諦めていた自由を手に入れた令嬢

しゃーりん

文字の大きさ
20 / 36

20.

しおりを挟む
 
 
その後の様子を調べに行ったマックスは昼過ぎに戻って来た。 

 
「おかえりなさい。」

「ただいま。」


マックスはシャーロットを軽く抱きしめて頭にキスをした。
 
平民の夫婦はこうして行き帰りの挨拶するものなのだとシャーロットは認識した。
 
つまり、マックスが家に残ってシャーロットが出掛ける場合、シャーロットからハグとキスをするものなのだと。

しかしシャーロットは思った。
『マックスを置いて自分だけ出掛けることなんてない気がするわ』と。

そんな状況になれば、マックスは必ずシャーロットについてくるはずだから。


「早かったのね。何かわかった?」

「ニコルソン殿下とナディア・カスピスは入籍と初夜を済ませて男爵領に向けて今朝出発していた。」
 

なんて言ったの?!入籍と初夜を済ませた?


「ニコルソン殿下、……もう殿下ではないか。アイツは王妃様から、『男爵令嬢を王太子の正妃にできると本気で思っていたわけではないよな?シャーロットに執務をさせるような奴が王太子でいられると思っていないよな?』という圧に反論もできず、受け入れたらしい。」

「そうなのね。まぁ、頭の回転が遅いから、冷静に理解できるのは男爵領に着いてからになるかも。」

「ははっ!そうかもな。だから初夜も済ませるように仕向けられたんだろうな。」

「どういうこと?」


まさか、無理やりだったってこと?


「ニコルソンは実は童貞だったって話だ。閨教育はあったが、意外と純真なアイツは『自分の初めての相手は好きな女性と』と思っていたらしい。
愛する女性との結婚を許され、しかも入籍も済んでいる。今日は初夜だと言われて彼女が泊っている部屋に案内されたらソノ気になるのは当然だろう?」

「……ナディアさんは嬉しそうな殿下を拒めなかったのね。」


逃れられない結婚。そう思って諦めて受け入れたんだわ。
領地に帰ったら知らない平民と結婚するつもりだったのだから、多少なりとでも交流があって自分を好きだと言ってくれるニコルソンに絆されたのかもしれないわね。
好みのタイプではないらしいけど、一応美形だし。 


「女の体を知ったニコルソンは、男爵領に着くまで宿に泊まるたびに彼女を抱くだろう。そして道中の馬車の中では睡眠不足のために眠る。それを繰り返して男爵領に着く。自分が王都から追い出されたと気づく時には遠く離れた地というわけだ。」
 

なるほどね。
起きている間はナディアに夢中にさせていたら、いろいろ考える時間を与えずにすむから。 

王妃様はニコルソンも自分の息子なのに、国のために切り捨てたのね。


「それから、……マッケンジー公爵の方だが、こちらは何も動きはない。」


マックスは少し言い淀んでからそう言った。


「……何も?」

「ああ。ニコルソンの廃太子に伴いシャーロットとの婚約解消、グレイソンを王太子にしてアンネマリー皇女と婚約、そこまでは公爵も承知のことだったが、シャーロットが平民になることを選んで出て行ったと知っても、捜索の指示はない。グレイソンの側妃にする話も出なかったらしい。」

「……元々、私を憎んでいたから、もう二度と会わないで済むならそれもいいと思ったのかもしれないわ。」


公爵家に住んでいた8歳まででも、ほとんど会ったことはなかった。
王宮に住んでいた十年間も、親子の交流なんてものはなかった。

至近距離で顔を合わせたのはいつが最後だったかしら?

シャーロットは父と兄を捨て、向こうもシャーロットを捨てたのだと思った。
 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

はじめまして婚約者様  婚約解消はそちらからお願いします

蒼あかり
恋愛
リサには産まれた時からの婚約者タイラーがいる。祖父たちの願いで実現したこの婚約だが、十六になるまで一度も会ったことが無い。出した手紙にも、一度として返事が来たことも無い。それでもリサは手紙を出し続けた。そんな時、タイラーの祖父が亡くなり、この婚約を解消しようと模索するのだが......。 すぐに読める短編です。暇つぶしにどうぞ。 ※恋愛色は強くないですが、カテゴリーがわかりませんでした。ごめんなさい。

婚約破棄でかまいません!だから私に自由を下さい!

桗梛葉 (たなは)
恋愛
第一皇太子のセヴラン殿下の誕生パーティーの真っ最中に、突然ノエリア令嬢に対する嫌がらせの濡れ衣を着せられたシリル。 シリルの話をろくに聞かないまま、婚約者だった第二皇太子ガイラスは婚約破棄を言い渡す。 その横にはたったいまシリルを陥れようとしているノエリア令嬢が並んでいた。 そんな2人の姿が思わず溢れた涙でどんどんぼやけていく……。 ざまぁ展開のハピエンです。

あなたは婚約者よりも幼馴染を愛するのですね?

睡蓮
恋愛
ノラン侯爵はエリステルとの婚約を築いておきながら、自信が溺愛する幼馴染であるユリアとの時間を優先していた。ある日、ノランはユリアと共謀する形でエリステルに対して嫌がらせを行い、婚約破棄をさせる流れを作り上げる。しかしその思惑は外れ、エリステルはそのまま侯爵の前から姿を消してしまう。…婚約者を失踪させたということで、侯爵を見る周りの目は非常に厳しいものになっていき、最後には自分の行動の全てを後悔することになるのだった…。

二人ともに愛している? ふざけているのですか?

ふまさ
恋愛
「きみに、是非とも紹介したい人がいるんだ」  婚約者のデレクにそう言われ、エセルが連れてこられたのは、王都にある街外れ。  馬車の中。エセルの向かい側に座るデレクと、身なりからして平民であろう女性が、そのデレクの横に座る。 「はじめまして。あたしは、ルイザと申します」 「彼女は、小さいころに父親を亡くしていてね。母親も、つい最近亡くなられたそうなんだ。むろん、暮らしに余裕なんかなくて、カフェだけでなく、夜は酒屋でも働いていて」 「それは……大変ですね」  気の毒だとは思う。だが、エセルはまるで話に入り込めずにいた。デレクはこの女性を自分に紹介して、どうしたいのだろう。そこが解決しなければ、いつまで経っても気持ちが追い付けない。    エセルは意を決し、話を断ち切るように口火を切った。 「あの、デレク。わたしに紹介したい人とは、この方なのですよね?」 「そうだよ」 「どうしてわたしに会わせようと思ったのですか?」  うん。  デレクは、姿勢をぴんと正した。 「ぼくときみは、半年後には王立学園を卒業する。それと同時に、結婚することになっているよね?」 「はい」 「結婚すれば、ぼくときみは一緒に暮らすことになる。そこに、彼女を迎えいれたいと思っているんだ」  エセルは「……え?」と、目をまん丸にした。 「迎えいれる、とは……使用人として雇うということですか?」  違うよ。  デレクは笑った。 「いわゆる、愛人として迎えいれたいと思っているんだ」

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

聖女の血を引いていたのは、義妹でなく私でしたね♪

睡蓮
恋愛
ロノレー伯爵の周りには、妹であるソフィアと婚約者であるキュラナーの二人の女性がいた。しかしソフィアはキュラナーの事を一方的に敵対視しており、ありもしない被害をでっちあげてはロノレーに泣きつき、その印象を悪いものにしていた。そんなある日、ソフィアにそそのかされる形でロノレーはキュラナーの事を婚約破棄してしまう。ソフィアの明るい顔を見て喜びを表現するロノレーであったものの、その後、キュラナーには聖女としての可能性があるという事を知ることとなり…。

【完結】消えた姉の婚約者と結婚しました。愛し愛されたかったけどどうやら無理みたいです

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベアトリーチェは消えた姉の代わりに、姉の婚約者だった公爵家の子息ランスロットと結婚した。 夫とは愛し愛されたいと夢みていたベアトリーチェだったが、夫を見ていてやっぱり無理かもと思いはじめている。 ベアトリーチェはランスロットと愛し愛される夫婦になることを諦め、楽しい次期公爵夫人生活を過ごそうと決めた。 一方夫のランスロットは……。 作者の頭の中の異世界が舞台の緩い設定のお話です。 ご都合主義です。 以前公開していた『政略結婚して次期侯爵夫人になりました。愛し愛されたかったのにどうやら無理みたいです』の改訂版です。少し内容を変更して書き直しています。前のを読んだ方にも楽しんでいただけると嬉しいです。

処理中です...