あなたに最後の贈り物を

しゃーりん

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前回のお茶会後、ナディア様に夫ブレイズの話を聞いた。
そして今回のお茶会が始まった時には、既にメルリーがブレイズとアイリーンさんのキスを知っていると広まっていた。
 
ナディア様は自分が話したということを知られたくないと言っていたけれど、メルリーと話しているところを誰かに見られていて、聞き出されたのかもしれないと思った。
 
あるいは、ナディア様が自ら報告した方が、伯爵夫人の覚えがめでたくなると思ったか。

どちらにせよ、遠巻きに嘲笑されていた話のネタがメルリー本人にも聞こえるようなネタとなった。


「先日の親睦会、とうとう、あのアイリーンはブレイズさんの膝の上に跨ってキスを始めたそうよ。」

「そうそう。うちの夫も驚いたらしいわ。彼女が倒れないようにブレイズさんも腰を持って支えていて、まるでキスを望んでいたみたいだって。」

「知ってる?アイリーンはその時、ブレイズさんのアソコを刺激するように腰を動かしていたそうよ。」

「それって、服を着ていなかったら……」

「人の目があるところで大胆よねぇ。みんな、二人の方を見ない振りをして飲んでいるらしいわよ。」

「本当にキスだけの関係なのかしら?……あら、ごめんなさいね。」
 

メルリーに聞こえるように話していながら、わざとらしい謝罪があった。


「メルリーさんって、騎士の妻の鑑よね。全く動じていないなんて。」

「身近な女と噂になるなんて、私なら許さないわ。まだ娼婦の方が割り切れるわね。」

「でも、だから私たちは助かってるんじゃない。感謝するわ。メルリーさん。」
 

夫人方はメルリーに適当に話を振っては、メルリーが返答する間もなく次々と話す。
メルリーがどう思っているのかということは、彼女たちは今はどうでもいいのだ。

ブレイズとアイリーンさんのキスをメルリーが嫌がっていることをわかっているから。

彼女たちは、自分の夫をアイリーンのキスの被害者にしたくないから。
ブレイズを生け贄のようにしておきたいから。

要するに、メルリーもここでは下っ端扱いなのだ。
彼女たちに助けを求めたりせずに、夫を生け贄に捧げなさいと言っている。
 
 
何故、そうなるのだろう。
どうして、アイリーンさんのキスは許される?
 
どちらかと言えば、妻たちが一丸となって、アイリーンさんの行動を窘めるべきではないの?


メルリーの味方はここには全くいないように感じた。






「ナディア様。」


メルリーは逃げるように帰ろうとする彼女をなんとか引き止めた。 


「……何かしら?あぁ、あなたが知ったと報告したのは私よ。ごめんなさいね、保身的で。」

「いえ、あの、夫たちの予定をご存知ですか?訓練がいつあるとか。」

「予定表、渡されていないの?」

「はい。訓練とか、見に来なくていいって言われてて。」


結婚前からそうだった。
おそらく、訓練を見に来ていた女性に誘われることもあったのだろう。

メルリーが嫌な思いをしないように、というブレイズなりの配慮だったのだと思う。
結婚後は誘いに乗ってないはずだが、予定を知りたいとメルリーも言わなかったために以前のままだった。 
 

「訓練を見に行くの?あ、ひょっとしてアイリーンを見に?」

「はい。キスをやめてほしいと言おうと思っています。」


メルリーの言葉にナディア様はひどく驚いていた。
 
 
 
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