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しおりを挟むその後の様子を調べに行ったマックスは昼過ぎに戻って来た。
「おかえりなさい。」
「ただいま。」
マックスはシャーロットを軽く抱きしめて頭にキスをした。
平民の夫婦はこうして行き帰りの挨拶するものなのだとシャーロットは認識した。
つまり、マックスが家に残ってシャーロットが出掛ける場合、シャーロットからハグとキスをするものなのだと。
しかしシャーロットは思った。
『マックスを置いて自分だけ出掛けることなんてない気がするわ』と。
そんな状況になれば、マックスは必ずシャーロットについてくるはずだから。
「早かったのね。何かわかった?」
「ニコルソン殿下とナディア・カスピスは入籍と初夜を済ませて男爵領に向けて今朝出発していた。」
なんて言ったの?!入籍と初夜を済ませた?
「ニコルソン殿下、……もう殿下ではないか。アイツは王妃様から、『男爵令嬢を王太子の正妃にできると本気で思っていたわけではないよな?シャーロットに執務をさせるような奴が王太子でいられると思っていないよな?』という圧に反論もできず、受け入れたらしい。」
「そうなのね。まぁ、頭の回転が遅いから、冷静に理解できるのは男爵領に着いてからになるかも。」
「ははっ!そうかもな。だから初夜も済ませるように仕向けられたんだろうな。」
「どういうこと?」
まさか、無理やりだったってこと?
「ニコルソンは実は童貞だったって話だ。閨教育はあったが、意外と純真なアイツは『自分の初めての相手は好きな女性と』と思っていたらしい。
愛する女性との結婚を許され、しかも入籍も済んでいる。今日は初夜だと言われて彼女が泊っている部屋に案内されたらソノ気になるのは当然だろう?」
「……ナディアさんは嬉しそうな殿下を拒めなかったのね。」
逃れられない結婚。そう思って諦めて受け入れたんだわ。
領地に帰ったら知らない平民と結婚するつもりだったのだから、多少なりとでも交流があって自分を好きだと言ってくれるニコルソンに絆されたのかもしれないわね。
好みのタイプではないらしいけど、一応美形だし。
「女の体を知ったニコルソンは、男爵領に着くまで宿に泊まるたびに彼女を抱くだろう。そして道中の馬車の中では睡眠不足のために眠る。それを繰り返して男爵領に着く。自分が王都から追い出されたと気づく時には遠く離れた地というわけだ。」
なるほどね。
起きている間はナディアに夢中にさせていたら、いろいろ考える時間を与えずにすむから。
王妃様はニコルソンも自分の息子なのに、国のために切り捨てたのね。
「それから、……マッケンジー公爵の方だが、こちらは何も動きはない。」
マックスは少し言い淀んでからそう言った。
「……何も?」
「ああ。ニコルソンの廃太子に伴いシャーロットとの婚約解消、グレイソンを王太子にしてアンネマリー皇女と婚約、そこまでは公爵も承知のことだったが、シャーロットが平民になることを選んで出て行ったと知っても、捜索の指示はない。グレイソンの側妃にする話も出なかったらしい。」
「……元々、私を憎んでいたから、もう二度と会わないで済むならそれもいいと思ったのかもしれないわ。」
公爵家に住んでいた8歳まででも、ほとんど会ったことはなかった。
王宮に住んでいた十年間も、親子の交流なんてものはなかった。
至近距離で顔を合わせたのはいつが最後だったかしら?
シャーロットは父と兄を捨て、向こうもシャーロットを捨てたのだと思った。
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