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しおりを挟むコルト様は、私が徹底してサニード王太子殿下の愛情を望んでいないとわかり、驚いていた。
「殿下の愛情を望まないのは、クレオリアのせいですか?それとも王太子妃になりたくないからですか?」
「それは、どちらも、ですね。相思相愛のお二人に聖女になったのだから割り込むはずだと、何もしていないにも関わらずもうすでに反感を買っている状態です。聖女だから慣例だとわかっていてもクレオリア様を押しのけて私が王太子妃になることは認められないという周りの言動は傷つきますよ。みんなに認められるために王太子妃教育を頑張って、殿下を支えようなんて気持ちにもなりません。」
私が王太子殿下に少しでも興味や好意があれば違ったのかもしれないけれど。
そう思っていた私に、コルト様は思いもよらないことを言った。
「私は、クレオリアよりも聖女様の方が王太子妃に相応しいのではないかと感じています。」
「はあ?私のどこがです?」
「両陛下や王太子殿下に対し、自分の意見を述べられるところ、ですかね。失礼だが、まだ学生で子爵令嬢という立場であれば緊張の余り返事くらいしかできないのが通常です。でもあなたは、緊張は見られても言いたいことを言う度胸がある。クレオリアにはそれがない。あの子は、言われるがままのことしかできない。」
いやいや、ただ礼儀を知らない無謀な小娘なだけなんだけど。
それに言いたいことを言ってばかりでは、王太子殿下のお顔はいつも引きつることになるわ。
不敬だ無礼だと言われないのは、聖女だからだと思うし。
「それに、クレオリアは少し姑息なところがあるようです。私も最近まで知りませんでしたが。」
「姑息?………あぁ、なるほど。何となくわかりました。」
今日、あの上級生の令嬢たちが面と向かって言って来たことでアイビーにも少し感じるところがあった。
クレオリア様は確かに周りの貴族を味方につけている。
王太子殿下との仲を認められており、二人が憧れの存在のようになっているからだ。
なので、聖女となったアイビーからクレオリア様を守ろうというような言動が見られる。
アイビーが何もしていないにも関わらず。
クレオリア様がその状況を利用した形になったのが、今日の昼休憩時の出来事だ。
コルト様が不在だったことで、直接言われたのは初めてだった。
令嬢たちは『クレオリア様が悲しんでおられる』と言った。
クレオリア様は周りの令嬢たちの気持ちを煽るような言動を取ったということ。
本来であれば、慕ってくれる周りの令嬢たちが暴走しないように気を配ることが望ましいがそれをしていない。
クレオリア様は令嬢たちの暴走を『知らなかった』あるいは『私が望んだことではない』と逃げるのではないか。
それを、コルト様も姑息だと考えているのだろう。
自分は汚れず、周りがやってくれるというのは慕われているからこそだ。崇拝に近い。
時と場合によっては有難くもあり、有効な手段となる。
だが、クレオリア様の場合はどうだろうか。
例えば、聖女であるアイビーに平民になれと脅した不敬罪であの令嬢たちが捕らえられたとしても、クレオリア様は庇いもしないかもしれない。
そうすれば、手駒のような友人たちはいつか周りからいなくなる。
自分の意を汲んでくれる者たちがいなければクレオリア様は孤立する。
王太子殿下の妃に相応しいと思われなくなってしまうのだ。
そんな姑息な手段を悪手だとコルト様は感じ、妹であるクレオリア様が王太子妃に相応しくないと思ったようだった。
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