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しおりを挟む翌日、ユラは学園に行き、教室に入ると注目を浴びた。
「おはよう。…どうかしたの?」
「…ユラ様、噂が…」
「噂??」
学園で仲良くなった伯爵令嬢ミラージュがコソコソと教えてくれた。
「ユラ様が傷物になったという中傷文が張り出されていたそうよ。」
「…え?」
ユラは思わず固まった。どうして?
「先生たちが慌てて回収したけれど、見た生徒が多すぎて…」
「…誰かの恨みでも買ってしまったのかしら?ひどい嫌がらせね。」
そう言って眉をひそめるユラにミラージュはホッとしたようだ。
「そうよね。誰が犯人なのかしら。許されない嘘だわ。」
ユラとミラージュの様子から、事実ではないとクラスメイトたちは理解した。
昼休み、ユラはミラージュと数人の仲の良い令嬢たちとの昼食を終え教室に戻ると別グループの令嬢たちがユラの前にやってきた。
「ユラ様って王太子殿下の婚約者候補でこの国に来たって本当ですか?」
「…びっくりすることを言うわね?候補って…婚約者がいらっしゃるじゃない。」
「婚約者のシルビア様は療養なさっているから、変更になるのではないかと言われています。」
「そうなの?変更だなんて聞いたことないわ。
それに、王太子殿下とは従兄妹よ?二代続けて同じ国から嫁ぐなんてありえないわよ。」
それもそうか。そんな雰囲気になった。
「ねぇ、そんなこと誰に聞いたの?」
「顔は見ていませんが、多分、上級生の令嬢たちだと思います。
ユラ様は王太子殿下に嫁げないように傷物にされたのだろうって。…笑ってました。」
「私は留学中なのよ?何か問題が起これば、この国の失態になるでしょうに…呆れたわね。」
なるほど。私を狙ったのはそういうことか。
ということは、婚約者候補になりたい令嬢の仕業かしらね?
婚約者が本当に変更されるのかをライアン様に確認しないと。
王宮へ帰り、王太子殿下に会いたいと告げると、すぐにやってきた。
「ユラ、すまない。学園での騒ぎは耳にしている。
おそらく、犯人側が仕組んだことだろう。昨日ことが他に漏れるはずがない。」
「ライアン様、私が婚約者候補って言われてると聞いたのですが、ご存知でした?」
「…は?なんだその話は。」
「学園での中傷文で私がライアン様に嫁げないようになったと思われたようですよ?」
「昨日の事件はそれが狙いか?」
「事実でも無実でも噂って怖いですからね。信じる人もいるでしょう。
シルビア様と婚約解消なさるのですか?」
「…しない。何故か勝手にそう思われていて、原因を探っているところだ。」
「もし、新たに候補を選定するなら挙げられる令嬢はいるのですか?」
「目ぼしい高位貴族は婚約者がいる令嬢が多い。
しかし、両家と本人たちの同意があれば、候補になることは可能だ。」
「私が狙われたのは候補から降ろすためだと思うので、確実に候補になりたい令嬢がいます。
犯人が絞れるのでは?」
「そうだな。…実はシルビアも狙われたんだ。だから療養として身を隠している。」
「大丈夫だったんですか?」
「シルビアはな。だけど、侍女が代わりに毒を飲んだ。たいしたことはなく済んだが。
毒を入れた犯人には自害された。
ユラが狙われるのは想定していなかった。候補になんて思いつきもしなかったのにな。」
「二代続けて同じ国から嫁ぐなんてありえないってみんなの前で言っておきました。
こちら側ではありえなくても、貴族たちには誤解を与えたようですね。」
「本当にすまない。…国に帰るか?」
「…今、帰ると傷物の噂を肯定してるようで嫌です。」
「それもそうか。じゃあ、候補ではないと否定して回って構わないぞ。」
「ふふ。それはそれで噂になりそう。
そういえば、私が傷物になったと笑ってた令嬢たちがいたそうよ?怪しくありません?」
クラスメイトが聞いた話をすると調べると王太子は言った。
昼休みに座る場所というのは大体が決まった場所だ。
この話が聞こえた令嬢は言った令嬢にも心当たりはあるが、直接見たわけではないので誰だったのかを断定しなかったのだろう。
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