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しおりを挟むとある貴族家がお家乗っ取りの危機を逃れた。
そのことはなんとなく平民にも伝わり、ローレンスの耳にも届いていた。
『ジェイドはやり遂げたんだな』と感心したが、ちょっと早すぎないか?とも思っていた。
ローレンスは数年後と呑気に思っていたが、実際はジェイドと会ってからまだ4か月しか経っていない。
近く、ジェイドはやってくるだろう。
そして、オリオール家の血筋として責任を果たせと言ってくるはずだ。
ローレンスが貴族に戻るか、オリオールの遥か遠い親戚に譲るか、廃爵を願い出るか。
一人で決めることではない。
メロディーナとはずっと一緒だと約束した。
彼女の意見も聞く時期になったということだ。
ローレンスは覚悟を決めた。
子供たちが寝た後、メロディーナに話がしたいと言った。
「メロディーナは……貴族だったのか?」
「ええ、一応そうね。でもどうして知っているの?」
「君は、前辺境伯に嫁いだだろう?だったら貴族なのだろうと思って。」
「そうね。でもそれを知ってるってことはランスは記憶が戻っているの?」
「戻っているというか、ごめん。初めから記憶喪失じゃない。」
「えっ!どういうこと?なんでそんなことを……」
「……君に気持ち悪いと思われたくなかったから。」
メロディーナは首を傾げて眉をひそめていた。これだけじゃわからないよな。
「1年前にたった4日間だけ一緒にいた男に付きまとわれている。君がそう思うんじゃないかと思って。」
「えっ!そんなこと思わないわ。むしろ、ランスが来てくれるのを待っていたのに。」
待っていた?意味が分からない。今度はローレンスが首を傾げる番だった。
「ランスがあの近くにいることは知っていたわ。よく屋敷の様子を伺っていたでしょう?」
「……知っていたのか。ごめん。不審者だよな。」
よく捕まらなかったな、と今更ながら思った。
「大丈夫よ。前辺境伯様、レナード様が『あれは君の男じゃないのか?』って知らせてくれたの。」
「は……?」
「レナード様とはね、話し相手としての結婚だったの。最初から、心を寄せていた相手はいなかったのか、とか聞かれて正直に答えていたわ。だから、屋敷の様子を伺っている男が私の話した特徴に似た人だって気づいたみたい。『また来てるみたいだ』って教えてもらっていたわ。」
なんだそれは。
「だから妊娠がわかった時、なるべく早く離婚するけれど1年は待ってほしいって言われたの。私も、実家にお金が渡っていることもあって我が儘なんて言うつもりはなかった。あなたがそばにいてくれてるってわかっていたから安心していたし。」
なんなんだそれは。じゃあ、職場で聞いていた前辺境伯と嫁の噂話は何だったんだ?ローレンスが逃げないか試されていたのか?それともからかわれていたのか?
いずれにせよ、メロディーナのためにローレンスにも見張りがついていたのかもしれないと思った。
「でもね、離婚の手続きをしようと思っていたらレナード様が急に倒れてそのまま亡くなってしまって。
辺境伯様たちも、気にせずに幸せになってくれって、平民の戸籍を作ってくれたの。」
だからか。メロディーナに平民の戸籍があったから、ランスと簡単に結婚できたというわけだ。
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