしまえば、追い出されることはない。エドモンドとアナレージュの子供にするだろう。
「そんな……では15歳以上の男に決まった場合、アナレージュはどうするのですか?」
「養子を貰う前にお前と離婚させる。幼い子供になった場合も、母親になる気がなければ離婚だ。」
アナレージュに母性などないだろう。地位と金。そんな女だ。
「ですが、非はこちらにあります。追い出せないのでは?」
「その時は向こうにも非を作ればいい。なんとでもなる。」
こういう腹黒さがエドモンドにはないのだろう。
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