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結婚して4年。妻のランジェには妊娠する気配はない。
ラルフは自分に生殖能力があるのかを調べた。自分には問題がなかった。
となると、ランジェに問題があるか、相性が悪いか。
あと1年経っても妊娠しないようなら、ランジェが妊娠できるかどうかを調べてもらうつもりだった。
しかし、ランジェにつけている護衛から知らされたのは、ランジェがこっそり検査をしたということ。
護衛には検査結果はわからないが、出てきた時の様子から、おそらくランジェ側に問題があったと思われるという報告だった。
ラルフは医師に確認するように侍従に伝え、結果、ランジェに妊娠は難しいとのことだった。
となると、公爵家の跡継ぎをどうするか。
ランジェと離婚するか、誰かに子供を産ませて引き取るか。養子は揉めるので却下だ。
離婚は、ランジェの実家の侯爵家との繋がりもあり面倒である。
ランジェに問題があるので繋がりはこのままにすることもできるが。
しかし、離婚するとランジェはもう社交界に出られなくなるだろう。
それを思うと離婚は選びたくない。
ランジェは妻としては問題ない。
両親ともうまくやっているし、公爵夫人となってもやっていけるだろう。
金遣いも荒いわけではないく、使用人にきつくあたることもない。
閨事にもそこそこ積極的で、体の相性もいい。
本当に、子供さえ出来れば問題のない妻である。
子供がそんなに重要か?公爵家にとっては、王弟の直系の血を繋いできたという自負がある。
しかも、自分は子供を作ることができる。
そうなると、ランジェ以外の女性が産んで、ランジェの子供として育てるしかない。
愛人を作るような面倒なマネはする気はない。
ランジェで十分に満足しているし、金をかけてまで囲う気は起らない。
しかし、子供のために妻以外の女性を抱けるかと言われれば、問題なく抱ける。
金を払って妊娠させるために抱く。出産後は関わりを持たない。
それが望ましい。
離婚か、金で誰かに産ませるか。ランジェに選択させようと思っていた時だった。
……侍女長がランジェとエンジュの会話を盗み聞きしたのは。
盗み聞きというのは少し語弊があるが、扉をノックしようとした時に中の2人の話が全部聞こえてしまったということだ。
この侍女長、素晴らしく耳が良いのだ。そのため、とても重宝しているが。
エンジュがランジェに成りすましてラルフに抱かれる。
そんな荒唐無稽な話をしていたと報告があった。
エンジュを抱くのは正直言って、避けたかった。
後々に嫌な予感がしたからである。
普段のランジェなら、そんな愚かなことは計画しないだろう。
おそらく、妊娠できないとわかったことで、焦ってしまったのだと思う。
そこに、自分と同じ顔の妹が家出してきたことで、計画を思いついてしまった。
運がいいのか悪いのか。
しかしランジェが、自分にそっくりなエンジュなら自分の代わりに子供を産んでもいいという気持ちがわからなくもないので、一度だけというなら知らないフリで話に乗ってみようと思った。
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