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しおりを挟むルシードはプリムよりも5歳年上だった。
学園卒業後、実家の子爵家に戻ったけど、兄に男の子が2人産まれたので自由にしていいと言われ、騎士として辺境で暮らすことにした。
ルシードは魔力があるので平民騎士よりも役立てるからだ。
結婚にも縛られず自由に過ごしていたが、治療してくれたプリムの魔力が心地よく治療が終わった時の笑顔に惚れてしまったという。
忙しそうに仕事をしているプリムに声をかけることはできなかったが、プリムという名前と治癒師ということから素性を知り、直属の上司からまずは辺境伯の息子に声をかけてもらい、それから辺境伯にという順でお願いしたという。
プリムが愛人も娼婦も受け入れないというのは、自分も辺境に来る前まではそれが常識だと思っていたので戸惑いはないと言った。
お互いに爵位を継ぐわけではないので、堅苦しくなくお互いを知っていけたら、と言ってくれた。
ルシードは明るくて話題が豊富、それでいて大人な感じの人だった。
そして貴族令息らしくマナーもちゃんとしているし、荒々しさも感じなかった。
プリムは会うたびに好感を持った。
付き合い始めてひと月後、初めて唇にキスをされた。
嫌ではなかった。
そしてそれから3か月経った今では、会うたびにキスをしている。
ルシードは辺境に来てからは、ずっと娼婦や体の付き合いのある女性相手に性欲を発散させていたはず。
なのに、プリムが結婚までは体を許す気はないと言ったことを守って、キス以上のことを決して求めてくることはしなかった。
そんなところも、ちゃんとプリムを大事にしてくれているのだと嬉しく思った。
そんなルシードは、近々プリムにプロポーズするのではないか。
プリムはそんな気がしていた。
結婚すればプリムを抱ける。それはそうだろう。だから早く結婚したい。
そういう思いも確かにあると思う。
だけど、体だけを望まれているわけではないと信じている。
付き合い始めて4か月が経っているので、そろそろ婚約して結婚となるのではないか。
ルシードは気軽な付き合いではなく結婚を前提としての付き合いを最初に望んだ。
2人の未来を考えてくれているはずだから、プリムも考え始めていた。
ルシードは私のために他の女性も相手にしていない。
少し早く結婚してもいいのではないか。
今更、貴族の令嬢として将来爵位を継ぐ令息との出会いがあるはずもない。
ここで、平民みたいな生活をして、ルシードと幸せに暮らしていけばいいのではないか。
プリムはチェリムが跡継ぎになれば、実家の籍から抜いてもいいと思っていた。
あと半年。
貴族として結婚するか、平民となって結婚するか、ルシードにプロポーズされる前に誰かに相談したかった。
プリムが相談相手に選んだのは、従兄の奥様たちの中でも頼れる次男の正妻ソラーナだった。
ソラーナお勧めの甘味のある喫茶店でお茶をしながら話すことにした。
屋敷では目ざとい奥様方が群がってくるから、落ち着いて話すことができないのだ。
プリムがルシードとの将来を、どのような形にするのがいいか悩みを相談した。
「うーん。籍はわざわざ抜かなくてもいいんじゃない?
一応、あなたたち2人は貴族扱いにはなる。だけど、子供はそうはならない。そうよね?
それは私の子供たちも同じよ。
辺境伯を継ぐのは義兄の子供の誰か。おそらく長男か次男よね。
それ以外の子供は、他家に嫁ぐか婿入りしたら辺境から離れる。あなたのお母様のようにね。
だから、爵位が継げなくてもここに残る子供はみんな同じよ。
魔力があれば、ここを守る騎士になったり、あなたのように治癒師になったり。
だけど、息子は結婚する気はないって言ってるわ。まだ13歳なのにそう言うの。
誘惑の多い街で結婚して子供を育てる意味がわからないってね。」
それはそうかもしれない。妻がいても浮気が許されるなら、妻がいなければもっと自由だ。
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