夢を現実にしないための正しいマニュアル

しゃーりん

文字の大きさ
4 / 14

4.

  
 
  
「では、婚約式は予定通りってことで。その後、都度対応を考えていこう。」


王太子殿下の言葉を最後に退席しようとジークのエスコートで立ち上がったが、思い出したことがあり、
マリエルはまた座った。


「思い出しましたわ。アダム様に現在付かれている侍従や侍女あるいは乳母の方は適任でしょうか?
 夢のアダム様がリリーと不仲になるのはまだ先ですが、婚約後のリリーがアダム様とお会いした時の
 話の内容やマナーが引っかかり、甘やかされすぎているのではないかと思った記憶があります。」


「なるほど。早急に確認しよう。……他にも何かないか?」


「少し先のことですが、勉強を教えて下さる先生方の中にも悪意を感じるような記憶があります。
 あからさまにリリーを褒めて持ち上げて、アダム様の間違いを覚えが悪いと貶すことが…」


「わかった。すまないが、思い出せる教師の名前を纏めておいてくれないか?精査が必要だな。」


「かしこまりました。婚約式にお持ちします。」




応接室から出たマリエルとジークは、王城の出口に向かって無言で歩いていた。
思った以上に重い話が頭と肩に乗っかっている気分だった。


「疲れただろう?やっぱり付き添って帰ろうか?」


ジークはこのまま仕事に行く予定だったが、マリエルが心配だった。


「大丈夫よ。馬車ですぐじゃない。お仕事頑張ってきて。」


既に準備がされていた公爵家の馬車に乗り込み、ジークと別れて帰宅した。

部屋着に着替え、子供たちと昼食を取り、王太子殿下と約束した教師の名前を書きだそうとしたが、
ふと、王城の書庫にある伝記には夢の出来事が記されていると聞いたことを思い出した。
ならば、たとえ未来を変えようと夢の出来事は詳細に残しておく必要があるはずだ。
ということは、始まりの婚約式の場面から最後まで事細かに書き出してしまおう。
そうすれば教師の名前も自ずと出てくる。

……傲慢な王子が出てくる夢の伝記の取り扱いがどうなるかは私の知ったことではないのだ。

リリーベルの心と体の健やかな成長と幸せ……絶対に守ってみせる!!



…改めて思い出しながら書き始めたが…


「婚約から学園入学前までを書いてみたけど、王子の周りの人達、やっぱりおかしいわ。
 
 王子とリリーを不仲にさせて、婚約解消させたいのかしら?
 その場合、リリーに代わる新たな婚約者を用意できる貴族が裏にいるってこと?
 侍従や教師は、その人物に指示されてる?…う~ん…
 
 頭が悪い王子を傀儡の王にして、自分が牛耳る??
 でもそれだと、既に王太子殿下の身近にいないと無理よね。
 …一番身近にいるのがジークなのよね。
 
 今、国王陛下の身近にいる宰相や大臣の令息が王太子殿下の身近にいるって人はいるのかしら?」


と思い付いたこともついでに書き出していると、笑い声が聞こえて頭にキスされた。


「探偵みたいだね。疲れていないようでよかった。夕食の時間だよ。」


「びっくりしたわ。お帰りなさい。
 …小説の読み過ぎかしら?頭の中でいろんな陰謀説がグルグルしてるわ。」


廊下を歩きながら恥ずかしくなったが、


「いや、いろんな視点から考えるのは無駄じゃない。
 調べた先のいずれかが真実に繋がる可能性はあるんだから。
 …『傀儡の王』案以外にもあるのかい?」


小声で聞かれたので、小声で答えた。…確かにヤバい内容だわ…


「そおねぇ。あとは『リアナ女王』案とか『リリーが欲しい』案とか。」


「うわっ!どれもくだらないって一蹴出来ない案だな。内容に想像はつくが、寝る前に聞こう。」


既に着席していた子供たちと楽しく会話をしながら夕食を食べる。

ジークは朝か晩、なるべく家族と食事をしながら子供たちの話を聞く。
テーブルマナーをマスターし終えた子供たちは会話しながらでも下品さを感じない。…さすが公爵家。
一日の出来事、学んだことや遊んだことを楽しそうに話す姿は、本当に愛おしい。




おやすみの挨拶を済ませ、子供たちと別れて部屋に戻った。
風呂に入り寝室へ行くと、ジークが先程書いた夢の内容を読んでいた。


「これを読むと、確かに王子の周りは怪しいな。
 これをうまく対処することで、二人の仲はある程度まで良い方向に進展できるんじゃないか?」


「そうよね。入学前までに相思相愛になるのが理想だわ。
 令嬢に見向きもしなければ、私達のように問題なく学園生活を楽しんで卒業出来るわ。

 …そういえば、ルナの夢の令嬢は誰だったのかしら…私達は会ってるはずよね?」


「…誰だ?さっぱり思い当たらない…」


「今更だけど、ちょっと興味があるわ。幸せに暮らしててほしいわね。」


「さて、さっきの『リアナ女王』と『リリーが欲しい』案のことだけど、説明してくれる?」


「『リアナ女王』案は、アダム王子のダメっぷりを知らしめて王太子にならないようにするの。
 そして、隣国の王太子と婚約しているリアナ王女が婚約解消して女王になるためには、王国内で
 王配を探すことになるでしょ?自分の息子とか甥とか?
 王女の相手なら、5歳くらい上までの令息が候補に挙げられてもおかしくないし…

 『リリーが欲しい』案は、そのままよ。
 あの子の可愛さにメロメロになったどこかの誰かが、王子との婚約解消を狙ってるの。
 息子の嫁にしたい!ってね。どこかの誰か本人ってこともあるけど、考えたくもないわね。」


「なるほどね。どの案も荒唐無稽とは言い難い説得力がありそうだ。
 さっきの『傀儡の王』案と一緒に纏めておいてほしい。

 さあ、そろそろ寝よう。おいで。」


そう言って手を伸ばしてくるジークの腕に囲まれて、眠りについた。



 

あなたにおすすめの小説

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき
恋愛
 姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。 全12話

義兄のために私ができること

しゃーりん
恋愛
姉が亡くなった。出産時の失血が原因だった。 しかも、子供は義兄の子ではないと罪の告白をして。 入り婿である義兄はどこまで知っている? 姉の子を跡継ぎにすべきか、自分が跡継ぎになるべきか、義兄を解放すべきか。 伯爵家のために、義兄のために最善の道を考え悩む令嬢のお話です。

公爵令嬢は結婚前日に親友を捨てた男を許せない

有川カナデ
恋愛
シェーラ国公爵令嬢であるエルヴィーラは、隣国の親友であるフェリシアナの結婚式にやってきた。だけれどエルヴィーラが見たのは、恋人に捨てられ酷く傷ついた友の姿で。彼女を捨てたという恋人の話を聞き、エルヴィーラの脳裏にある出来事の思い出が浮かぶ。 魅了魔法は、かけた側だけでなくかけられた側にも責任があった。 「お兄様がお義姉様との婚約を破棄しようとしたのでぶっ飛ばそうとしたらそもそもお兄様はお義姉様にべた惚れでした。」に出てくるエルヴィーラのお話。

王太子殿下と婚約しないために。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ベルーナは、地位と容姿には恵まれたが病弱で泣き虫な令嬢。 王太子殿下の婚約者候補になってはいるが、相応しくないと思われている。 なんとか辞退したいのに、王太子殿下が許してくれない。 王太子殿下の婚約者になんてなりたくないベルーナが候補から外れるために嘘をつくお話です。

従姉の子を義母から守るために婚約しました。

しゃーりん
恋愛
ジェットには6歳年上の従姉チェルシーがいた。 しかし、彼女は事故で亡くなってしまった。まだ小さい娘を残して。 再婚した従姉の夫ウォルトは娘シャルロッテの立場が不安になり、娘をジェットの家に預けてきた。婚約者として。 シャルロッテが15歳になるまでは、婚約者でいる必要があるらしい。 ところが、シャルロッテが13歳の時、公爵家に帰ることになった。 当然、婚約は白紙に戻ると思っていたジェットだが、シャルロッテの気持ち次第となって… 歳の差13歳のジェットとシャルロッテのお話です。

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

友人の好きな人が自分の婚約者になりそうだったけど……?

しゃーりん
恋愛
ある日、友人リリスに好きな人ができたと告げられた。 協力するという他の友人たち。私クレージュも「思いが通じるといいね」と言った。 それからわずか数日後、父から告げられた婚約する予定の令息ロメオはリリスの好きな人だった。 でも、これは政略結婚。友人の好きな人だから嫌だと言うつもりはなかったが、顔合わせをしたロメオの印象はあまり良くなかったこともあり、少し調べることになった。 リリスには正式に婚約することになったら話そうと思っていたが、翌日に学園でロメオに話しかけられて婚約するかもしれない相手だと知られてしまう。 なのにリリスがロメオに告白。なぜかロメオに責められる私。自分が悪者にされて呆れるというお話です。

ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります

奏音 美都
恋愛
 ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私のご婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私はご婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。  そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。  それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。