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しおりを挟む部屋で荷物をまとめる。
嫁ぐ時に自分が持って来た物と嫁いでから贈られた物。
向こうが悪いんだから、慰謝料代わりに全部持って行ってもよさそうだけど、一応ね。
ドレスなんて人のお下がりを公爵令嬢が着るわけもないし、捨てるくらいなら欲しいわ。
生地は良い物だから、売ることも作り替えることもできるし。
実家の子爵家は貧乏じゃないわよ?私は無駄が嫌いなだけ。
服も靴も宝石も…気持ちも、その場所に必要な物だけでいいの。
しばらくして、バタバタと足音が聞こえたと思えば、ノックもなしに扉が開かれた。
「ティナ、ティナ、ごめん、ごめん。こんなことになるなんて。
待ってて。家を用意して迎えに行くから。
妻じゃなくなったけど、愛人みたいになってしまうけど、君への愛は変わらない。」
「……は?」
何言ってるの、この人。
「私が愛しているのはティナだけだ。
あのレーシアという公爵令嬢には嵌められただけ。
公爵家には逆らえないから結婚はするけど、愛はない。
誰にも私たちの愛は引き裂けない。君のもとに通うから待ってて。」
「いえ、結構です。実家に帰ります。」
いやいや、勘弁して。
「ティナ、怒ってるんだね?本当にごめん。
レーシア嬢は遊び慣れてる。正直、アソコが緩いくらいだ。
ティナの締め付けとは全然違う。
彼女は私と結婚してからも遊ぶに違いない。そうすれば離婚できる。だから待ってて。」
「簡単に離婚できると思っているのですか?公爵家のご令嬢ですよ?
それに、元々あと数か月で離婚するように侯爵夫人から言い渡されていました。
ですので、それが早まっただけ。
あなたの愛人になるつもりも全くありません。」
何を勘違いしているのよ。
「ティナ、無理しなくていい。そう言って私への愛を振り切らなくていいんだ。
私は君しか愛さないから。」
だーかーらー!
「ファルク様、勘違いされているようですわ。
私はファルク様の愛人になりたいと思うほどあなたを愛しておりませんが。」
もうはっきり言ってしまうわ。
「……え?で、でもこうして結婚して私に抱かれて気持ち良さそうで……」
「高位貴族からの求婚をどうやって断れと?
私は何度も相応しくないと言いましたよね?強引に進めたのはあなたです。
それに、結婚したからには閨を共にしないことには子供はできません。
ただそれだけのこと。
しかもあなたが感じさせようと攻めるのですから、私が快楽を得るのは当然なのでは?」
「嘘だっ!演技には見えなかった。毎日のように抱かれたじゃないか。嫌なら断るだろう?」
「演技ではありませんよ?体が快感を得ることは気持ち良いですからね。
結婚したからには私を抱くのはあなただけでしたからね。あなたと違って不貞してませんから。」
知ってますよ?あなたが他の女性を抱いていること。
「……え?わ、私も君だけ……」
「今更、そんな嘘はもう必要ありませんよ?
私が月のもので閨を共にできない時のお相手が数人いらっしゃいますよね。
ある方に『旦那様をお借りしました。満足させていただきましたわ』と毎回言われます。
それに、お手紙で満足したことと忘れ物を私宛に送ってくださる方もおられますわ。」
夫婦仲を破綻させたい女性はいくらでもいるのよ?
「そんな…………」
「離婚届は公爵様が提出してくださいますの?
レーシア様が嫁いで来られた時に私がいると不愉快でしょうから、すぐに出ていきます。
2年と少しの間、お世話になりました。
レーシア様と仲良くお過ごしください。」
まとめた荷物を侍女に持たせて部屋を出ようとすると、ファルクが叫んだ。
「愛しているフリをしていたのか?」
「あなたが愛されていると思っていたのなら、フリと言われても仕方がないかもしれません。
なので、愛しているフリはもうおしまいですね。さようなら。」
侯爵夫妻とも挨拶を交わし、当然、馬車も出してもらって子爵家まで送ってもらった。
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