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しおりを挟む側妃になって1か月半が経ち、妊娠が判明した。
月のものがくる予定日をひと月も過ぎてしまったために診察してもらったのだ。
狙ったわけではなかったけれど、クロノスに初めて抱かれた日から3日間ほどが妊娠しやすい時期であった。
避妊薬を飲むことなく毎日のように子種を注がれ続けているのだから妊娠しても不思議ではない。
クロノスはもちろん、国王夫妻も実家の両親も大喜びだった。
そしてクロノスは……極甘になった。
安定期までは閨事はできないのに、変わらず一緒に寝たがる。
クロノスの体温に慣れてしまったのでありがたいけど。
悪阻の期間は侍女並みに介抱してくれるし、食べやすい物を調べて私に合うように指示してくれる。
クロノスの乳児の頃の育児日誌を2人で見て、1年後は…と成長を楽しみにしている。
膨れてきたお腹を撫で、毎日話しかけている。想像もしなかった姿があった。
こんなに優しくされて、大切にされて、好きにならないなんて無理だった。
クロノスを夫として、一人の男性として愛している。
私が理想とした相思相愛の形とは少し違うけど、クロノスを愛して幸せな気持ちだった。
大事に大切に囲われて、無事に男の子を出産した。
王太子にも国王にもなれはしないけど、王家の血筋である可愛い我が子。
この子がいれば、離宮で過ごすことになっても自分は心穏やかにいられるだろう。
クロノスと正妃に子供が産まれても。クロノスが正妃に愛を囁いても。
この子は私が愛したクロノスの子である。そう思うだけで幸せを感じた。
名前はファーガスと名付けられた。
出産後もクロノスの『溺愛』は変わらない。
閨事の許可が出ると、前と変わらず夢中になって抱かれる。
「…っ待って。そんなに吸ったら…」
「うん。母乳が出てる。今、ファーガスには乳母がついているから私が飲む。」
さっき搾ってきたから、そんなには出ないけど、刺激されると出てしまう。
クロノスは両方の乳首から母乳を吸い上げてしまった。
クロノスにされていると思うだけで体が疼く。
この時だけは独占したいとファーガスに対抗するクロノスが愛しかった。
久しぶりに一つになれて、何故か涙が出てきた。
クロノスが優しく拭ってくれたけど、中をギュッと締めつけてしまいクロノスが呻いた。
腰を動かしながら、クロノスはいつも名を呼ぶ。
「マーリア、マーリア……」
そして口づける。優しく、深く絡めて。
クロノスは決して言葉にしない。その代わりの口づけだと思っている。
わかっている。クロノスはあと3年弱で正妃を娶る。
正妃を大切にするために、これ以上溺れないように、『愛の言葉』は口に出さない。
マーリアと同じ。
だけど、期限が来るまでは私に溺れていてほしい。
そして8か月後、マーリアは再び妊娠し、今度は女の子を出産した。
名前はローディアと名付けられた。
大切な宝物がまた一つ増えた。
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