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夫に見向きもされない金だけの妻。
そう思われるのはやはりプライドが許さない。
これからは徐々に社交界にも復帰して、夫婦仲が順調だと思わせる必要があるから。
夫と閨を共にすることは、見向きもされない妻だと周りに思わせないために必要なこと。
財政を立て直した侯爵家を面と向かって貶せる貴族家なんて少ないけれど、金だけでなく愛もあると思わせるにはリースハルトが私に夢中になるやり方が手っ取り早いから。
でないと、リースハルトにソノ気がなくても、愛人候補が湧いてくるのよ!
すべては息子のジョナスのため。
リースハルトはジョナスが侯爵になるまでの繋ぎで必要だから。
だから、昼間の仕事中は余計なことはせずに言われたことに従ってね。
夜の閨ではあなた好みの振る舞いを心掛けるわ。
あなたが愚かなことをこれ以上しでかさないように見張るのが妻として侯爵家の未来を守る私の役割だと諦めたわ。
だって、まさかミランダで懲りたと思ったのに、また愛人を作るなんて思わなかったんだもの。
報告を聞いた時は、本当に捨ててやろうかと思ったくらい。
だから、このまま私に夢中なままでいて?それがあなたのためだから。
……なのに、女性に声をかけられて、ソノ気になりかけてた?いい加減にしてよ。
「不貞をすれば貴族籍から抜くと言ったのを、もう忘れたのかしら?」
「ち、違う。不貞はしていない。ちゃんと我慢した。」
「……我慢しなければ不貞していたってことね。
そう。あなたは私に飽きたの?もう要らないってことね?
じゃあ、私も愛人をつくることにするわ。
結婚してから、娼婦は別としてあなたは2人、私以外の女性と関係を持っていたものね。
私も2人はいいでしょ?
あなた以外の人と口づけをして、あなた以外の人が私の胸や……」
「嫌だ!君は私の妻だ。私のものだ。他の男に抱かせるなんて我慢できない!」
「……あなたは私の夫なのに他の女を抱いていたのよ?
あなた風に言うなら、あなたは私のものなのに。」
「あ……ごめん。そうか。君はこんな思いをしていたってことか。
もう、絶対に絶対によそ見はしない。だから、愛人をつくるのはやめてくれ!」
あの時は別にあなたに気持ちはなかったから、私は呆れていただけなんだけどね。
「わかったわ。本当にこれが最後の許しよ。もう社交界で笑われる態度を取らないでね。」
「約束する。」
本当に最後だからね。
2年後には計画的に2人目も妊娠し、女の子を出産した。
侯爵家も順調に回復していき、それでも子爵家に援助金を返せるには程遠いので離婚することもないだろう。
リースハルトの愚かぶりに一時は本当に追い出そうかと考えたけれど、なんとか当初の計画の許容範囲に納まった。
あとは、騙される話と誘惑にさえ引っかからなければ、子供たちが成長する頃には尊敬される父親……とまではいかなくても金で買われた侯爵家という世間のイメージも回復している。……はず。
結果的に愛が生まれようが仮面夫婦であろうが、政略結婚の行く末は自分の子供に健全な状態で爵位と領地を受け渡せるかどうかにかかっていると思うわ。
父が私を侯爵家に嫁がせた理由の一つは孫が立派な侯爵になることだもの。
仮面夫婦のような政略結婚に必要なのは、報われない愛よりお金よ。
子供が成長した後は離婚したとしても、お金さえあれば自由に楽しめばいいのだから。ね?
だから、その時のために自分用の資産も手抜かりなく貯めておくの。
あ、子供は味方につけておく必要もあるわね。
愛が生まれた政略結婚なら、夫婦で穏やかな老後を迎えられるかもしれないけれど。
まぁ、それも愛人がいなかった場合よね。
万が一、いたとしても気配すら感じさせないで終えるならいいわ。
でも、私のような妻側が多額の援助をした政略結婚では離婚する必要は元からないのよね。
私を追い出すと、侯爵家は恩知らずと社交界で爪弾きにされるわ。
それに、子供たちは可愛いし、リースハルトの愛人はいなくなったし、愚かなダメ夫にも長い間一緒に過ごすと、情って沸くものなのよね。
情が沸くと、愛人なんて絶対に許せなくなる。前みたいに無関心でいられなくなるのよね。
今思うと、愛人と一緒に住んでいただなんて気分が悪いもの。
情があれば、夫の共有はつらいわ。
それだけ情があるんだなって思えるようになってきた。……愛しているとは思いたくないけど。
侯爵としてはともかく、夫として父親としては今なら及第点をあげられるし。
愛人がいる夫との契約結婚の行く末は、妻(私)を選んで(選ばせて)愛妻家となり、さっさと息子に跡を継がせて(夫は用済みだから)、王都(誘惑)から離れて隠居生活(領地)で夫婦で仲良く過ごしました。
……仕方ないじゃない?見張ってないといけないんだから。
<終わり>
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