異世界帰りの元勇者が現代の危機を救う~謎の異世界化、原因究明の旅へ~

ゆる弥

文字の大きさ
47 / 47
第一章 秋田編

47.基地長会議

しおりを挟む
 扉をノックする。この時間でもまだ基地長室にいるようだ。

「どうぞ?」

「失礼します。ただいま戻りました」

「早い戻りだったわね。何かわかった?」

「はい。祠の魔法陣には異世界の四天王が閉じ込められていることがわかりました。そして、その魔法陣を起動できるのは私だけでした」

「……そう。つまり、あなたがこの異世界化のキーになっている」

 落ち着きながらも鋭い目で見つめられると委縮してしまう。
 この異世界化が起きたのは俺のせいかもしれないということだ。それは俺にとって精神的にくるものがある。

「そのようです。そして、同じような祠が、北海道の東側、石川県の能登、鹿児島より南にある可能性が高いです」

「話の規模が大きいわね。わかったわ。明日、各基地と総長を交えて会議をしましょう」

「はい。お願いします」

「今日はゆっくり休みなさい。そういえば、その四天王っていうのは強かったの?」

 にこやかにそんなことを口にした。
 大したことでもないかのように。
 自分達の強さに自信があるのだろうか。

「はい。異世界に居た時よりも強くなっていました。だから他の三人には残るように言ったのですが……」

「その様子だと断られたようね」

「はい。みんな頑固で……」

「あなたも、でしょ?」

「違いないですね」

「ふふふっ。ゆっくり休みなさい」

 頭を下げて基地長室から出る。千紗の母親だけあるな。色々とお見通しなようだ。

 その日はカツカレーを食べて休んだのであった。また雷斗から馬鹿にされたのであった。


◇◆◇

「失礼します!」

 基地長室に入るとモニターには各基地の基地長と武岩総長が映し出されていた。指示された場所に座ると会議が始まった。

『知友基地長から軽く報告を受けたが、もう一度報告を頼む』

「はっ! 秋田の遺跡に祠がありまして ────」

 これまでの一連の流れを話して報告する。
 祠に魔法陣があったこと。その中には四天王と呼ばれる魔物が閉じ込められていたこと。その魔物は以前に異世界で戦った時より強くなっていたということ。
 そして他にも三カ所に同様の祠があるかもしれないということ。

『ふむ。刃の魔力がキーになっていることは間違いなさそうじゃな』

「はい。それで、この基地で少し療養をさせて頂いて、そのまま北海道に向かおうと思うのです」

『うむ。その方がいいかもしれんな。しかし、そうなるとかなりの長期任務になるが、大丈夫か?』

「大丈夫です。あのパーティは居心地がいいので」

『そうか。ならよかったわい。あっちにも連絡しておくわい』

「お願いします」

 莉奈の方にも連絡を入れておいてくれるということだろう。もう一か月は経つから心配しているかもしれない。

 他の基地長の顔は見たことがなかったが、皆厳つい顔をしている。武岩総長にも勝るとも劣らない人たちばかりだ。

『それなら北海道基地によるがいい。ワシらは大歓迎じゃ。ワシとも是非にやり合うべ』

「あ、はぁ。お元気ですね……」

『当り前じゃあ! こっちは生涯現役だからのぉ!』

「では、行った先には宜しくお願いします!」

『待ってるさ』

 それで会議は終わった。皆のカメラが切れて画面が黒くなる中、武岩総長だけが映っていた。

『刃が無事でよかったわい。みんな無事かの?』

「はい。一時傷を受けたものが居ましたが、この知友基地長に治していただいたので大丈夫です!」

『そうか。それは良かったわい』

 わざわざ俺のために時間を取ってくれたのだろう。本当に頭が下がる思いだ。

「ここからの任務はかなり危険です。四天王はそう簡単に始末できる相手ではありません。俺一人の方が良いのではないかと思っているんですが……」

『それはどうじゃろうなぁ。刃よ。パーティというのは戦うためだけのチームなのか? 心の支えにはなり得ないのかのぉ?』

 ハッとした。俺は戦うことばかり考えていて、命を落とすかもしれないから付いてくるなとそればかり考えていた。

 一緒に戦えなければ足でまといになると、そればかり考えていて。俺は一人でここまでの旅路を来れただろうか。孤独感に苛まれて一人ではいられなかったのではないか。

 自分がそこまで心が強くない人間だというのはわかっている。そうなると、道中心の支えになってくれる仲間が必要なんじゃないのか?

 あの時みたいに。異世界にいた時の旅はなぜ楽しかったのか。俺はあの時足でまといだったんじゃないのか。立場が逆だったんじゃないのか。あの時みんなはなんて言ってくれた。

「……俺は薄情者ですね。こんなに心を支えてもらいながら危険だから置いていこうと考えていた。アイツらはついて行きたいというのに」

『ホホホッ。答えは出たようじゃのぉ。刃、いい仲間をもったのぉ。知友基地長の顔を見れば分かるわい。刃を見ていて、娘を任せられると思ったんじゃないのかね?』

 話を急に基地長に振った。

「そうねぇ。この基地で触れ合った者達が軒並み実力が向上してたのよ。刃、ウチに来ない?」

 ニヤリとイタズラな笑みを浮かべてこちらを見る。
 
『ダメじゃよ。ちゃんと帰ってくるんじゃぞ? みんな待っとるんだからな!』

「分かってますよ。総長。ちゃんと帰ります。皆で」







 *******************************
 あとがき

 お読み頂き有難う御座います!

 ここで第一章は終わりです!
 一旦完結します!
 第二章の旅も状況により今後投稿していきます!
 お楽しみください!
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...