裏切る前提の結婚は、心が痛かった

しゃーりん

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リオンはレティシアが一緒になるつもりはないと思っていたことに驚いていた。 

リオンとの婚約解消も、ジョエル様との結婚も、貴族令嬢として納得した上で受け入れていたことを。 


「君は僕のことが好きだっただろう?」

「ええ。婚約していた間は。結婚する相手だったのだから、好きになりたいと思って接してきたわ。それはあなたもでしょう?」


先日、ジョエル様と話していて思い出した。
リオンとの婚約を結ぶとき、彼はレティシアの名前を聞いて『姉の方だね』と言った。 
つまり、リオンはレティシアでもルチアでもどちらでもよくて婚約を申し込んできたのだ。
 
ジョエル様はレティシアを指名していたのに、ルチアに甘い父は先にレティシアを婚約させてしまえばルチアでもいいと思ってくれるはずだと安易な考え方をしたのだと思った。


「そうだけど、僕たちはあんなに仲が良かったじゃないか。前の関係に戻ろう。」

「お断りするわ。あなたには他に大切にしなければならない人がいるでしょう?」


リオンは一瞬、動揺したが笑顔で言った。


「ルネットのことか?僕たち二人で育てようじゃないか。」

「ルネットだけじゃないわ。あなたの子を妊娠して産んだ女性がいるでしょう?」 


そう。
リオンは領地で囲っていた女性を孕ませていた。

つまり、リオンは子種を殺す薬など飲んでいなかった。
レティシアは嘘をつかれていたのだ。

このことは、ジョエル様が教えてくれた。
一途にレティシアを待っていたわけではないことを知っているぞ、と教えてやれと言われた。
 

「王都のパーティーでも、何度も女性と休憩室に消えていたわよね。私じゃなくても問題ないわ。」


リオンは知られているとは思っていなかったらしく、ひどく狼狽えていた。


「お、お前だって、ジョエルに抱かれていたんだろう?そのことを、僕がどんなに苦痛に思ったか。
お前を抱けないから他の女で発散して何が悪い?子供だって、僕の子かどうか、わかったもんじゃない。」

 
何、言ってるの?この人。


「子種を殺したと言ったのは嘘だったのね。」

「そうだよっ!そう言えば、レティシアは罪悪感で避妊薬を飲むと思った。ちゃんと飲んだからジョエルの子を妊娠しなかったんだろう?
だから離婚されたんだろう?僕と再婚しないで、どうする気だ?
君が子供を産めないのに結婚して、三年も騙していたことをジョエルに言うぞ!」

「王都に戻ったら、ちゃんと自分の口から言うわ。そうなれば、アーノン侯爵家を謀ったとして慰謝料を払うことになるだろうけれど、それはあなたもよ。」
 

そこは考えていなかったらしく、リオンは焦った顔になった。


「あ、やっぱり言うな。言ったら破滅だ。僕は関係ない。言うなら、君が自分で飲んだことにしろ。」


こんな、しょうもない男を好きだった過去を無くしたい。

 
「私はありのままを話すつもりよ。裏切った罰は受けるわ。」


その時、部屋の扉が開いた。
 

「レティシアに与える罰なんて、ないよ。」


王都にいるはずのジョエル様が、部屋に入ってきた。 
 
 

 
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