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11.
しおりを挟む学園に通いだしてから半年ほど経った頃、私宛に手紙が届いた。
内容は……うん。どうでもいい。というか関係ない。
「ルチェリア、遠ざけるか?」
「ううん。別に今のままでいい。直接何か行動を起こすことはないと思うから。
もしも、他の友人たちに迷惑がかかるのも困るし。現状維持がいいと思う。」
「そうか。困るなら言ってくれ。すぐに対応する。」
「うん。ありがとう。」
この手紙から1年と半年、つまり、お兄様たちが卒業する間近までに届いた手紙は全部で23通。
同じ人からの手紙もあるので、人数的には8人。
そろそろ私の結婚相手を正式に決めて、残り1年の学園生活を楽しみたいと思っている。
お兄様の卒業式の2日前、エドガー様が家に来た。
今日は私に話があると連絡が来ていた。
私に話したいことがあるとしてもお兄様がいてもいいはず。
なので、サンルームでお兄様も同席してもらった。
「レンは遠慮してくれないの?」
「しないな。僕の前で話せない話はさせない。極力、口は挟まない。」
「……わかった。
ルチェリア嬢、僕と結婚することを前提に2人で契約条件を決めませんか?
前にルチェリア嬢が言っていた条件は全て受け入れるつもりだ。
でも、程度や理由などで離婚に至るまでに段階があってもいいと思う。
一度は許す。次は許さないとか。それを話し合わないか?」
「エドガー様、私との結婚を考えてくださり、ありがとうございます。
ですが、私はエドガー様との結婚は望んでおりません。
あなたは兄の友人。その位置のままでお願いします。」
「え……でも、ルチェリア嬢は学園に入ってからも、どの令息とも親しくなってないよね。
一番近くにいたのが僕だと思うんだけど。
だから、僕と君が婚約間近だと周りにはずっと思われていて、それを否定しなかったよね。」
「わざわざ否定して回るほどでもありません。聞かれたら否定しましたけど。
どちらかと言えばその噂で、あなたの愛人候補たちが誤解したことが困りましたけど。
あるいは、勘違いするようなことをエドガー様がおっしゃっていたのかしら?」
エドガー様は目を見開いて固まった。
「あ、愛人候補……って何の話かわからないんだけど?」
「あら。この1年半ほどの間に、8人の方から23通のお手紙をいただきました。
どの方も、エドガー様の正妻は私で文句はないけれど、自分を愛人として認めてほしいって。
中には、純潔をエドガー様に捧げたから愛人になれますよね?ってお手紙も。
まるで私が愛人として認めたら結婚後も関係が続けられるかのように感じました。
エドガー様、彼女たちにそうおっしゃいました?」
エドガー様の目が忙しなく動き回っている。
思い出そうとしているのか、否定する言葉を探しているのか、どちらでもどうでもいいけど。
「……確かに、その8人全員かはわからないけれど、関係を持った女性はいる。
だけど、それは遊びみたいなもので彼女たちも承知していた。
多分、僕が婚約後は関係を続けられないと言ったことを曲解したんじゃないかな。
君が関係を認めてくれれば、愛人になれるって。」
「そうでしょうか?曲解した女性が8人もいるのですが?
まぁ、どんな言い方で誤解させたのかは知りませんが、勘違いさせる男性はお断りです。
条件の1つにもありましたね。」
「あ、あれは、あの条件は婚約するときから有効になるはずだと思うけど?
僕は、君と婚約したら誰にでも優しくするつもりはないし浮気もするつもりはない。」
「ギリギリまで遊んでいたかったから、このタイミングでの求婚なのですよね?
卒業すると私との接点がなくなってしまうし、あと1年で他の誰かと親しくなるかもしれない。
でも、早めに求婚してしまうと遊べなくなるから。
まさか、婚約前に関係を持った女性は婚約後に浮気したわけじゃないから契約外と考えました?
認めるわけないじゃないですか。
それに、お手紙以外にも直接私に婚約者にならないようにお願いに来た令嬢もいました。
もちろん、私はエドガー様の婚約者になる気はないとお返事しましたよ。
その方はすごくホッとされていました。妊娠されたそうですよ。
今日、エドガー様のご両親に報告に行くと言っておられました。
おめでとうございます。」
「おめでとう、エドガー。結婚相手もその令嬢がいいんじゃないか?
子供を庶子にするのは可哀想だ。」
エドガー様は真っ青な顔で慌ただしくサンルームを出て行った。
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