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しおりを挟むココミアとデントの交際は順調に進み、両家ともに異論はなかったために婚約した。
ザッカリーには無口で通したけれど、デントには毒舌だということを話した。
すると、時と場所さえ考えてくれれば問題ないと言われた。
むしろ、思っていることを我慢されるよりも言ってほしい、と。
ビアンカみたいに自分が正しいと思い込み、他の意見を聞こうともしないことは困るけれど、お互いに意見を言い合い納得することが大事だとデントは言った。
ココミアもそう思い、デントと話をするときは無口になるのをやめた。
すると、デントはココミアの話を毒舌とは思わないと言う。
きつい言葉にならないようにココミアが意識しているせいもあるだろうが、それほど言葉を選んでいるようにも見えないからだ。
「いったい誰に毒舌って言われたんだ?」
「お兄様に……8歳のときに言われたわ。」
「……子供のときは思ったことを口にする。遠慮も遠回しの言葉も知らないからな。
きっと、兄上は君に言い負かされたか言われたくないことをズバッと言われたんだろう。」
「……兄が母に泣きついて、母に言葉を選びなさいって言われたの。
その時は毒舌っていう意味がわからなかったけど、多分、言ってはいけない言葉を言ったのよね。
今思えば、兄はよく泣いてた。私がいじめてた?」
「女性の方が口達者だと言うからね。毒舌って言葉も適切じゃないだろう。
いじめていたというよりも、君の口に勝てない兄上が悔しくて泣いたんだろうな。」
「そうなのかも。ふふ。でも社交界では無口と思われたままでいるわ。
ニコニコしながら、みんなの話を聞く方が自分で話すよりも楽しいんだもの。」
そんなココミアをデントは愛おしそうに見つめていた。
結婚まであと1年。
思いのほか早くココミアと婚約できたのは、公爵令嬢ラフレンツェが言った『縁』という言葉のおかげである。
あの言葉をきっかけに、周りまでデントとココミアの婚約を煽ってくれたのだから。
デントはビアンカと婚約解消するつもりでいた。
数年前まで、デントの伯爵家はまだ子爵家だった。その時にビアンカと婚約した。
しかし、デントの家が伯爵家となってからのビアンカは増長し過ぎた。
何が将来の伯爵夫人だ。何度恥ずかしい思いをしたことか。
誰か他にいないだろうか。ビアンカを妻にしたら高位貴族に無視されそうだ。
そう考えていた頃にビアンカに友人として紹介されたのがココミアだった。
おとなしそうだが、笑顔が可愛い。そして品があった。
伯爵家として新参者の自分たちと違って歴史ある伯爵家。
それだけで信用がある気がした。
婚約者はいたが、ザッカリーは浮気者だし何とかなるかもしれないと淡い期待を持った。
不誠実なザッカリーのことをココミアにどうやって知らせようか。
アイツと親しい婚約者には見えないが。
それでも、ココミアはショックを受けて泣くだろうか。
いち早く慰めたら、僕にも可能性があるだろうか。
そのためには、やはりビアンカとの婚約を解消しておかなければならない。
婚約解消に手間取ってしまえば、ココミアが別の男と婚約してしまうかもしれないから。
そんなことばかり考えていた僕は、確かに浮気を疑われても仕方ないかもしれない。
騒々しいビアンカよりも、凛として見えるココミアに気持ちはとっくに向いていたのだから。
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