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しおりを挟むアリーズはウォルターに、モリス男爵と前妻ミリアム様の関係もレベッカによってすれ違いが起きていたのではないかと指摘するとウォルターは思いもよらなかったのか、ひどく驚いた。
「いや、まさか。でもそう言えば、ダッチス様はレベッカがいろんな情報を教えてくれるから側にいたら便利だというようなことを言っていました。ミリアム様のこともレベッカから聞いたようで。」
ちょっと。レベッカを信用しすぎじゃない?
「ミリアム様って本当に庭師と不貞していたの?」
「そう言われてしまうと……お亡くなりになる数か月前、ミリアム様はダッチス様に離婚を申し出ました。もちろん、ダッチス様は拒否なさいました。ミリアム様は『私のことが嫌いなのに、こんな暮らし、もう耐えられない』とおっしゃいましたが、ダッチス様はリズベスお嬢様が可哀想だろうとおっしゃって。その後、ミリアム様は塞ぎ込まれたようです。」
ちょっと、話がズレている気がするけど。
「男爵様はミリアム様が嫌いだったの?」
「いえ、そのようなことは。
その後少しして、レベッカがミリアム様と庭師が懇意にしているという情報を持ってきました。庭師と一緒になりたくて離婚を言い出したのだとダッチス様はひどく怒られてしまって。
ミリアム様に、『死ぬまで離婚はしない。庭師は解雇してどこにも雇ってもらえないようにする』と言いました。」
「……ミリアム様は絶望してしまったのね。庭師の方もそうだったのかも。」
ミリアム様と庭師が本当に不貞関係にあったかはレベッカの証言だけでは認められないはずなのに、モリス男爵はそれだけで信じてしまったのだろうか。
たとえ2人が一緒にいる姿を見たとしても、花を貰っていただけなのかもしれない。
元気のない夫人を、庭師が気遣っていたところだったのかもしれない。
その場面を、レベッカは悪意のある嘘に変えて、モリス男爵に告げたのではないか。
庭師はなぜ自分が解雇されるのかもわからなかったのかもしれない。
死ぬまで離婚しないと言われた夫人と、仕事に誇りを持っていたのにその仕事ができなくなった庭師は、生き甲斐がわからなくなってしまい、一緒に死を選んでしまったのではないか。
アリーズは、なんとなくそう思ってしまった。
「でも、なんでミリアム様と庭師が心中したと噂が広まったの?隠すこともできたでしょうに。」
「それはわかりません。確かに一緒に亡くなっていましたが、領主夫人と庭師ですし、最初は事故だと思われていたのです。足を滑らせたミリアム様が池で溺れ、近くにいた庭師が助けようとして一緒に溺れてしまった、と。」
「え?!池での溺死なの?遺書もなく?」
「そうです。」
もっとなんかこう、遺書もあって、いかにも心中しましたって状況だと思っていたわ。
手を繋いでいたとか、離れないように抱き合っていたとか、一緒に毒を飲んだとか。
足を滑らせて溺れた?その可能性の方が心中よりもありそうだけど。
一緒に死を選んだって、心中って、勘違いじゃない?
「事故で片づけられるはずが、いつの間にか、心中したって街に広まっていました。
葬儀に訪れた貴族がそれを耳にしたことで、王都にも広まってしまったのだと思います。」
「男爵様も、2人が不貞関係にあると信じていたから、心中で納得してしまったということね。」
その、心中という噂を広めたのもレベッカじゃないの?と思ってしまうんだけど。
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