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しおりを挟む亡き兄がカトリーヌと初夜を迎えていなかったことも、父からカトリーヌの腹の子を兄の子とするように言われたことも、兄の侍従だったアッセムが兄から聞いたことである。
アッセムの証言だけでは、父に作り話だと言われてしまうだろう。
そのため、父が、マリアンナが我が子だと知っていた上でカーマイン伯爵家を乗っ取ろうとしていたという証拠がなく、罪に問うのは難しいようだ。
「デサントを罪に問えないのは悔しいが、娘と離婚して出て行けばそれでいい。どうせ、息子の嫁との不貞が好き勝手に噂されて王都では暮らせなくなるだろうから、あの男にはそれが罰になる。」
ケビンは祖父が嘲るように言ったその意味を考えた。
「まさか、父はまだカトリーヌの母親を思っているのですか?」
国の行事や夜会などで会えるのを、今でも楽しみにしているのか?
兄嫁だったカトリーヌを俺と結婚させたのも、親戚関係を維持し続けるため?
カトリーヌを手元に置いておけば、父は彼女の母親と話をする機会が増えるから。
「だからこそ、カトリーヌをお前たちと結婚させたんだろう。繋がりを求めただけかと思っていたが、まさか娘に手を出していたとはな。母親の身代わりってとこか?カトリーヌは知らないだろうが。」
もしそうなのだとしたら、カトリーヌはちょっと気の毒だな。
だが、彼女は俺を誘ってきたくらいだから、父に一途というわけでもなさそうだ。
「ちょっと待て。今のはケビンの父親の話だよな?息子の嫁を愛人にしているのに、本命は愛人の母親だったってことか?」
王太子殿下が混乱したように聞いてきた。
他人の前で話す内容でもなかったのだが、父の身勝手な横恋慕の結果が今に至るのだと話した。
「ケビンの離婚は問題ないだろうが、父親の方は一筋縄ではいかないんじゃないか?ケビンが伯爵になっても自分は父親だと言って、離婚せずに伯爵家に居残りそうだ。」
「息子の嫁に手を出していたのにですか?」
いや、父ならそうかもしれない。
カトリーヌの母親に、娘を愛人にしたことを罵られたいために母とは離婚しないだろう。
離婚してしまえば、父が伯爵夫人と会える場所はなくなるのだから。
「嫁はケビンと離婚していなくなるじゃないか。父親からすれば、不貞を謝罪して妻に許しを請えば離婚は免れると思っているだろう。そういう力関係だから、伯爵抜きでケビンを伯爵にする手続きに来たんだろう?」
王太子殿下は、父が好き勝手しているのは、伯爵である母が言いなりだからだと見抜いていた。
確かに母は、ケビンの父であり、マリアンナの父でもあるからと、あの男を許してしまいそうだ。
「本気で縁を切りたいのならば、手を貸そう。私に任せれば二度と顔を合わせることはなくなるよ。」
王太子殿下が第三者として間に入ってくれるらしい。
裁判ほど厳格ではないが、第三者と書記官がいれば、そこで決定したことを覆すことはできなくなる。
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