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17.<セオドア2>
ある日、セオドアは両親に呼ばれた。
『セオドア、お前をドリステル侯爵家の跡継ぎにする』
そう言った父の言葉を理解するまで、セオドアは数秒は固まっていただろう。
『あ、兄上がいるではありませんか』
『ルミナスが言ったのだ。お前に任せたいと』
『なぜ!?』
兄は跡継ぎとして、あんなにも努力していたではないか。
『理由はいくつかあるが、一番大きいのはルミナス本人が研究の道に進みたいからだ。次に挙げるとしたら、社交したくないからになるだろうが』
父が苦笑し、母も笑っていた。
おそらくこれは、留学するもっと前から話し合っていたのではないだろうか。
兄が留学する前に聞いていたなら、セオドアが反対するだろうから言わなかったのだろう。
ふと、フィオナを思い出した。
『フィオナ嬢はどうなるのですか!!彼女は兄上と結婚するつもりで交流してきたのに』
『お前がいるではないか』
『え……?』
『フィオナ嬢の相手は、ルミナスよりもセオドアの方が合うだろう。これはマーティン公爵夫妻も同意見だ』
セオドアは再び固まった。
『ぼ、僕がフィオナ嬢と婚約できるのですか!?』
セオドアの取り乱し方に、父はニヤニヤしながら頷いた。
『嬉しいだろう?』
両親にはセオドアの気持ちなどお見通しだったのだろう。
それは兄もだったのかもしれない。
セオドアとフィオナは婚約することになった。
しかし、兄が留学したばかりだということもあり、公表は先延ばしになった。
セオドアが跡継ぎの座と兄の婚約者を奪ったなどと面白おかしく言われることを避けるためだ。
『結婚相手が僕になってフィオナ嬢がどう思っているかはわからないけれど、僕は嬉しく思っている。君のことをもっと知りたいし、仲良くなりたい』
『わたくしもそう思っています。……できれば、今後は二人で』
フィオナはそう言って、はにかんだ。
いつも、アマーリエ・スコッティ伯爵令嬢が間にいた。
セオドアがフィオナに話しかけても、アマーリエが答えて会話にならなかった。
彼女がいては、なかなか二人きりになれない。
それは同感だった。
『兄上が留学してから、アマーリエ嬢の訪問は断っている。目的の兄がいないからね。それに、彼女は兄狙いのはずが僕に好意があるようだから来られると困るし。
お茶会とかでは彼女を避けられないだろうけど、この屋敷では二人きりで過ごせるよ』
侍女はいるが、アマーリエのように口を挟んでくることはない。
婚約を公表するまでは、外でのデートは遠出するしかなかったが、それも楽しい時間だった。
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