侯爵の愛人だったと誤解された私の結婚は2か月で終わりました

しゃーりん

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ウォルターはふと別のことを思い出した。奥様から頼まれたことを。


「ダッチス様、レベッカのこととは別なのですが、奥様から聞かれたことがあります。
リズベスお嬢様の家庭教師やマナー教育のことをどうお考えになっているのか、と。
初等教育をお考えなのか、誰かを雇うのなら何歳からなのか、とのことでした。」

「リズベスの?部屋からいつ出てくるかもわからないのに、初等教育など無理だろう?」

「部屋から出てきたら、8歳から王都で初等教育を受けさせるつもりですか?」

「それでもいいと思っていたが、アリーズがいるから家庭教師でもいいかもな。」

「まぁ、そうですね。今は奥様が指導なさっているようですし。」

「リズベスとうまくやれているなら、それでいい。」


それでいいって……ダッチス様、リズベスお嬢様に会ったのはいつですか?あ……まさか。 


「ダッチス様、リズベスお嬢様が部屋に籠り始めたのってミリアム様が亡くなる少し前からですよね?」

「ああ。そうだったかな。覚えていない。」
 
「ダッチス様、リズベスお嬢様に部屋から出るなって怒鳴ったことありましたよね?」

「そんなことあったか?」

「ほら、ミリアム様を連れ出して『死ぬまで離婚はしない』と不貞のことを責めたときに。」

「……あぁ、そう言えば。さすがにリズべスの前でミリアムを責められなかったからな。」

「リズベスお嬢様はひょっとすると今でも部屋から出たら怒られると思って出ないのでは?」

「ははっ、まさか。子供なんて、言われたことをすぐ忘れるからそんなはずないだろう。」

「いや、どうでしょう。ミリアム様の葬儀の日も、『怒られるから出ない』と部屋から出すのが大変だったと聞いた覚えがあります。葬儀中もダッチス様のそばに寄りつきもしないままでしたよね?」
 
「……ああ。つまり、引きこもりは俺のせいだと言いたいのか。」

「そうかな?とふと思いました。怒鳴られたことが怖くて忘れられないんじゃないですか?
たまに顔を合わせても、ダッチス様はリズベスお嬢様の前でも不機嫌だったので怖がられていると思いますよ。家族3人で笑い合った記憶など、小さかったお嬢様の記憶にも残っていないほど前のことでしょうから。」

「……そうかもな。俺も忘れたよ。」

「ですので、リズベスお嬢様に怒鳴ったり怒ったりしないように心掛けてください。部屋に行って、優しく誘い出してあげれば、引きこもりは解決するかもしれませんよ。」

「そこまで俺が下手に出る必要あるか?」

「娘に対して下手も何もないのでは?引きこもりの原因がそれで合っていれば解決するのですから。
それに、部屋から出てこないからといって、どれだけリズベスお嬢様のお顔を見ていないかわかっておられますか?」


娘が部屋を出ないからって、理由も聞かず会いにもいかない父親もどうかと思う。


「病気なわけでもないし、侍女がついているんだ。顔を見なくても問題ないだろう?」


ウォルターは、レベッカが嘘をついていただけでなく、ダッチス様のこういう考え方もミリアム様と夫婦仲が上手くいかなくなった一因であり、離婚を切り出されたのも仕方なかったのではないかと思うようになった。

ミリアム様はもういない。
だからこそ、娘のリズベスお嬢様とはこのままでいていいはずがない。


「行きましょう。リズベスお嬢様の部屋へ。」
 

ダッチス様はめんどくさそうな顔をしたが、ため息をつきながら腰を上げた。
 

 
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