自国から去りたかったので、怪しい求婚だけど受けました。

しゃーりん

文字の大きさ
1 / 21

1.

しおりを挟む
 
 
今日は午前中に学園の卒業式があり、夜は卒業パーティー。
この卒業パーティーは王城で開催され、卒業生やパートナー、両親だけの参加のため、通常の夜会よりも少人数のパーティーである。

少し早めに来ていた侯爵令嬢アミディアは、一人で庭園を散歩していたところ、同じく卒業した令嬢3人に捕まった。
彼女たちは、学生時代からアミディアに一方的に文句を言う。


「アミディア様、あなたがサミール様との婚約を解消しなかったからメレディス様が泣いていたわ。
 『卒業パーティーは婚約者であるアミディアをエスコートしなければならない』と言われたって。
 でも、『1曲ダンスを踊れば後は君と踊れる』とも言われたそうよ。」

「いい加減、婚約解消に同意するべきじゃないのかしら。
 愛されてもいないのに、将来の公爵夫人にしがみつこうだなんて愚かだと思うわ。」

「そうよね。あ、このままアミディア様をどこかに隔離したらどう?
 サミール様もアミディア様が見つからなければメレディス様をエスコートされるわ。」


……ちなみに、彼女たち3人は子爵令嬢と男爵令嬢。ここにはいないけれどメレディスも子爵令嬢。
アミディアは侯爵令嬢なのだけれど、学生時代は爵位の違いで虐げたり命令したりすることを禁止されていたため、親の爵位を気にすることなく過ごすことを推奨していた。

ただ、それは学生の間の話。
午前中に卒業式を終えたため、アミディアたちはもう学生ではない。

友人でもない格下の令嬢3人にアミディアが我慢する必要はもう、ない。

しかし、反論しようとした寸前、上から男の声が聞こえた。


「この国の令嬢は物騒なことを言うんだな。令嬢が令嬢を隔離?
 監禁ってことだよな。
 それって、この国では犯罪にはならないのですか?」


男は、最初は私たちのいる方に向かって話し、最後は一緒にいる誰かに向かって話したようだった。

男が2人、テラスから下にいる私たちを見ていた。その後、更に2人増えた。


「いや、わが国でも監禁は犯罪だ。」


そう言ったのは、王太子殿下だった。
その言葉と、言った人物が王太子殿下であったことに驚いたのか令嬢3人は震え始めた。


「それに、3人の令嬢たちはアミディア嬢より爵位が上の令嬢か?違うだろう?
 私が記憶している高位貴族令嬢の中に君たちの顔は覚えがないからな。 
 侯爵令嬢相手に、よくそんな口の利き方ができるな。
 卒業したら、もう学生ではない。一貴族として社交界に出ることになる。
 卒業式で言われたことを聞いていなかったのか?」


学園長が卒業式に言った言葉の意味をちゃんと理解していなかったのだろう。
学生時代は大目に見られた言動も、一貴族となれば自分の言動は親兄弟にまで影響を及ぼす。

大目に見られてはいるが、卒業後の要注意人物としてチェックされていることには気づいていない。
彼女たちもアミディアの侯爵家では注意人物とみなされている。


「それになぁ、さっき名前が出てきたメレディス嬢?
 君たち3人の誰でもないよな。
 全く関係のない君たちがアミディア嬢を責める筋合いはないんだ。
 そのメレディス嬢に頼まれてアミディア嬢を脅しているのか?」


令嬢たちは青い顔をしたまま答えない。
王太子殿下は一人の令嬢を指差して答えさせた。


「お、脅していたつもりはありません。
 メレディス様に頼まれていたわけでもありません。
 ですが……メレディス様が公爵家に嫁いだ後も私たちと仲良くしてくださると……」

「へー。サミールは本当にメレディス嬢と結婚する気だったのか?
 それともメレディス嬢の思い込みだったのか?わからないがどうでもいいか。
 3人の令嬢、パーティーに行っていいよ。
 だが、今のことはそれぞれの親には報告させてもらう。
 しばらく社交界には出られないかもしれないから、楽しんでくるといい。」 


3人の令嬢たちは青い顔をしたまま逃げるように去っていった。

アミディアもお礼を言って去ろうと思ったが、その前に上から声がかかった。
 

「ちょっと、上がってきてくれないか?」 


最初に聞こえた男の声だった。


 



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私、今から婚約破棄されるらしいですよ!舞踏会で噂の的です

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
デビュタント以来久しぶりに舞踏会に参加しています。久しぶりだからか私の顔を知っている方は少ないようです。何故なら、今から私が婚約破棄されるとの噂で持ちきりなんです。 私は婚約破棄大歓迎です、でも不利になるのはいただけませんわ。婚約破棄の流れは皆様が教えてくれたし、さて、どうしましょうね?

傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~

日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】 https://ncode.syosetu.com/n1741iq/ https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199 【小説家になろうで先行公開中】 https://ncode.syosetu.com/n0091ip/ 働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。 地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?

辺境伯令嬢が婚約破棄されたので、乳兄妹の守護騎士が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  王太子の婚約者で辺境伯令嬢のキャロラインは王都の屋敷から王宮に呼び出された。王太子との大切な結婚の話だと言われたら、呼び出しに応じないわけにはいかなかった。  だがそこには、王太子の側に侍るトライオン伯爵家のエミリアがいた。

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。

前世の記憶がある伯爵令嬢は、妹に籠絡される王太子からの婚約破棄追放を覚悟して体を鍛える。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

幸運の女神である妹を選び婚約破棄するようですが、彼女は貧乏神ですよ?

亜綺羅もも
恋愛
サラ・コリンズにはレイア・コリンズいう双子の妹がいた。 ある日のこと、彼女たちは未来を見通す占い師から、どちらかが幸運の女神でどちらかが貧乏神だと告げられた。 両親はいつからか、幸運の女神はレイアだと信じ始め、サラは貧乏神だと虐げられ始められる。 そんな日々が続き、サラが十八歳になった時、ジーク・バージリアンという男と婚約関係を結ぶ。 両親は貧乏神を追い出すチャンスだと考え、ジークに何も言わずにサラとジークとの婚約をさせていた。 しかし、ジークのことを手に入れたくなったレイアは、その事実をジークに伝え、サラから彼を奪い取ってしまう。 ジークに婚約破棄を言い渡されるサラ。 しかしジークもレイアもサラの両親も知らない。 本当の幸運の女神はサラだと言うことに。 家族に見捨てられたサラであったが、エリオ・ルトナークという男性と出逢い、幸せに向かって運命が動き出すのであった。

婚約破棄ですか?はい喜んで。だって僕は姉の代わりですから。

ルーシャオ
恋愛
「女が乗馬をするなどはしたない! しかも何だこの服は、どう見ても男装だろう! 性倒錯甚だしい、不愉快だ!」 タランティオン侯爵家令嬢メラニーは、婚約者のユルヴェール公爵家のドミニクからきつく叱責された。しかしメラニーは涼しい顔で、婚約破棄をチラつかせたドミニクの言葉をすんなり受け入れて帰る。 それもそのはず、彼女はメラニーではなく双子の弟メルヴィンで、もっと言うなら婚約は目眩しだ。祖父であり帝国宰相ランベルトの企みの一端に過ぎなかった。メルヴィンはため息を吐きながらも、メラニーのふりをして次の婚約者のもとへ向かう。すると——?

婚約破棄されたので30キロ痩せたら求婚が殺到。でも、選ぶのは私。

百谷シカ
恋愛
「私より大きな女を妻と呼べるか! 鏡を見ろ、デブ!!」 私は伯爵令嬢オーロラ・カッセルズ。 大柄で太っているせいで、たった今、公爵に婚約を破棄された。 将軍である父の名誉を挽回し、私も誇りを取り戻さなくては。 1年間ダイエットに取り組み、運動と食事管理で30キロ痩せた。 すると痩せた私は絶世の美女だったらしい。 「お美しいオーロラ嬢、ぜひ私とダンスを!」 ただ体形が変わっただけで、こんなにも扱いが変わるなんて。 1年間努力して得たのは、軟弱な男たちの鼻息と血走った視線? 「……私は着せ替え人形じゃないわ」 でも、ひとりだけ変わらない人がいた。 毎年、冬になると砂漠の別荘地で顔を合わせた幼馴染の伯爵令息。 「あれっ、オーロラ!? なんか痩せた? ちゃんと肉食ってる?」 ダニエル・グランヴィルは、変わらず友人として接してくれた。 だから好きになってしまった……友人のはずなのに。 ====================== (他「エブリスタ」様に投稿)

処理中です...