誰にも口外できない方法で父の借金を返済した令嬢にも諦めた幸せは訪れる

しゃーりん

文字の大きさ
27 / 47

27.

 
 
数日後、セバスの旦那様であるブラッドリーの元に妻がやってきた。


「ブラッドリー様、私は何も聞いておりませんが?」

「……何の話だ?」

「2人目の子供のことです。私の許可なく勝手に何をしてくれているのですか!」

「そんなに怒らなくても。ラインハルトにも兄弟がいればいいと思ったんだ。」


ラインハルトというのはジュゼットが契約で産んだ子供の名前だった。


「前と同じく私の子供ということにするつもりなのですよね?
 そうなると、その女性が妊娠中は私はまた部屋で過ごすことになるのです。
 なのに勝手なことを。私にも都合があるのですよ!」


1人目の時、妻であるカサンドラの妊娠を誤魔化していることを限られた使用人にしか知らないようにするために、お腹が目立ち始めると言われる時期からカサンドラは部屋から出ないように頼んだ。
具合が悪く、社交もできないということにしたのだ。

2人目を望むのであれば、確かにカサンドラの許可は必要だった。


「すまない。だが、我が公爵家にはもう一人はいるべきだ。」

「……私は承知しません。」

「元は君が原因なんだが?」

「一人でもいいと思いますが?」


会話は平行線を辿り、ひとまず2人目の子供のことはおいておくことになった。




しかし3週間後、セバスが狼狽えて言った。


「旦那様、別邸の例の女性ですが、月のものが来ておりません。
 妊娠した可能性があります。
 あと10日ほど経っても月のものがなければ、ほぼ妊娠は確定ということです。」

「……なんということだ。カサンドラは承知していないというのに。」

「環境の変化でズレる女性もいるとのことです。期待しましょう。」


期待……どっちに?
妊娠していれば2人目の子供を持つことができるが、カサンドラは怒るだろう。
妊娠していなければ今後も2人目の子供を持つことは叶わないだろうが、今の別邸にいる令嬢の子供は好ましくないためにホッとするかもしれない。

どちらかと言えば、妊娠していないことに期待をしていた。

しかし、願い虚しく別邸の令嬢の妊娠は確実となった。




妻カサンドラに報告すると怒り狂った。


「信じられない!私のことを蔑ろにして。もう限界だわ!」


そう言い捨てたカサンドラの姿が消えたのは、翌日だった。




カサンドラは執事見習いの男と逃げた。

一応、離婚届を置いていき、全ての宝石を持ち出したようだった。

しかし、ブラッドリーは離婚届や宝石のことよりも、2人目の母親であるべきカサンドラがいなくなってしまったということのほうが重要だった。


「どうすればいいんだ?カサンドラがいなければ、我が子の母がいない。
 別邸の女を妻にはできない。
 どこの誰かは知らないが、アレは阿婆擦れという感じだった。
 愛人が産んで引き取ったということにするか?
 公爵家に庶子?
 いや、私に愛人がいたということも子供が庶子になるということも受け入れられない。」



悩んだ結果、ブラッドリーはカサンドラの父親に連絡を取った。



「これは久しぶりだな。ブラッドリー君。カサンドラとラインハルトは元気かね?」

「……カサンドラが離婚届を置き、男と宝石と共に逃げました。」


ブラッドリーがそう告げると、カサンドラの父親であるパモ公爵は大笑いをした。




 

あなたにおすすめの小説

王太子殿下が私を諦めない

風見ゆうみ
恋愛
公爵令嬢であるミア様の侍女である私、ルルア・ウィンスレットは伯爵家の次女として生まれた。父は姉だけをバカみたいに可愛がるし、姉は姉で私に婚約者が決まったと思ったら、婚約者に近付き、私から奪う事を繰り返していた。 今年でもう21歳。こうなったら、一生、ミア様の侍女として生きる、と決めたのに、幼なじみであり俺様系の王太子殿下、アーク・ミドラッドから結婚を申し込まれる。 きっぱりとお断りしたのに、アーク殿下はなぜか諦めてくれない。 どうせ、姉にとられるのだから、最初から姉に渡そうとしても、なぜか、アーク殿下は私以外に興味を示さない? 逆に自分に興味を示さない彼に姉が恋におちてしまい…。 ※史実とは関係ない、異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。

【完結】婚約破棄に感謝します。貴方のおかげで今私は幸せです

コトミ
恋愛
 もうほとんど結婚は決まっているようなものだった。これほど唐突な婚約破棄は中々ない。そのためアンナはその瞬間酷く困惑していた。婚約者であったエリックは優秀な人間であった。公爵家の次男で眉目秀麗。おまけに騎士団の次期団長を言い渡されるほど強い。そんな彼の隣には自分よりも胸が大きく、顔が整っている女性が座っている。一つ一つに品があり、瞬きをする瞬間に長い睫毛が揺れ動いた。勝てる気がしない上に、張り合う気も失せていた。エリックに何とここぞとばかりに罵られた。今まで募っていた鬱憤を晴らすように。そしてアンナは婚約者の取り合いという女の闘いから速やかにその場を退いた。その後エリックは意中の相手と結婚し侯爵となった。しかしながら次期騎士団団長という命は解かれた。アンナと婚約破棄をした途端に負け知らずだった剣の腕は衰え、誰にも勝てなくなった。

初めから離婚ありきの結婚ですよ

ひとみん
恋愛
シュルファ国の王女でもあった、私ベアトリス・シュルファが、ほぼ脅迫同然でアルンゼン国王に嫁いできたのが、半年前。 嫁いできたは良いが、宰相を筆頭に嫌がらせされるものの、やられっぱなしではないのが、私。 ようやく入手した離縁届を手に、反撃を開始するわよ! ご都合主義のザル設定ですが、どうぞ寛大なお心でお読み下さいマセ。

2度目の結婚は貴方と

朧霧
恋愛
 前世では冷たい夫と結婚してしまい子供を幸せにしたい一心で結婚生活を耐えていた私。気がついたときには異世界で「リオナ」という女性に生まれ変わっていた。6歳で記憶が蘇り悲惨な結婚生活を思い出すと今世では結婚願望すらなくなってしまうが騎士団長のレオナードに出会うことで運命が変わっていく。過去のトラウマを乗り越えて無事にリオナは前世から数えて2度目の結婚をすることになるのか? 魔法、魔術、妖精など全くありません。基本的に日常感溢れるほのぼの系作品になります。 重複投稿作品です。(小説家になろう)

《完結》恋に落ちる瞬間〜私が婚約を解消するまで〜

本見りん
恋愛
───恋に落ちる瞬間を、見てしまった。 アルペンハイム公爵令嬢ツツェーリアは、目の前で婚約者であるアルベルト王子が恋に落ちた事に気付いてしまった。 ツツェーリアがそれに気付いたのは、彼女自身も人に言えない恋をしていたから─── 「殿下。婚約解消いたしましょう!」 アルベルトにそう告げ動き出した2人だったが、王太子とその婚約者という立場ではそれは容易な事ではなくて……。 『平凡令嬢の婚活事情』の、公爵令嬢ツツェーリアのお話です。 途中、前作ヒロインのミランダも登場します。 『完結保証』『ハッピーエンド』です!

やさしい・悪役令嬢

きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」 と、親切に忠告してあげただけだった。 それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。 友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。 あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。 美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。

婚約者のことが大大大好きな残念令息と知らんふりを決め込むことにした令嬢

綴つづか
恋愛
――私の婚約者は完璧だ。 伯爵令嬢ステラリアの婚約者は、将来の宰相として期待されている筆頭侯爵令息のレイルだ。冷静で大人びていて文武にも長け、氷の貴公子などと呼ばれている完璧な男性。 でも、幼い頃から感情と表情が読み取りづらいのレイルの態度は、婚約者として可もなく不可もなく、ステラリアはどこか壁を感じていた。政略なこともあるが、引く手あまたな彼が、どうして平凡な伯爵令嬢でしかないステラリアと婚約を結び続けているのか、不思議で不安だった。 だが、そんなある日、偶然にもステラリアは見てしまった。 レイルが自室でベッドローリングをしながら、ステラリアへの愛を叫んでいる瞬間を。 婚約者のことが大好き過ぎるのに表情筋が動かな過ぎて色々誤解をされていた実は残念な侯爵令息と、残念な事実を知ったうえで知らんふりをすることにした伯爵令嬢のラブコメです。 ヒーローとヒロインのどちらかの視点で基本お話が進みますが、時々別キャラ視点も入ります。 ※なろうさんにも掲載しています。

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。