8 / 47
序章 仇討ち編
8.討伐隊結成
しおりを挟む
隊長の交代の儀式のようなものを終えて大会議室に戻ってきた俺だったが、他の隊長にどう思われているかが不安になっていた。
「他に刃の刀剣部隊隊長就任に文句がある奴はいるか?」
武岩総長が目を瞑りながら面倒臭そうにそう口を開いた。
「「「「問題ありません」」」」
総意で問題ないことがわかったので胸をなでおろす。
「あのー、俺はもういいですか?」
手を挙げたのは生産部隊隊長の皇佐さんだった。
皆が方眉をピクリと上げる。
みなさんこの人の事を良く知っているようだ。
この会議が面倒になったのだろう。
「生産部隊はもうよい。有真も、もうよいぞ」
すると有真が手を挙げている。
「あの、刃さんが兼任することになって刀剣班の製造に我々の魔銃班から人が取られることはないですかね?」
「あぁ。今の所、それはない。刃はすでに私と同等かそれ以上。底が見えん。この討伐任務が終わったら製造しつつ部隊員と交流を深めるくらいになるだろう」
「わかりました。それならば問題ありません」
細かいことが気になる性格の有真らしい質問だな。
二人が退席すると今後の話になった。
「前回は刀剣部隊から一パーティで討伐へ向かったな? 今回はどうする? リーダーは刃とするが」
武岩総長が前回の問題点を踏まえて皆の意見を取り入れようとしているようだ。
魔銃部隊の隊長である飛田さんが手を挙げる。
「そもそも人を増やしたところで済む問題なんだろうか?」
「比重の問題かと思います」
その疑問には俺が答える。異世界での戦闘経験を活かした意見はあった方がいいだろう。
「どこに人数をかけるかということか?」
「そうです。今回の場合、牛鬼といわれる魔物ですが、私の記憶の中に似たような魔物が居ます。そいつは、近接戦闘を得意とする魔物のはずです。なので、刀剣部隊隊員は一パーティでいいです」
「なるほど。魔物に関する知識もあるのだな?」
「はい。役立つと思います」
コクリと頷くと先を促された。
「他の部隊ですが、魔法銃部隊、遠距離魔法部隊、治療部隊はそれぞれツーマンセルでお願いしたいです」
「なぜ二人なのだ?」
その疑問はごもっともだった。遠征に行く場合は、人数は少ないなら少ない方がいいのだ。それは、食料が少なくて済むから。それをなぜ二人必要かというと。
「一人だと判断が遅れた際にカバーできる人員がいません。そのミスが命取りになります。しかし、カバーできる人がいれば心強いし不安も解消されやすい。それが利点です」
そう説明すると武岩総長が口角を上げながら口を開いた。
「これは元軍人の人間であればよく知っていることだが。ジスパーダではその考えは浸透していないな。パーティが基本だからだ。これから取り入れて行こう」
各々はコクリと頷いた。
こういう時に軍とは違うんだなと痛感する。
この知識は異世界の軍の人間に教わった知識だ。
現代でも異世界でも、どちらも軍の動きを追及していくと同じような答えに行きつくのだなとその時に感心したものだ。
「俺の知識が役に立ちそうなときはどんどん言って行きます。生意気なことを言う事もあるかと思いますが、お許しください」
「いや、我々は魔物の知識があるにはあるが、未知のものがでてくるといつも犠牲を伴う。それが安定して狩れるようになるのならば喜ばしいことだろう」
飛田さんは話が分かる人みたいだ。
みんなも頷いているところをみると同じような意見のようだ。少し安心した。話が通じないのはアイツだけだったようだ。
「二人ずつの選抜は任せます。俺は鎖那の選んだ人員を見極めることにします」
「「「了解」」」
そういうと各部隊長は部屋から出て行った。
俺だけ残っているのは鎖那を待っているからだ。
────コンコンッ
「入っていいぞ」
「失礼します!」
入ってきた人を見て俺は思わず目を見開いてしまった。
「意外ですか?」
鎖那の問いに自分が恥ずかしくなった。
だが、驚いたのは事実だ。まさか。
「いや、すまんな。まさか選抜メンバーに女性が入るとは思っていなかったんだ」
素直に謝るとその女性はニコリとした。
「いいよです。そういう反応になるかと予想はしてた、ました。しかし、アタイの速さについてこれる人はいないです! 速王 早波です!」
「なるほど。いや、実力を疑っているわけではない。鎖那が選んだんだ。信頼している」
たしかにスラリとした体に見えるが足の筋肉はしなやかに発達しているようだ。ふくらはぎの盛り上がりとお尻の筋肉の付き具合がそれを物語っている。
「そんなにアタイの下半身が気になんのか、ですか?」
目を細めて怪訝な顔で見られてしまった。悪い癖が出てしまった。筋肉を観察してしまうんだよな。
「すまん! 筋肉の付き具合を見て納得しただけだ。他意はない。あと、無理に敬語を使わなくてもいいぞ」
そういうと「あぁ、よかったぁ」といって引き下がった。この女性も自己主張がちゃんとできる人のようだ。
もう一人はマッチョで大柄な男性であった。少し年齢はいっているようだが。
「アッシにスピードはないですが、パワーがあります! 力仕事は任せてください! 金剛 力也といいます!」
「あぁ。頼りにするさ。鎖那に任せてよかった。バランスがいいな。流石だ」
鎖那を見据えて褒めると、鎖那は目に力を込めた。
「ボクは、天地さんに憧れてこの部隊に入りました! 討伐隊に選んで頂いて有難う御座います!」
(そうか。天地に憧れてか。いい後輩をもっているな。この目を見る限りかなり強い思いでこの任務を全うしてくれるだろう)
「あぁ。共に牛鬼を討とう! 期待している!」
「「「はっ!」」」
こうして討伐隊が結成されたのであった。
「他に刃の刀剣部隊隊長就任に文句がある奴はいるか?」
武岩総長が目を瞑りながら面倒臭そうにそう口を開いた。
「「「「問題ありません」」」」
総意で問題ないことがわかったので胸をなでおろす。
「あのー、俺はもういいですか?」
手を挙げたのは生産部隊隊長の皇佐さんだった。
皆が方眉をピクリと上げる。
みなさんこの人の事を良く知っているようだ。
この会議が面倒になったのだろう。
「生産部隊はもうよい。有真も、もうよいぞ」
すると有真が手を挙げている。
「あの、刃さんが兼任することになって刀剣班の製造に我々の魔銃班から人が取られることはないですかね?」
「あぁ。今の所、それはない。刃はすでに私と同等かそれ以上。底が見えん。この討伐任務が終わったら製造しつつ部隊員と交流を深めるくらいになるだろう」
「わかりました。それならば問題ありません」
細かいことが気になる性格の有真らしい質問だな。
二人が退席すると今後の話になった。
「前回は刀剣部隊から一パーティで討伐へ向かったな? 今回はどうする? リーダーは刃とするが」
武岩総長が前回の問題点を踏まえて皆の意見を取り入れようとしているようだ。
魔銃部隊の隊長である飛田さんが手を挙げる。
「そもそも人を増やしたところで済む問題なんだろうか?」
「比重の問題かと思います」
その疑問には俺が答える。異世界での戦闘経験を活かした意見はあった方がいいだろう。
「どこに人数をかけるかということか?」
「そうです。今回の場合、牛鬼といわれる魔物ですが、私の記憶の中に似たような魔物が居ます。そいつは、近接戦闘を得意とする魔物のはずです。なので、刀剣部隊隊員は一パーティでいいです」
「なるほど。魔物に関する知識もあるのだな?」
「はい。役立つと思います」
コクリと頷くと先を促された。
「他の部隊ですが、魔法銃部隊、遠距離魔法部隊、治療部隊はそれぞれツーマンセルでお願いしたいです」
「なぜ二人なのだ?」
その疑問はごもっともだった。遠征に行く場合は、人数は少ないなら少ない方がいいのだ。それは、食料が少なくて済むから。それをなぜ二人必要かというと。
「一人だと判断が遅れた際にカバーできる人員がいません。そのミスが命取りになります。しかし、カバーできる人がいれば心強いし不安も解消されやすい。それが利点です」
そう説明すると武岩総長が口角を上げながら口を開いた。
「これは元軍人の人間であればよく知っていることだが。ジスパーダではその考えは浸透していないな。パーティが基本だからだ。これから取り入れて行こう」
各々はコクリと頷いた。
こういう時に軍とは違うんだなと痛感する。
この知識は異世界の軍の人間に教わった知識だ。
現代でも異世界でも、どちらも軍の動きを追及していくと同じような答えに行きつくのだなとその時に感心したものだ。
「俺の知識が役に立ちそうなときはどんどん言って行きます。生意気なことを言う事もあるかと思いますが、お許しください」
「いや、我々は魔物の知識があるにはあるが、未知のものがでてくるといつも犠牲を伴う。それが安定して狩れるようになるのならば喜ばしいことだろう」
飛田さんは話が分かる人みたいだ。
みんなも頷いているところをみると同じような意見のようだ。少し安心した。話が通じないのはアイツだけだったようだ。
「二人ずつの選抜は任せます。俺は鎖那の選んだ人員を見極めることにします」
「「「了解」」」
そういうと各部隊長は部屋から出て行った。
俺だけ残っているのは鎖那を待っているからだ。
────コンコンッ
「入っていいぞ」
「失礼します!」
入ってきた人を見て俺は思わず目を見開いてしまった。
「意外ですか?」
鎖那の問いに自分が恥ずかしくなった。
だが、驚いたのは事実だ。まさか。
「いや、すまんな。まさか選抜メンバーに女性が入るとは思っていなかったんだ」
素直に謝るとその女性はニコリとした。
「いいよです。そういう反応になるかと予想はしてた、ました。しかし、アタイの速さについてこれる人はいないです! 速王 早波です!」
「なるほど。いや、実力を疑っているわけではない。鎖那が選んだんだ。信頼している」
たしかにスラリとした体に見えるが足の筋肉はしなやかに発達しているようだ。ふくらはぎの盛り上がりとお尻の筋肉の付き具合がそれを物語っている。
「そんなにアタイの下半身が気になんのか、ですか?」
目を細めて怪訝な顔で見られてしまった。悪い癖が出てしまった。筋肉を観察してしまうんだよな。
「すまん! 筋肉の付き具合を見て納得しただけだ。他意はない。あと、無理に敬語を使わなくてもいいぞ」
そういうと「あぁ、よかったぁ」といって引き下がった。この女性も自己主張がちゃんとできる人のようだ。
もう一人はマッチョで大柄な男性であった。少し年齢はいっているようだが。
「アッシにスピードはないですが、パワーがあります! 力仕事は任せてください! 金剛 力也といいます!」
「あぁ。頼りにするさ。鎖那に任せてよかった。バランスがいいな。流石だ」
鎖那を見据えて褒めると、鎖那は目に力を込めた。
「ボクは、天地さんに憧れてこの部隊に入りました! 討伐隊に選んで頂いて有難う御座います!」
(そうか。天地に憧れてか。いい後輩をもっているな。この目を見る限りかなり強い思いでこの任務を全うしてくれるだろう)
「あぁ。共に牛鬼を討とう! 期待している!」
「「「はっ!」」」
こうして討伐隊が結成されたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
異世界複利! 【単行本1巻発売中】 ~日利1%で始める追放生活~
蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。
中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。
役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる