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アリーズが出て行った後の執務室では、モリス男爵が頭を抱え、ウォルターは呆れていた。
「ダッチス様、売り言葉に買い言葉もいいとこですね。ミリアム様を非難したあなたが愛人、ですか。」
「……あんなこと言うつもりはなかった。そのうち撤回する。」
「もう手遅れじゃないですか?奥様は狙って言わせたような気がします。」
「狙って?」
「大方、初夜が酷かったことで閨事に恐怖心でも芽生えてしまったのかもしれませんね。だから、自分に触れないのであれば不貞を許すとおっしゃったのでしょう。」
「恐怖心……そうか。」
確かに、かなり痛かったであろう閨事は彼女にとってもう経験したくないものになったのかもしれない。
だとしても、挽回の機会を与えてくれてもいいんじゃないか?
……いや、彼女は自分か、愛人か、と選択肢を用意してくれていた。俺が妻を選べばよかっただけのことだったのに。
「レベッカを愛人にするにしろ、しないにしろ、奥様専属は外すべきですね。本来なら解雇が妥当です。」
「だがレベッカは、誰も教えてくれない情報をくれるぞ?ミリアムのことも彼女が正しかった。」
レベッカは、ミリアムが俺のことを嫌っていることや、庭師と懇意になったこと、リズベスを連れて離婚を考えていることなど、ミリアムの心の内を密かに俺に教えてくれていたんだ。
「……ダッチス様はレベッカと関係を持ったのに、なぜ彼女を妻にしなかったのですか?」
何を今更。わかりきったことじゃないか。
「レベッカは元貴族であって、今は貴族じゃないからだ。リズベスのためにも平民を妻にはできない。
それに、彼女は純潔じゃなかったし、自分から体を投げ出すような女だ。酔った勢いで1回抱いただけだ。」
元妻ミリアムの葬儀を終え、心中のことで同情と嘲笑でうんざりしてヤケ酒を飲んでいた時に、レベッカが裸で擦り寄ってきたから相手をしただけだ。
本人も、『慰めたかった』と言っただけで『妻にしろ』とは言わなかった。
その後も誘ってくる感じはあったが、適切な距離を保つようにした。勘違いして図に乗ると困るから。
とは言え、今日のように秘密の話と言われれば近くで話をすることになってしまうが。
ちなみに今日の話は、アリーズが『ダッチスの顔を見たくない』と呟いていたという報告だった。
まぁ、確かに思い込みで乱暴にしてしまったから怒っているのはわかる。
しかしそのわりにはなぜか、アリーズは執務室に来たが。俺に会いに来たんだよな?
本来の話は何だったのだろうか。
動けるようになれば食事を一緒に、とレベッカに伝えてもらったのだが、その返事もなかった。
つまり、まだその気はないのだろうが、一言あってもいいんじゃないか?
サリオンの愛人だと思い込んでいたことからひどい扱いをしてしまったが、謝って夫婦としてやり直すつもりでいたのに。
だが、彼女とはすぐに言い合いになってしまう。
だから、レベッカのように間に入って伝言してもらったり、どんなことを言っていたか報告してくれる侍女がいてくれると助かるのだが、やはり関係を持ったレベッカに頼むのは非常識だったか。
「仕方ない。侍女長にアリーズの専属からレベッカを外すように伝えてくれ。」
「承知いたしました。」
妻とは一度ゆっくり話し合う時間を持つ必要があるが、彼女の俺に対する印象は最悪であろうことから気が進まない。
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