9 / 19
9.
しおりを挟む辺境で暮らすようになって、約1年が経とうとする頃、強い魔獣の群れが比較的領地の街近くにまでやってきたらしく、プリムが知る限りで一番被害が大きかった。
向かってきた魔獣は騎士たちが必死で仕留め、それでも全てを倒しきることは出来ず、森の奥へと逃げていった魔獣を後追いする余力もなかった。
プリムは他の治癒師と共に、治療院で待つのではなく現場近くまで行って多くの騎士たちを治療した。
そして、今、プリムの目の前にいる男性も、治療を受けた一人だと言う。
プリムとしては流れ作業的に治療していったので、正直、この男性のことは全く覚えていなかった。
今日までにも何人もにお礼を言われたけれど、その人たちも同様に記憶にない。
だけど、元気に動けるようになってよかったな、とそう思いながらこちらも討伐のお礼を言っていた。
この男性は伯父様たちを通してまでわざわざ私にお礼を言いたかったのか、少し不思議だったけど、同じように返事を返した。
だが、この人はお礼だけではなかったらしい。
「ルシード・ピルチ、子爵家の次男です。
治療してもらった時に一目惚れしました。結婚を前提にお付き合いをお願いします。」
「………はい?」
どういうことだ?と伯父たちを見た。
「あー。ルシードにはちゃんと説明した。
プリムが愛人や娼婦を認めることはない、辺境騎士と結婚する気はない、と。
だがあまりにも必死なんで、一週間考えさせたんだ。本当にプリムを裏切らないかって。
この男は、その間に懇意にしていた女性にももう会わないと告げたらしい。
そこまでしたんなら、一応お前に告白する権利をやってもいいだろう?
後はお前が決めることだしな。
騎士としての腕は悪くないし、男前だし、プリムと似合いそうだと思うんだが、どうだ?」
どうだ?って……懇意にしていた女性って、娼婦じゃなくて定期的に体の関係があった女性がいたってことでしょ?
それって恋人じゃないの?体だけの関係だったら恋人じゃない?愛人?
でも愛人って生活全般を面倒見るようなイメージがあるんだけど、それって未婚なら結婚したらいいだけだよね。
金銭のやり取りがないから愛人でもないってこと?
娼婦にはお金を払うし、固定の女性でなくてもいいのよね?
つまり、金銭関係なく性欲を発散するのに付き合ってくれる女性がいたってことかな?
まぁ、ここだと娼婦じゃなくても何人もの男性経験がある女性は多そうだもんね。
「その懇意にしていた女性とは円満にお別れできたのですか?
好意があった、もしくは好意を持たれていたということはなく?」
「ええ。令嬢にこんなことは言い辛いですが、お互いに発散が目的でしたので。」
「ですが、私は結婚してからでないと関係を持つつもりはありません。
もしお付き合いしたとしても、その間は発散もできませんよ?」
「わかっています。
ですが、あなたのことをもっと知りたいと思うようになってから、戸惑いがあって。
好きになった女性との行為が幸せを感じるのではないかと思ったら他の女性にソノ気がなくなって。
どうか、お付き合いしてくれませんか。裏切るようなことは絶対にしません。」
ルシード様の本気を感じた。
彼を信じてみたい。そう思った。
頭の片隅では、本当に裏切らないと信じられるのか?辺境騎士なのに?と疑う声がある。
だけど、それは誰にでも言える。まぁ、普通の男よりも辺境騎士は裏切る可能性が高い気もするけど。
結婚を諦めて、仕事に生きようと思い辺境にやってきた。
それでもやはり女としての幸せを望みたい思いもずっと持っていた。
こんな考えの私が、辺境で幸せを掴めるかも?
ここに来て1年、こんな始まりもいいかと思い、受けてみることにした。
393
あなたにおすすめの小説
妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。
雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」
妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。
今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。
私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。
三度裏切られたので堪忍袋の緒が切れました
蒼黒せい
恋愛
ユーニスはブチ切れていた。外で婚外子ばかり作る夫に呆れ、怒り、もうその顔も見たくないと離縁状を突き付ける。泣いてすがる夫に三行半を付け、晴れて自由の身となったユーニスは、酒場で思いっきり羽目を外した。そこに、婚約解消をして落ちこむ紫の瞳の男が。ユーニスは、その辛気臭い男に絡み、酔っぱらい、勢いのままその男と宿で一晩を明かしてしまった。
互いにそれを無かったことにして宿を出るが、ユーニスはその見知らぬ男の子どもを宿してしまう…
※なろう・カクヨムにて同名アカウントで投稿しています
【完結】我儘で何でも欲しがる元病弱な妹の末路。私は王太子殿下と幸せに過ごしていますのでどうぞご勝手に。
白井ライス
恋愛
シャーリー・レインズ子爵令嬢には、1つ下の妹ラウラが居た。
ブラウンの髪と目をしている地味なシャーリーに比べてラウラは金髪に青い目という美しい見た目をしていた。
ラウラは幼少期身体が弱く両親はいつもラウラを優先していた。
それは大人になった今でも変わらなかった。
そのせいかラウラはとんでもなく我儘な女に成長してしまう。
そして、ラウラはとうとうシャーリーの婚約者ジェイク・カールソン子爵令息にまで手を出してしまう。
彼の子を宿してーー
妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。
夢草 蝶
恋愛
シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。
どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。
すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──
本編とおまけの二話構成の予定です。
【完結】妹ばかり愛され追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます
コトミ
恋愛
セラフィナは、実の親と、妹によって、家から追い出されることとなった。セラフィナがまだ幼い頃、両親は病弱なカタリナのため設備環境が良い王都に移り住んだ。姉のセラフィナは元々両親とともに住んでいた田舎に使用人のマーサの二人きりで暮らすこととなった。お金のない子爵家な上にカタリナのためお金を稼がなくてはならないため、子供二人を王都で暮らすには無理があるとセラフィナだけ残されたのだ。そしてセラフィナが19歳の時、3人が家へ戻ってきた。その理由はカタリナの婚約が上手くいかず王宮にいずらくなったためだ。やっと家族で暮らせると心待ちにしていたセラフィナは帰宅した父に思いがけないことを告げられる。
「お前はジェラール・モンフォール伯爵と結婚することになった。すぐに荷物をまとめるんだ。一週間後には結婚式だ」
困惑するセラフィナに対して、冷酷にも時間は進み続け、結婚生活が始まる。
妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる
ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。
でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。
しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。
「すまん、別れてくれ」
「私の方が好きなんですって? お姉さま」
「お前はもういらない」
様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。
それは終わりであり始まりだった。
路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。
「なんだ? この可愛い……女性は?」
私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
【完】ある日、俺様公爵令息からの婚約破棄を受け入れたら、私にだけ冷たかった皇太子殿下が激甘に!? 今更復縁要請&好きだと言ってももう遅い!
黒塔真実
恋愛
【2月18日(夕方から)〜なろうに転載する間(「なろう版」一部違い有り)5話以降をいったん公開中止にします。転載完了後、また再公開いたします】伯爵令嬢エリスは憂鬱な日々を過ごしていた。いつも「婚約破棄」を盾に自分の言うことを聞かせようとする婚約者の俺様公爵令息。その親友のなぜか彼女にだけ異様に冷たい態度の皇太子殿下。二人の男性の存在に悩まされていたのだ。
そうして帝立学院で最終学年を迎え、卒業&結婚を意識してきた秋のある日。エリスはとうとう我慢の限界を迎え、婚約者に反抗。勢いで婚約破棄を受け入れてしまう。すると、皇太子殿下が言葉だけでは駄目だと正式な手続きを進めだす。そして無事に婚約破棄が成立したあと、急に手の平返ししてエリスに接近してきて……。※完結後に感想欄を解放しました。※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる