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しおりを挟むルシードはその日の朝に既に退団扱いされており、寮の荷物もまとめられていた。
そして、『辺境伯を謀った罪』として、浮気相手と共に追放された。
しっかりと2人に婚姻届に記入させて、辺境伯の名の下に離婚が不可とされた。
正式に罪人になったわけではない。ただ、辺境への立入禁止とプリムへの接触禁止になっただけだ。
離婚は不可だが、一生側にいなければならないとは言っていない。
……気づいていないようだったが。
それに、他領で働くことにも何の圧力もかからない。
辺境伯の私的な罰だし、プリムも辺境伯も騎士としての仕事を奪う気はなかったからである。
ただ、正式に雇われるとなると、未婚か既婚かは偽りなく報告しなければならない。
家族手当や任務中の怪我や事故、亡くなった時に知らせる必要があるからだ。
虚偽報告は解雇の事由にもなる。
妻となった女と行動を共にするかどうかで、収入に直結するというわけである。
プリムは今後の自分の身の振り方を悩んでいた。
とにかく、あと半年でチェリムが卒業して跡継ぎの資格を得るまではハッキリと決められない。
実家に縁談話が来ていれば、それも一つの候補に入れてもいいかもしれない。
あるいは、伯爵家から籍を抜いてしまえば、身軽になるかもしれない。
グレイブ領で平民の治癒師として働くのがいいかもしれない。
領地で癒されたい。
どれも決められそうで決められない。毎日のように気持ちが揺れていた。
しかし、そんな気持ちが吹き飛ぶような手紙が届いた。
実家の父とチェリム、そしてチェリムの婚約者候補のコリン・レモールの3通だった。
3通共、纏めると言っていることは大体同じだった。
『チェリムは跡継ぎになれないから戻ってこい』
……一体、チェリムは何をしでかしたのだろうか。
幸いにも?辺境にいる気分ではなくなっていたので、一先ず王都の実家に帰ることにした。
「一年半の間、お世話になりました。」
「ああ。寂しくなるよ。
私ももうすぐ爵位を息子に譲る。時間が出来るから王都にも遊びに行くよ。
頼りない妹の顔もしばらく見ていないしね。」
頼りない妹というのはプリムの母親のことだろう。
プリムを跡継ぎから外したことに対して、情けない母親になったものだと貶していたから。
伯父様と母は年が離れているので、我が子みたいな感じなのかもしれない。
まぁ、チェリムがおバカなのは少しは母親の甘い教育のせいでもあるかもしれないけど。
伯父様の家族や仕事場、屋敷内でお世話になった人たちに別れを告げた。
いつかまた遊びに来ることはあっても、もう住みたいとは思わない。
ありがたく護衛騎士をつけてもらいながら、王都へと戻ることになった。
王都に戻った私を出迎えたのは、すごく下手に出た両親だった。
「おかえり、プリム。お前がいなくて寂しかったよ。疲れただろう?ゆっくり休むといい。
チェリムが学園から帰ったら、話をしよう。いいかな?」
「はい。わかりました。一先ず休ませてもらいます。モネはまだいますか?」
モネはここにいた時に私に付いていた侍女だ。
「ああ。チェリムにつけていた。またお前の侍女に戻すよ。」
「……チェリムは怒りませんか?」
「大丈夫だ。あの子の躾にも協力してもらっていた。チェリムは嫌がってたがな。」
「ではモネを部屋に呼んでください。」
モネは有能な侍女だった。チェリムが相手なら口うるさくなることもあっただろう。
もっと早くにモネをチェリムのそばに置けば、チェリムはあんなおバカにならなかったかもしれない。
そう思ったけれど、頭の悪さは侍女ではどうしようもないし、クラレンスとも告白を受けただけで付き合っていたわけではないので、モネの出番もなかっただろう。
私でさえ、チェリムの頭が悪くとも顔とマナーが良ければ誰かに嫁げると安易に考えていた。
ひねくれた性格でもなかったし、結婚して夫と仲良く暮らしていけるだろう、と。
いや、今でも思っている。
跡継ぎという立場でなければ、チェリムは可愛がられる嫁になるはずなのだ。
……頭の悪ささえ気にしなければ。
いや、マナーさえできていればそんなに頭はいらない!下位貴族の嫁ならば……
なるほど。父は一応考えてチェリムの縁談を選んだのかもしれない。
チェリムが嫌がった縁談相手は、子爵令息だったのだから。
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