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しおりを挟むプロポーズを断られたルシードは困惑してプリムを見た後、目をキョロキョロさせていたが、やがて部屋の空気感が悪いことに気づいたのか立ち上がって恐る恐る辺境伯を見た。
「ルシード。お前を見損なった。私がなぜそういうのか心当たりはあるだろう?」
「心……当たり……は、……」
プリムの冷めた視線を感じて、プロポーズを断られた意味にようやく思い至った。
真っ青になって土下座をして謝り始めた。
「申し訳ございません。申し訳ございません。」
「……何に謝っている。」
「……プリム嬢を裏切ってしまいました。」
「いつから?」
「……ひと月ほど前から。」
まぁ嘘つきだこと。と呟いたソラーナの声は意外と響いた。
辺境伯の怒りを増幅させるような合いの手に、プリムは内心拍手を送った。
「いつからだっ!」
「……付き合い始めて2週間ほどしてからです。」
「お前は息を吐くように嘘をつくのだな。それも知らなかったよ。」
「申し訳ございません!」
「その女は一度別れた女だそうだな。
プリムと結婚してプリムが妊娠したら、その間にやはり女が必要だと愛人を認めさせる気だった。
それまでずっとその女との関係を隠し続ける気だった。そうだな?」
「……はい。」
「プリムと結婚すれば出世するかもしれない。愛人が子供を産んでも養育費を払える。
そういうつもりだったのか?」
「いえっ!子供を産ませる気はありませんでした。子供はプリムとだけのつもりで。
ただ、慣れた彼女とは本当に発散するだけのつもりで……」
「子供は女の独断か。だが、裏切りは裏切りだ。その女と共に辺境伯領から出て行け。
あぁ、その女と結婚の手続きをしてからな。離婚は認めない。」
「そ、それは……」
「あら、いいじゃない。
元々その彼女はあなたの子供をわざと妊娠して結婚を迫る気だったそうよ。
そのために他の男を切って、新しい部屋にあなただけを招いていた。
プリムに一目惚れしなかったら、いずれそうなってたんだし。
今なら問題なくあなただけの女よ。
慣れ親しんだ新妻と楽しい旅路をどうぞ?行く先々で娼婦を買わなくてもタダだわ。」
ソラーナの言葉にルシードは絶望したような顔になった。
「信用できないお前を仲間にしておくことはできない。
裏切りや油断は、戦闘において大怪我の元だからな。
私の顔に泥を塗っておいてこの程度で済むのだから、一刻も早く出て行け!」
「も、申し訳ございませんでした。」
ルシードはプリムに向き合って縋るように謝った。
「裏切って申し訳なかった。でも、君への気持ちは本物だった。信じてほしい。」
「私はすっかり冷めました。
最初に言いましたよね。私は心の狭い女なのです。
自分の婚約者や夫を他の女性と共有したくないのです。
あなたを信じていたのに。裏切ったのなら、その時点で言ってほしかった。
もうあなたには嫌悪感しかありません。さようなら。」
肩を落としながら出ていくルシードを見ても、悲しいとも何とも思わない。
これ以上、顔を見ると殴りたくなるほど怒っていると言ってもいい。
誰に?ルシードに。そして、ルシードを信じた自分に。
私はやはり、ここにいては結婚できないだろう。
もう、辺境にいる男を信じることはできない。
このまま辺境にいるのであれば、独身のままとなるだろう。
結婚したいのであれば、ここを離れて別の土地で暮らすことになる。
仕事に生きるつもりで辺境に来たけど、やっぱり結婚に未練があったせいよね。
辺境騎士と付き合うなんて、やっぱり裏切られる覚悟が必要だったんだと思う。
あぁ、やっぱり実家のグレイブ領に行こうかな。
仕事は充実していたけれど、ここにいては心が癒されない。
それに、一度だけでなく二度も男に裏切られたのに、私は子供が欲しいのよね。
未婚で妊娠するには、貴族令嬢としての矜持を捨てることはできない。
だけど、また誰かを信じて裏切られたら……と思うと躊躇してしまう気もする。
いっそのこと、クラレンスの時のように政略結婚であれば相手に期待せずに結婚できるかな。
不貞されても、子供だけ連れて離婚すればいいかな。
そんなことを考えるくらい、心が荒んでしまった。
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