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結婚してからの物は、結局ほとんどが私の手元に送られてきた。

捨てるくらいなら送ってほしいと侍女にはお願いをしておいた。
侯爵夫人も、息子の前妻の物など扱いに困るし。
とにかく、速攻でレーシア様を迎える準備をしなければならないのだから。

慰謝料も持参金も一緒に送られたので、口止めも兼ねているようね。

 


子爵家に出戻りした私を、両親は温かく迎えてくれた。

実は、私は子爵家の一人娘で跡継ぎだった。
それを、ファルク様が強引に婚約したものだから、困ったことになった。

結局、3歳下の従弟に跡を継ぐことが決まったんだけど、その従弟チェイスは頑固だった。


『ティナ姉が25歳になるまでは子爵家の養子にはならない』


チェイスは私の結婚がうまく行かないと思っていたようで…… 

浮気されて離婚した場合、再婚して子爵家を継げばいい。
子連れで出戻った場合も、子爵家を継いで子供と暮らせばいい。
侯爵家に子供を置いてきた場合も、再婚して子爵家を継げばいい。

25歳というのは単なる目安みたいなものだけど、それから再婚して子供を産むギリギリの歳ということなんだと思う。
もちろん、25歳を過ぎたとしても出戻り大歓迎って言ってたけど。



チェイスは学園を卒業したばかりの18歳。
養子になるのはまだ先だけど、子爵家の仕事に正式に取り組み始めたばかりだった。

そんな中、本当に出戻ってきた私、21歳。……どうするべき?



両親ともチェイスとも今後の話をしなければ落ち着かないわ。
そう思い、出戻った次の日に声をかけた。

「もう少し休んでからでもいいのに。もう仕事がしたいのかい?」

父が呆れたように言うけど、チェイスはこの状況をどう思ってる?気持ちが変わってるかも。

「チェイス、あなたが思っていた通り出戻って来てしまったわ。
 私が子爵家の跡継ぎに戻ることをあなたは認めてくれる?」

「もちろん。そのために養子にもならなかったんだから。」

「でも、そうするとあなたは仕事を探さないといけなくなるわ。
 学園を卒業する前に私が戻って来ていたら、別の道に早く進めたのに……」

「ん?俺はこのままこの子爵家で働くよ?」

「だけどあなたが覚えている仕事は、私と私の再婚相手がすることになるの。
 その下で働くの?それなら実家のお兄さんを手伝う方がいいんじゃない?」

「ああ、そういうこと。俺がティナ姉の再婚相手になるから問題ないよ?」

「「「……え?」」」

両親共々びっくりしてしまった。再婚相手?チェイスが?

「な、なんでチェイスが私と?」

「え?俺でいいじゃん。ダメなの?」

「だって私は3歳も上よ?初婚でもないし、あなたならまだ縁談の話が来るでしょ?」

「あのな、子爵家の次男なんて、早くから婿入り予定で婚約するか独身で仕事に生きるかだ。
 結婚しても継ぐ家がないから子供は平民みたいなもんだろ?
 でもティナ姉と結婚すれば婿入りだし?仕事あるし?年齢なんて気にしないし?
 あ、そうだ。俺の人生を振り回した責任取って結婚して?これでどう?」

呆気に取られたのは私だけでなく両親もだったけど、父はすぐに立ち直った。

「チェイスがティナでいいなら、いいんじゃないか?誰かと再婚する必要はあるんだから。」

「そうよ。また高位貴族から面倒な縁談が来たら困るわ。
 チェイスなら気心知れているもの。再婚相手を吟味する時間も必要ないわ。」

両親まで乗り気なんだけど?!

「ほら。養子になってなくて正解だろ?半年後に結婚な?」

ええ?養子にならなかったのって、私との結婚を見越した上でだったの?……恐ろしい。

 


 
 

 
 
 
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