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しおりを挟むこの国では、王族は正妃以外に側妃2人が認められている。
同じように、各辺境伯にも正妻と夫人2人が認められている。
辺境伯家にだけ認められているのは、魔力のある貴族の子供がたくさん必要だったため。
魔獣との戦いで命を落とすことがよくあったために、生存率を少しでも高くするために王族と同じく妻が3人と認められた。
だが、これは大昔のこと。
昔、そう定められた頃は、国王と王太子のみに認められたことであった。
だが、ある王太子に子供ができず、第二王子にその役割が回ってきた。
すると第三王子も側妃を求める。
そうして、いつしか王太子だけでなく他の王子にも側妃が当たり前になってしまった。
貴族でいう愛人が側妃みたいなものとなった。
王族がそうなってしまったために、それは辺境伯家にも適用されると勘違いされた。
妻が3人いると、産まれる男の子の数も増える。
そしてそのそれぞれが妻を3人娶るとまた男の子が増える。
辺境伯となれる者は一人だけだが、兄弟や子供があちこちで魔獣と戦っている。
だが、魔獣の特性などが研究されてきて、死亡率が低くなった。
魔力がなくても戦える騎士も増えた。
なので、妻3人はもう必要ないのだ。
それなのに、なぜ未だに第三夫人までいるのか。
それは、適齢期を逃した未婚の貴族令嬢が辺境に送られてくるからだ。
何らかの魔力を持っていれば、産まれる子供も魔力持ち。
どちらかが魔力なしでは、子供に魔力がないこともある。
昔と違って魔力なしの貴族は増えている。
だが、魔力があれば辺境で役に立つと男も女も送り込まれてくるのだ。
男は騎士として。女は子供を産むために。
実家に帰る場所がない令嬢には仕事を与えるが、直系の誰かが気に入れば夫人にすることもある。
騎士たちの中にも実家で爵位を継げなかった者が辺境に来た令嬢と結婚することもある。
要するに、伯父の息子たちの妻になるということは正妻と愛人が共に暮らすようなものだ。
絶対にそんなのは嫌。
「養うのも大変でしょうに。多妻は廃止したらどうです?」
「そうなんだよなぁ。だから息子たちには2人までにするように言ってるんだ。
その子供たちからは妻を1人にするようにするつもりだ。
ほかの貴族と同じにな。まぁ、愛人って形で残るかもしれないが。」
「……先ほど第三夫人を私に勧めませんでしたっけ?」
「あはははは。プリムなら大歓迎だと思って?」
「例外を作れば、全員がまた3人に戻りますよ。」
「……だな。やめておこう。」
「夫人にするから避妊薬を飲まないで子供が増えるんです。
性欲の発散のお相手だと割り切って避妊薬を飲めばいいんですよ。
他の多くの騎士たちは娼館に行っているんでしょう?
妻たちはそっちの方が気が楽だと思いますよ。」
「……そんなもんか?」
「そうです。だって、通常1人のはずの妻が2人あるいは3人いて、それぞれが子供を産む。
子供を産むって妻の特権みたいなものです。
だから、他の貴族夫人も愛人に子供が出来たり庶子を引き取ったりすることが嫌なんです。
自分の子供と愛人が産んだ子供の出来を比べられたりするのは嫌だと思いますよ。」
「俺の妻たちは仲良く見えるけど?」
「伯母様たちも昔は複雑に思っていたはずですよ。
まぁ、人それぞれですから平気な方もおられるでしょうけど。
娼婦になって不特定多数に抱かれるくらいなら多妻でも自分の相手は一人で子供も産めるし。」
「きっついこと言うなぁ。」
「だって、自分の夫は一人なのに夫の妻は自分だけじゃない。
私は絶対に嫌だわ。
自分以外に夫の子供を産んだ人がいるなんて許せない。
それなら愛人や娼婦相手に性欲を発散してくれた方がまだマシ。
まぁ、私は他の妻も愛人も娼婦も許せないような心の狭い女ですけどね。」
「……王都育ちの貴族令嬢のほとんどはそうだろうな。」
辺境に捨てられる令嬢や平民たちは、生きるために手段を選んでいられなくなる。
多妻でも愛人でも娼婦でも。
求めてくれる人がいるから、そうして生きることに納得する。
事実、ここの娼館で働く娼婦たちは売られたり借金があったりする女性はほとんどいない。
仕事として割り切って働いているだけなのだ。
辞めようと思えば、いつでも辞められる。
だけど、私はその生き方を選ぶ気はない。
半分、貴族令嬢として終わったようなものだけど、治癒魔力を活かして働きにきたのだから。
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