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しおりを挟むチェリムが学園から帰宅し、談話室で親子4人だけで話をすることになった。
「まず、チェリムは卒業はできそうだ。だが、跡継ぎ資格のラインには及ばない。」
「……まだ半年ありますが、チェリムに頑張る気はない、と?」
「お姉様、あのね、私、婚約したい人がいるの!」
チェリムからの手紙には、恋人がどうとかプロポーズがどうとか書いてあったけど意味不明だった。
「……それは婚約者候補のコリン・レモールではなく?」
「ええ。同級生の子爵令息なんだけど……ほら、お父様が一度お見合い話を持ってきた人。」
「……チビでデブでニキビ顔が嫌でクラレンスを選んだ時の?」
その男が嫌だから、あなたはクラレンスに逃げたんじゃなかった?
「そうそう。彼がね、私のために見た目を努力するって頑張ってくれたの。
暴飲暴食をやめたら、少し背が伸びて、痩せて、ニキビが無くなって。
可愛い感じになったの。クラレンス様やコリン様よりも、私のタイプなの。
それでね、この1年くらい付き合ってるんだけど、正式にプロポーズされたの。
卒業後に嫁いでほしいって。向こうのご両親も嫁いでくれるなら賛成だって。」
私が家を出たこの1年半のうち、1年も付き合ってたのね。
始めの半年のうちの数か月は子爵令息がチェリムの好みになるように努力していた期間かしら。
本当にこの子には振り回されるわ。
「……つまり、あなたはその子爵令息と付き合いだしたから勉強にも身が入らなかったのかしら?」
「だって。コリン様に教えてもらっても、全然わからないんだもの。
いっつも冷たい目で見て、呆れたように溜め息ついて。」
教え甲斐がなければ、コリンでなくとも溜め息をつきたくなる。
コリンはどういうつもりでこの1年と少しの間、チェリムの婚約者候補として伯爵家に通っていたのかしら。
父に縋られて候補になったはずなのに、肝心の相手にはすぐに付き合う恋人ができていた。
それでも毎週のように勉強を教えて、伯爵家の仕事も学んでいた?
意味不明だ。父も、チェリムも、コリンも。
「お父様、どうしてコリンはチェリムの婚約者候補のままここに通っていたのですか?」
「あー。実は、チェリムに恋人がいるとは私たちもしばらく知らなかったんだ。
4か月ほど前に知ったんだが、言い出しにくくて。
それに別れるかもしれないだろう?だから彼を手放せなかったんだ。」
うわー。自分の都合だけで、コリンをいいように扱ったってことね。
「コリンにはいつ言ったのですか?」
「チェリムが恋人にプロポーズされたとわかってからだな。
ひと月半ほど前だ。
彼はチェリムに祝福の言葉をくれた。だが……条件があると言ってね。」
条件ね。それがあのコリンからの手紙だけに書かれていたことなのね。
『1年以上も候補として縛られた。責任を取ってプリムの婚約者にしてもらう。』
父は、彼の手紙にあった言葉通りのことを言った。
「チェリムは跡継ぎになれないし、ならない。
だから、プリム。お前に頼みたいんだ。
跡継ぎをチェリムでもいいかと気軽に考え、プリムに仕事だけ押し付けようとしたことは悪かった。
お前が仕事をしてくれていたら、跡継ぎが誰でも問題ないなんて愚かな考えだった。
遠い親戚なんかに領地を任せたくない。お前に継いでほしいんだ。
……そして、できればコリン君と結婚してほしい。」
チェリムは自分の幸せを選び、跡継ぎから逃げた。
お父様はもう私に縋るしかない。
コリンは……嫌がらせ?いや、でも本当に嫌なら候補なんだから逃げられたはず。
グレイブ伯爵家の仕事に興味があった?
まさかチェリムに気があった?……外見じゃなくておバカな子が可愛いと思う人もいるし?
良くわからないから、コリンには直接聞くしかない。
「分かりました。私が継ぎます。結婚については直接コリンと話し合います。
ただし、私も条件をつけさせてもらいますね。全て許したわけではありませんので。」
そうよ。私は心の狭い女なの。愛人や娼婦が許せないだけじゃない。
はい元通り。とあなたたちと以前の関係に戻れると思ったら大間違いなんだから。
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