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ラインハルトは妹シフォーヌの婚約者だった侯爵令息のエリオットに声をかけた。
 

「エリオット、シフォーヌが申し訳ないことをしたね。」

「いや、彼女とは合わなかったから正直ホッとしている。こんなこと言って申し訳ないけど。」

「いいんだ。あの子は自分中心にしか物事を考えられない子だったから。
 それよりも、次の婚約者候補はいるのか?」

「まだ。婚約者のいない伯爵位より上の令嬢となると、2,3歳下になるらしい。」

「そうか。私も直接会ったことはないけれど、君の3歳下に可愛い伯爵令嬢がいる。
 シフォーヌが好きになった令息の妹だけど。」

「あぁ、あの彼の。……見てみたいな。」

「こっそり見に行くか?」

「……見られるのか?」

「ああ。」


ルミアの行動を調べたラインハルトは、数度ルミアを見に行ったから。

エリオットにもあれがルミアだと教えた。

彼は一目惚れをしたようだった。
確かにルミアは可愛い。あと数年もすれば、目を引く美人になるだろう。


エリオットが両親に、ルミアとの縁談を持ち掛けた。
侯爵夫妻はコールマン伯爵家の過去を知っていたが、ここまで持ち直した手腕は称賛に値すると思っていたので、顔合わせを願い出た。

結果、エリオットだけでなく侯爵夫妻までルミアを気に入り、婚約を望まれている。
 




 
カイトに届いた兄からの手紙を読ませてもらったジュゼットは、兄夫婦も賛成しているとわかった。


「カイ様はどう思う?」

「僕は、ルミアが嫌がっていないのであれば構わないと思っているけど。」

「そうね。デイビス侯爵ってお会いしたことある?」

「多分、僕の一歳下の学年だったかな。
 話したことはないけどおおらかな方だったと思うけど。」

「次の長期休暇に私たちが王都に向かうまでは、交流を図るって書いてあったわ。
 侯爵家も再度婚約解消にならないように、ご子息とルミアが合うか様子を見るのね。
 いいことだと思うわ。私たちが向かうまで付き合いが続いていたら婚約することになるわね。」


あのルミアが侯爵家に……と思うと心配だけど、あの子は意外とどこでも馴染みそうだわ。



数か月後、デイビス侯爵家の方々と会い、ルミアの婚約が結ばれた。

デイビス侯爵夫妻は、ルミアをとても気に入ってくれているのがわかったし、エリオット様も優しい人だった。
正直、前の婚約者である公爵令嬢はこのエリオット様のどこが気に入らなかったのかわからない。
確かにセドルとはタイプは違うけど。
がっしりとした騎士みたいな男性が好みだったってことかしら?


ルミアに、エリオット様のどこが気に入ったのか聞いてみた。
すると、『サニー』に似ていたからと言った。『サニー』とは領地でよく乗っていた馬の名前。
目が合うと喜ぶところ、まるで僕を選んでって縋るような目で見られたところ。
それが可愛かったのだとルミアは言った。

まぁ、それでいいのなら構わないけれど………



休暇が終わると、エリオット様が3年生、セドルが2年生、ミュイカ嬢が1年生になる。
ルミアの入学は来年で、エリオット様とは入れ違いになる。

翌年卒業したエリオット様は、ルミアが学生の3年間のうち何度も学園まで迎えに行って令息たちを牽制し続けたという。





 


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