あなたに最後の贈り物を

しゃーりん

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メルリーは、ブレイズの第三部隊が訓練場を使う日、そこを訪れた。

ナディア様もなぜか一緒に来てくれた。
結果を伯爵夫人に報告するためなのかもしれない。

少し離れたところから、訓練を見ていた。
体が鈍らないように、定期的に訓練が行われているらしい。

十年くらい前までは、部隊から数人が選ばれて大会が行われていたが、不慮の事故があり、なくなった。
私怨による殺害が原因だと囁かれているが、公にはなっていない。
模擬刀で対決する案も出ているが、元々怪我人が続出して野蛮だと反対意見も根強いらしい。


客席の方にもちらほらと人がいた。
若い令嬢たちもいる。

家族と思われる子供たちもいる。

近衛騎士の訓練の時は、もっと人が群がるようにいるらしい。

そんな、誰でも知っているような予定を、メルリーは知ろうともしなかった。

ブレイズの遊び相手に、メルリーがブレイズの妻だと知られることを怖れていたのかもしれない。
過去のブレイズの遊びは、未だにメルリーを傷つけているのだと今更ながら気づいた。 

 
「あ、休憩に入るみたいね。……本当に行くの?」

「はい。アイリーンさんがやめてくれたら、誰も困ることはないと思うから。」

「それは、そうだけど。」
 

ナディア様は気乗りしないらしい。
ブレイズから自分の夫にアイリーンのキスの相手が変わると困るからだろう。

しかし、ブレイズだけでなく隊全員に対し、キスはやめるべきだと言うつもりなのだから問題ないはず。


向かって行くと、ブレイズの後ろ姿が見えた。

女性の騎士の姿も見えた。
彼女がアイリーンさんなのだとわかった。

すると、彼女がブレイズを引き寄せ、首に腕を回してブレイズの頬にキスをした。


は…………?
 
何してるの?

ここは訓練場。仕事中で、酔っ払っているわけでもないのに。

 
「いきなり何だよー。」


ブレイズが笑いながらそう言っている声が聞こえた。
全く、怒っている様子はない。

よくあることなの?

隊以外の人も見ているのに?


メルリーは思わず止めた足を再びブレイズの方へと踏み出そうとした。

しかし、ナディア様に腕を取られて、訓練場から遠ざけられた。


「どうしてですか?」

「あんなところで修羅場なんてダメよ。第三部隊が咎めを受けてしまうわ。」


確かにそうかもしれない。
でも、原因がアイリーンさんだと公にできたのに。
そのためにここに来たのに。


「だけど、許せません。仕事中に、あんなこと。」

「正直、私も驚いたわ。親睦会での話しか知らなかったから。でもね、あれは確信犯よ。」

「確信犯?」

「アイリーンは私たちが近づいていることに気づいていたわ。ブレイズさんの妻であるあなたにわざと見せつけたのよ。だから、訓練場では初めてしたんじゃないかしら。」

「私に、わざと見せつけるために?」


やっぱり、悪意があるじゃない。 


「それにね、アイリーンを放置しているのは、騎士たちに後ろめたさがあるからだそうよ。」  


後ろめたさ?

やっぱり、理由があってアイリーンさんの行動は咎められていないのね。 


 
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