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しおりを挟むルチェリアは、もうすぐ学園に入学する。
そんな頃、またエドガー様が家に遊びに来た。
「やあ、ルチェリア嬢。あれからまた条件は考えたの?」
「ええ。ですが、意外と誰もが結婚相手に望むようなことばかりですね。」
「そうなの?参考までに聞かせてくれる?」
エドガー様の横にいるお兄様が頷いたので、また3人でサンルームでお茶をした。
『家族を大切にする(無関心や無視をしない)』
『愛人をつくらない(もちろん一晩の浮気も娼婦もダメ)』
『ギャンブルに嵌らない』
『お酒に溺れない(家以外では絶対)』
『理不尽な暴力を振るわない』
『仕事を真面目にする』
『喧嘩をしても謝れる(自分が悪かったと思えば謝罪の言葉を言う)』
『感謝の言葉を言う』
思いついた条件を書き出してみたら、エドガー様も何かに引っかかったようで考え込み、お兄様は拍子抜けした顔だった。
「……うん。女性が結婚相手の男に誰もが望むような条件だね。だけど……どうだろう?」
「こんなの当たり前のことばかりだな。ルチェ、自分で考えたのか?」
「ほとんどが小説を読んで、自分の結婚相手がこんな人だったら嫌だなって思ったことかな。
あ、もう一つあった。」
ルチェリアは、『勘違いするような優しさを他の女性に対してふりまかない』と書き足した。
「人間関係を円滑にするには笑顔や会話も大切だとは思いますが、毅然とした態度も必要です。
はっきりしない態度は勘違いを生みますから。
自分の婚約者や夫が女性を誘っただなんて勘違いされるのは嫌です。」
「そうだな。女性に限らず、男にも思い込みの激しい者はいるからな。」
「うん。その点、レンはクールだから勘違いされるも何もないか。
でも、お前はそんなんで婚約者になる令嬢を探せるのか?」
「僕は急いでないから。ルチェが決めてからでいい。」
「公爵令息だもんな。恋愛じゃなくても嫁ぎたい令嬢はいっぱいいるか。」
ルチェリアは、これらの条件を飲んでくれても破られた場合の条件を厳しくしたいと言った。
「慰謝料じゃないの?婚約破棄とか離婚はそうだよね。」
エドガー様の言葉に、レンフォードが答えた。
「ルチェは、慰謝料じゃ納得しないってことだな。確かに条件を飲んだ上での契約破棄は重い。
どんなことを考えてる?」
「例えば、子供がいるのに浮気した場合は、離婚して本人が出ていくとか。」
「子供に爵位を継がせて、元夫から爵位を奪うのか?子供が小さい場合は?」
「私が代理になればいいわ。元夫は肩書無しで雇ってもいいし。」
「他の文官と同じ扱いにするのか。屈辱だな。だが、いいかもしれない。
子供がいない場合や爵位をまだ継いでいない場合は?」
「その場合は、兄弟や親戚に爵位を譲ったらいいのよ。」
「要するに契約を破ればどの道、爵位を失うか継げないってことか。
そんな目にあいたくなければ契約を破らなければいいだけの話だな。
守る自信がないのなら、始めから契約結婚するべきじゃない。」
さすがお兄様。私が言いたいことをよくわかってくれるわ。
「契約条件の内容も破られた場合の内容も、相手と話し合った上で決めるんだよね?」
納得し合っている私たち兄妹を見て、エドガー様が聞いてきた。
「もちろんです。
相手が私に望む条件を守れるか考える必要もありますし、相手によって条件は変わるでしょうし。
ですが、お互いに契約を破る気がない上で厳しい破棄条件を考えるつもりです。」
驚いているエドガー様の表情を見て、やはりうちは他の貴族とは違うと感じた。
私たちは離婚することはあり得ない結婚のつもりだから、どんなに厳しい破棄条件でも受け入れられる。
だけど他の貴族は、契約を破る気がなくても破ってしまった時のために条件を軽くすることを考えるのだ。
逃げ道を確保して契約したい。
つまり、結婚に対する覚悟が違うのだ。
ルチェリアは、自分と同じように覚悟を持ってくれる令息がいない気がした。
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