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しおりを挟むそしてミルフィーナの17歳の誕生日。
パトリックは指輪を手にミルフィーナに求婚した。
「ミルフィーナ嬢、僕と婚約してください。」
指輪の石はルビー。周りの装飾で薔薇を表現した指輪だった。
「あ……駄目よ。ルビーは私には似合わないわ。ダイヤモンドがいいわ。また来年、求婚してね。」
そう言ったミルフィーナは指輪に手を伸ばしかけたが、パトリックがサッと指輪をポケットにしまい、ミルフィーナの前から去った。
この指輪を受け取ることは、求婚を受け入れた意味になる。
今までのオレンジ色の薔薇、赤い薔薇、ガラス細工の薔薇を受け取ることとは意味が違う。
あれらは単なる誕生日プレゼントとして渡してもいいものだった。
だが、指輪は別だ。
求婚を断ったのであれば、指輪は渡せない。
そう思い、パトリックはすぐさまミルフィーナの前を退いたのだ。
パーティー客は、まさか指輪での求婚まで断るとは思っていなかったのか、ざわついていた。
今年こそ、ミルフィーナは求婚を受け入れるという意味で、昨年、指輪が欲しいと言ったのだと誰もが思っていたのだ。
実際、パトリックもそう思っていた。
だが、また来年だ。
あの絵本を見て、指輪の色を確認しておくべきだったか。
そんなことを考えていた。
こうして4度目、17歳の求婚も失敗に終わった。
今年こそは大丈夫だと思っていた両親も、期待していたからこそ落ち込んでいた。
「4度目よ?いい加減にしてほしいわ。お気の毒ねって同情されたわ。いくら公爵令嬢でも許せなくて一言言ってやったわ。『あなたは嫁ぎ先では公爵令嬢ではなく嫁になるのですよ』って。」
「そんなこと言ったの?」
嫁と母親の仲が悪いと、夫であり息子である男はどちらの肩を持つかで悩まされる日々だと聞く。
母はもうミルフィーナにいい感情を抱いていない。
「ええ。4度よ?彼女の我が儘で息子が求婚しているのに4度も断るなんて非常識じゃないの。
また来年?ええ。来年こそ彼女は受けるしかないわ。18歳になって学園を卒業するのですもの。
いっそのこと、この1年、彼女と交流を持たずにいたらどうかしら?焦るんじゃない?
あるいは別の男を探すかしら。そうなったらそれでもいいと思うわ。」
確かにそうかもしれない。
母の怒りは最もなことだ。
相手が公爵令嬢だからと、意に沿うよう努力してきたが、袖にしたのは向こうなのだ。
なのに、また求婚を願う。意味がわからない。
こちらも侯爵家だ。
格上に対し下手に出過ぎたところもあるが、侮られるほど格下ではないのだ。
「わかりました。月に一度の誘いにも妹を仕向けてくるくらいですからね。彼女が僕と交流する意思を見せるまで、こちらからは声をかけずにいたいと思います。」
両親はそれでいいと頷いていた。
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