駆け落ちの事実などありません。

しゃーりん

文字の大きさ
17 / 40

17.

 
 
次の日、アリーシャは昨晩思ったことをイザークに告げた。

体を繋げることでロベルトではなくイザークの妻なのだと実感したいこと、愛されていると実感することでイザークを愛したいのだということを。


「ひどく自分勝手なことを言っていると思います。だけど、今あなたに抱いているこの感情だけで夫婦の営みを望むのは駄目なのでしょう?それならいつになるかわからなくて……
私は自分でも押しに弱いのはわかっていて、自分から向かっていくよりも、求められて安心したいって言うか、そういう狡さがあるのだと思います。」 
 

イザークは腕を組んで何か考えているようだった。


「アリーシャは、僕に多少なりとも好意があるってことでいい?」

「はい。それはもちろんです。」

「僕はアリーシャの意思で体を繋げたいと思ってほしいとは伝えたけれど、僕を愛してなければダメだと伝えた覚えはないよ?」

「え!?」
 

そう言われてみれば、そうかもしれない。


「どんな思いからでもアリーシャが僕に抱かれたいと思ってくれるのなら嬉しいよ。ロベルトのことを忘れたくて利用したいと言うなら喜んで相手をしたいくらいだ。」

「嫌じゃないんですか?初めてじゃないこと。本当に。」

「僕だって初めてじゃない。男はよくて女はダメだというのはおかしいだろう?もちろん、嫁いで来る際に身籠っているかどうかの確認と、結婚後に浮気をして子供が誰の子かわからないなんてことになるのは困るだろうけど。その辺りがはっきりしていれば、純潔が必須なんてどうでもいいんじゃないかな。」

 
なるほど?
イザークの考えはアリーシャの心を軽くしてくれた。

 
「僕が重要視したいのは、アリーシャが僕に抱かれたいと思ってくれたことだ。君の言う通り、体を繋げることで思いは深まるというのはよく聞く話だ。その思いの有無によって、時には単なる性欲発散をするだけの行為になってしまうしね。僕は君と愛を深める繋がりにしたいと思っているよ。」

 
イザークの言葉に、アリーシャは赤面してしまった。

好意はあると答えたのだから、イザークに抱かれるということは愛を深めていくということになる。


「今晩、アリーシャの部屋に行くよ。」


イザークはそう言って、アリーシャの額にキスをしてから仕事に向かった。


額に手を当ててアリーシャは心の中で一人、はしゃいでいた。 



 
そしてその夜、アリーシャはイザークと結ばれた。

彼の愛し方は息も絶え絶えになるほどで、相手によってこんなにも違うものなのかとアリーシャは驚いた。

イザークの重い愛を感じ、それが嬉しいと思ってしまった。


「寝室を一緒にしよう。実はもう用意してあるけどね。」
 
 
いつか夫婦として使える日を願って、準備はしてあるのだという。

イザークはアリーシャが求めてくれる時まで、ずっと待つつもりだったのだ。
その深い愛が嬉しく、アリーシャは自分からイザークにキスをした。
 

やがて、アリーシャは妊娠したことがわかった。

 

あなたにおすすめの小説

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

その結婚は、白紙にしましょう

香月まと
恋愛
リュミエール王国が姫、ミレナシア。 彼女はずっとずっと、王国騎士団の若き団長、カインのことを想っていた。 念願叶って結婚の話が決定した、その夕方のこと。 浮かれる姫を前にして、カインの口から出た言葉は「白い結婚にとさせて頂きたい」 身分とか立場とか何とか話しているが、姫は急速にその声が遠くなっていくのを感じる。 けれど、他でもない憧れの人からの嘆願だ。姫はにっこりと笑った。 「分かりました。その提案を、受け入れ──」 全然受け入れられませんけど!? 形だけの結婚を了承しつつも、心で号泣してる姫。 武骨で不器用な王国騎士団長。 二人を中心に巻き起こった、割と短い期間のお話。

君に愛は囁けない

しーしび
恋愛
姉が亡くなり、かつて姉の婚約者だったジルベールと婚約したセシル。 彼は社交界で引く手数多の美しい青年で、令嬢たちはこぞって彼に夢中。 愛らしいと噂の公爵令嬢だって彼への好意を隠そうとはしない。 けれど、彼はセシルに愛を囁く事はない。 セシルも彼に愛を囁けない。 だから、セシルは決めた。 ***** ※ゆるゆる設定 ※誤字脱字を何故か見つけられない病なので、ご容赦ください。努力はします。 ※日本語の勘違いもよくあります。方言もよく分かっていない田舎っぺです。

そう言うと思ってた

mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。 ※いつものように視点がバラバラします。

殿下の御心のままに。

cyaru
恋愛
王太子アルフレッドは呟くようにアンカソン公爵家の令嬢ツェツィーリアに告げた。 アルフレッドの側近カレドウス(宰相子息)が婚姻の礼を目前に令嬢側から婚約破棄されてしまった。 「運命の出会い」をしたという平民女性に傾倒した挙句、子を成したという。 激怒した宰相はカレドウスを廃嫡。だがカレドウスは「幸せだ」と言った。 身分を棄てることも厭わないと思えるほどの激情はアルフレッドは経験した事がなかった。 その日からアルフレッドは思う事があったのだと告げた。 「恋をしてみたい。運命の出会いと言うのは生涯に一度あるかないかと聞く。だから――」 ツェツィーリアは一瞬、貴族の仮面が取れた。しかし直ぐに微笑んだ。 ※後半は騎士がデレますがイラっとする展開もあります。 ※シリアスな話っぽいですが気のせいです。 ※エグくてゲロいざまぁはないと思いますが作者判断ですのでご留意ください  (基本血は出ないと思いますが鼻血は出るかも知れません) ※作者の勝手な設定の為こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※作者都合のご都合主義、創作の話です。至って真面目に書いています。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛

Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。 全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)

【完結】君の世界に僕はいない…

春野オカリナ
恋愛
 アウトゥーラは、「永遠の楽園」と呼ばれる修道院で、ある薬を飲んだ。  それを飲むと心の苦しみから解き放たれると言われる秘薬──。  薬の名は……。  『忘却の滴』  一週間後、目覚めたアウトゥーラにはある変化が現れた。  それは、自分を苦しめた人物の存在を全て消し去っていたのだ。  父親、継母、異母妹そして婚約者の存在さえも……。  彼女の目には彼らが映らない。声も聞こえない。存在さえもきれいさっぱりと忘れられていた。