逃げた先で見つけた幸せはずっと一緒に。

しゃーりん

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そう言えば、メロディーナは父親から戻ってくるなと言われたと言っていたことを思い出した。

だから前辺境伯が亡くなったことで婚姻関係も終わり、それをきっかけに平民の戸籍を用意してもらったということか。 

だが疑問が残る。


「メロディーナ、君が産んだ子供が前辺境伯の子供ではないと知った辺境伯様たちは怒らなかったのか?」

「レナード様が事前に話してくれていたの。それに、恋人の有無を確認せずに結婚を強いたと辺境伯様にも謝られてしまったわ。」

「辺境伯様が望んだことだったのか?結婚は。」


メロディーナは嫌そうな顔をした後、話し出した。


「私の父はギャンブル癖があって、その借金のために貧乏暮らし。そして私と引き換えにギャンブルの借金を無くす話をしているところを辺境伯様が耳にして、レナード様の話し相手として雇うと言ってくださったそうなの。借金は前清算で払ってやるからって。」

「話し相手として雇う?」

「そう。初めは結婚ではなく雇われるはずだった。でも父が借金に色を付けて娘を買ってくれと言い出したそうなの。辺境伯様は一度売ったのだから二度と売れると思うなと父に釘をさしたって言っていたわ。だから、戻ってくるなって父は私を捨てたの。」
 
「辺境伯様はメロディーナを助けてくれたんだな。」

「ええ。そしてもちろん、あなたのことも誰だか調べていたわ。」


それはそうか。メロディーナのお腹の子の父親がクズのような男なら困ると調べるか。
だからメロディーナも僕が誰か教えてもらっていたんだな。


「……ローレンス・オリオールだってことを?」

「そう。学園にも通っていたし、社交界に出たこともあったあなたの顔を覚えている人もいるわ。私も学園に通っていたのよ?一つ下の学年に。」

「僕を知っていた?」


え?辺境伯に教えてもらう前から知っていたのか?


「ええ。私はあなたの弟レナウンの同級生だもの。レナウンがあなたを見て嘲っているところも見たことがあるわ。オリオールはあなたのものなのに、親の再婚でオリオールに住まわせてもらっているだけの居候の彼と立場が逆転していると思ったわ。
偏食?どう見ても栄養失調だって誰でもわかるわ。身長が高いから余計に細さが目立っていたのね。
私と同じように、不審に思う学生は他にもいたの。でも、口に出せることじゃなかった。」


そうか。いつも一人でいて親しい友人がいたわけではなかったから目立っていないと思っていた。
だけど、違う意味でも目立てるんだな。高い身長に気味が悪いほどの細さ、そして複雑な家族環境というのは。


「本人がそのうち何とかなると虐待を受け入れていたんだから周りは何もできないよな。」


どうして助けを求めなかったのか。
自分が思う以上に、ローレンスとレナウンを比較して怪しんでいる者は多かったのだろう。




 
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