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しおりを挟む治癒者の給金と休日についてはサニード王太子殿下が何とかしてくれると期待したい。
結婚については、教会までの通いや住む場所の問題をクリアしないと難しい。
だけど、食事は格段に良くなるはずだし、休日に外出もできる。
服や靴なども好きなものを買えるはず。
血や泥で汚れが落ちずに治癒服は何枚も替えが必要になり、そのために生活費が削られている。
人前で着れなくなった治癒服を寝間着にしていると聞いた時は悲しくなった。
ようやく教会の治癒者たちの実情を伝えることができて、アイビーは肩の荷をおろした気分だった。
翌日、もう王太子殿下に昼休憩に会う必要がなくなったので、前まで一緒に昼食をとっていた友人エライザたちと食堂に向かおうとしていた。
コルト様は少し用があるとのことでこの昼休憩はついて来ないという。
正直言って、もう学園での護衛は必要ないと思うんだけど………
しかし、食堂まであと少しというところで声をかけられた。知らない令嬢たちだった。
「新聖女のクワット子爵令嬢よね?少し話があるのでいいかしら。」
上級生のようだ。う~ん。どっちかな。親しくなりたい方じゃなさそうだからクレオリア様の方かな。
「はい。どういったご用件でしょうか。」
「ここではちょっと、ね。ついてきてくださる?」
スタスタと先を歩く2人の令嬢。私、ついていく返事してないのに。
仕方がないのでエライザたちには先に食べているように言った。
中庭のすみっこ。中庭に人はいるけれど、誰にも会話は聞こえなさそうなところで令嬢たちは言った。
「あなた、王太子殿下とクレオリア様が思い合っていることはご存知かしら?」
「はい。」
「それなのに王太子殿下と王族の部屋で3日も2人きりで過ごしたの?」
いやいや、言い方に語弊がある。それでは3日間籠りきりみたいじゃないの。
昼休憩時に昼食を食べながら話をしていただけなのに。
というか、誰か見張ってるの?
「2人きりではないですよ。コルト様も一緒でした。」
「コルト様は護衛なのでしょう?護衛は人数に……コルト様は入れてもいいわね。」
どっちなの。使用人は置物と考える貴族もいるって聞くけど護衛もそんな感じ?
「とにかくっ!あの男爵令嬢も邪魔だったのに聖女のあなたまで王太子殿下に近づいているから、クレオリア様が悲しんでおられるのよ。王太子殿下の気持ちがクレオリア様にあることがわかっているのなら、あなた、平民になったらどうかしら。それならクレオリア様は正妃になることができるわ。聖女なのだから平民でも側妃なのだし、待遇は変わらないでしょう?どう?あの2人方を別れさせたくないでしょう?」
この令嬢、どこの貴族令嬢かわからないけれど、多分、高位貴族令嬢なんだろうけれど、ぶっ飛んだことを考えるのね。
言いたいことはわかるけど。クレオリア様のことを思った発言だろうけど。
国王陛下だけでなく王都で暮らす貴族や平民もほぼみんな、新聖女が貴族令嬢だと知っているのに?
無理のある案、としか言いようがない。
「申し訳ございませんが、さすがにそれは無理かと。聖女となったことで私自身も戸惑っていますが、私の一存でどうこうできる問題でもありません。最終的には王家の決定に従うしかありませんので。」
「聖女の権限は何もないの?あなた、我が儘を言って国王陛下を困らせたのでしょう?また言えばいいじゃない。」
平民になりたいとは言っていないけど、正妃になりたくないと言ったから我が儘と言われたのよ?
「聖女の権限は……どうでしょう?何も伺っておりませんので。」
何か権限ってあるのかしら。王城に行ったのもあの日だけだし。なんか、放ったらかし?
まぁ、王太子妃教育は受けたくないと言ったし、強制するなら子作りもしないよ?らしきことは伝えたので、王太子殿下とクレオリア様が婚約解消することにはならないと思うけど、どうなるかわからないので言えないし……
応援ありがとうございます!
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