29 / 42
29.
しおりを挟むロゼッタたちから聞いていた通り、一つ下の学年ではケイトリンが暴走しているらしい。
「ダニエル様はダイアナ様といたいのだから、私が邪魔なんだわ。お二人のために私はいつでも婚約を解消してあげるのに、父が反対しているの。」
ケイトリンは困ったように、そう話しているという。
ダイアナは、図書館でダニエルに言った。
「ストーンズ様、婚約者様が誤解なさっているようですが、わたくしにできることは何かございますか?」
「……いや、逆に巻き込んで申し訳ない。」
「もうこちらでお会いしない方がいいかもしれませんね。」
「それはそれで、やましいからだと思われそうだ。」
確かに。
何も悪いことをしていないのに。
「正直、僕は結婚相手にこだわりはなかった。彼女は僕が無口だから面白くないと思っているようだが、僕からしてみれば、彼女は延々とドレスやアクセサリーの話をしていて、僕に何と返して欲しいのかがわからない。いや、おそらく彼女は僕に買ってくれと言っているのだろうが、一度でも許すと彼女は僕の名前で買い物をして請求書だけ送られてくる気がするからできない。」
「そう、ですのね。」
確かにダニエルが答えにくい話題であるし、勝手に買い物をされて請求書だけ送りつけられそうだと思ってしまうような強請り方はダニエルを不快にさせていたに違いない。
「だが、結婚相手にこだわらないのは間違いだったと今は思っている。僕は彼女ともポッシュ伯爵とも長く付き合っていきたいとは思えないと気づいた。彼女だけでなく、伯爵も困ったら僕が何とかしてくれるだろうと思っている節があるんだ。」
「あの害虫のこととか?」
「そうだ。」
確かにあの時、なぜダニエルが調べているのかと不思議に思った。
専門家に依頼するなりして対処するはずのことだから。
ダニエル、もしくはストーンズ侯爵家が専門家を派遣してくれるのではないかと伯爵は期待したのだろう。まるでダニエルが伯爵家に婿入りするみたいに思えるが、ダニエルはストーンズ侯爵家の跡継ぎである。
「彼女の望み通り、婚約は解消しようと思っている。僕にはこうして話をしていて楽しく思える存在がいるということに気づけた。しかも幸いにして、現在は婚約者がいない。爵位は僕の方が一つ下だが、公爵令嬢に求婚することは許されるだろうと思っている。」
「…………え!?」
ひょっとして、私?
「先に邪魔なものを片付けるから、待っていてほしい。」
そう言って、驚いているダイアナを置いて先に図書館を出て行った。
「ダイアナ様、ストーンズ様にほぼ、求婚されていましたね。」
「……あれって、やはりそういうことですわよね?」
「ええ、間違いなく。待っていてほしいというのは他に求婚があっても即決しないようにというお願いですね。」
ダニエルは、ケイトリンとの婚約を解消して、ダイアナに求婚する気でいるらしい。
「……ダイアナ様、顔が真っ赤で可愛いですよ。」
ロゼッタにからかうように言われたが、ダイアナは恥ずかしくて返す言葉が見つけられなかった。
1,831
あなたにおすすめの小説
「役立たず」と婚約破棄されたけれど、私の価値に気づいたのは国中であなた一人だけでしたね?
ゆっこ
恋愛
「――リリアーヌ、お前との婚約は今日限りで破棄する」
王城の謁見の間。高い天井に声が響いた。
そう告げたのは、私の婚約者である第二王子アレクシス殿下だった。
周囲の貴族たちがくすくすと笑うのが聞こえる。彼らは、殿下の隣に寄り添う美しい茶髪の令嬢――伯爵令嬢ミリアが勝ち誇ったように微笑んでいるのを見て、もうすべてを察していた。
「理由は……何でしょうか?」
私は静かに問う。
追放した私が求婚されたことを知り、急に焦り始めた元旦那様のお話
睡蓮
恋愛
クアン侯爵とレイナは婚約関係にあったが、公爵は自身の妹であるソフィアの事ばかりを気にかけ、レイナの事を放置していた。ある日の事、しきりにソフィアとレイナの事を比べる侯爵はレイナに対し「婚約破棄」を告げてしまう。これから先、誰もお前の事など愛する者はいないと断言する侯爵だったものの、その後レイナがある人物と再婚を果たしたという知らせを耳にする。その相手の名を聞いて、侯爵はその心の中を大いに焦られるのであった…。
【完結】捨てた女が高嶺の花になっていた〜『ジュエリーな君と甘い恋』の真実〜
ジュレヌク
恋愛
スファレライトは、婚約者を捨てた。
自分と結婚させる為に産み落とされた彼女は、全てにおいて彼より優秀だったからだ。
しかし、その後、彼女が、隣国の王太子妃になったと聞き、正に『高嶺の花』となってしまったのだと知る。
しかし、この物語の真相は、もっと別のところにあった。
それを彼が知ることは、一生ないだろう。
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
「価値がない」と言われた私、隣国では国宝扱いです
ゆっこ
恋愛
「――リディア・フェンリル。お前との婚約は、今日をもって破棄する」
高らかに響いた声は、私の心を一瞬で凍らせた。
王城の大広間。煌びやかなシャンデリアの下で、私は静かに頭を垂れていた。
婚約者である王太子エドモンド殿下が、冷たい眼差しで私を見下ろしている。
「……理由を、お聞かせいただけますか」
「理由など、簡単なことだ。お前には“何の価値もない”からだ」
元ヒロインの娘は隣国の叔母に助けを求める
mios
恋愛
両親のせいで、冷遇されて育った男爵令嬢モニカ。母の侍女から、「物語ではこういう時、隣国の叔母を頼ったりしますよ」と言われて、付き合いの全くない隣国の叔母に手紙を書いたのだが。
頼んだ方と頼まれた方の認識のズレが不幸な出来事を生み出して行く。
婚約者に値踏みされ続けた文官、堪忍袋の緒が切れたのでお別れしました。私は、私を尊重してくれる人を大切にします!
ささい
恋愛
王城で文官として働くリディア・フィアモントは、冷たい婚約者に評価されず疲弊していた。三度目の「婚約解消してもいい」の言葉に、ついに決断する。自由を得た彼女は、日々の書類仕事に誇りを取り戻し、誰かに頼られることの喜びを実感する。王城の仕事を支えつつ、自分らしい生活と自立を歩み始める物語。
ざまあは後悔する系( ^^) _旦~~
小説家になろうにも投稿しております。
旦那様から出て行ってほしいと言われたのでその通りにしたら、今になって後悔の手紙が届きました
睡蓮
恋愛
ドレッド第一王子と婚約者の関係にあったサテラ。しかし彼女はある日、ドレッドが自分の家出を望んでいる事を知ってしまう。サテラはそれを叶える形で、静かに屋敷を去って家出をしてしまう…。ドレッドは最初こそその状況に喜ぶのだったが、サテラの事を可愛がっていた国王の逆鱗に触れるところとなり、急いでサテラを呼び戻すべく行動するのであったが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる