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第一章 秋田編
46.頑固な千紗
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「いやー。でも四天王っていうからやっぱり強かったっすね?」
「そうですわねぇ。ワタクシ達では歯が立ちませんでしたわ」
東北基地への帰り道そんな話をしていた。
遺跡の秘密が少しわかったこともあり、ちょっと気を緩めて話をしていたのだ。
パワースポットを見つけたのは秋田を含めて四カ所。
そこには四天王が眠っていると考えてまず、間違いないだろう。そして、その四天王が出てくるキーとなるのは俺が触れること。
俺がこの異世界化のキーになっているかもしれないということ。そうなると……。
「なぁ。あの四天王が最弱だとしたらみんなどうする?」
しばしの沈黙が車内を包み込む。
「えっ!? 冗談っすよね?」
「あれは四天王最弱と言われたベルーゼだ。この上に三人もいる。そうなった時、みんなのうちの誰かが命を落としてもおかしくないんだ」
再び沈黙。
「なんですか? 私達を置いて行くつもりですか?」
きつい目をさせて睨んでくる千紗。
俺が言いたいことをわかったからのその反応なんだろう。
仲間を死地に連れて行きたくはない。
「私達みんなで異世界化調査部隊なんですよ!? そりゃ、刃さんが居なきゃ私達は死んでいたかもしれない。足手纏いかもしれないけど!」
千紗がハンドルを叩きながら怒りを露わにする。それはそうだよな。ここまで一緒に来たのにいきなりお留守番じゃな。でもなぁ。
「刃さんの言ってることはもっともっすよ。足引っ張ってるっすもん。今のままなら刃さんだけの方がいいにきまってるっす」
「雷斗は残るっていうの!?」
雷斗に食って掛かる千紗。だが、雷斗は冷静にその言葉を受け止めている。
「今のままではって言ったっす。刃さん、後はどこに祠があるかわかってるんすか!?」
「あぁ。大体の見当はついている。後三カ所ある」
「どこっすか?」
「北海道の東側、石川県能登の辺り、後は鹿児島より南の辺りだ」
しばし沈黙している。今後の動きを考えているのだろう。
「今考えている今後の予定だが、このまま北海道に移動しようと思っている。一度戻ってしまうと二度手間になる。空にも魔物がいる今、移動手段は陸路しかない。今行かない手はないと思っている」
「でも、北海道っすよ?」
「海底トンネルを行く。あとはひたすら目的の祠を探すしかない。北海道基地にもよって休憩するが」
「すぐに出発するんすか?」
「武岩総長と相談するよ。ただ、一個の祠を壊したことで何か世界が変わっていくかもしれない。そうなった場合は、急いだほうがいいかもしれない」
「時間が欲しいっす。自分は必ず空気中の魔素の吸収に成功してみせるっす。そしたら連れて行って欲しいっす!」
「あぁ。わかった」
雷斗の言う通り魔素の吸収に成功すれば魔法を撃ち放題だ。戦力になることは間違いない。そして、最上位魔法が撃てる。
そう思ったのだが、女性陣二人はそれが不満だったらしい。
「私はどうするんですか!? 運転手は足手纏いだからいりませんか!? そりゃ魔人でもなければ普通の治療しかできない治癒部隊員ですよ!」
「ワタクシも魔法銃しか撃てませんわ。魔法も撃てるように鍛錬すればいいんですわね? わかりましたわ。やってみせますわ」
「冬華はいいわよね! 私は!? 用済みですか!?」
凄い剣幕である。恐い恐い。
「いや、そのな。命を落とすことになるかもしれないから、それは嫌だと思ってだなぁ」
「そんなの刃さんだけで行く方がいいでしょうけど、この部隊から捨てられたら私どうしたらいいんですか!?」
「千紗、俺は千紗、雷斗、冬華、誰にも死んでほしくないんだ。だから岩手で待っててくれないか?」
チラッとこちらを見ると口を尖らせる。そして「むー」と唸っている。考えてくれるかな。
「私がいなくなったら嫌ですか?」
「んーそうだな。うん。嫌だぞ!」
「じゃあ、ついていきますね?」
「なんでそうなる!」
後ろではクスクスと笑っている。なんだか俺達の会話を楽しんでいるようだ。なんでこんな剣幕の千紗を前に笑っていられるのだろうか。
「刃さん、千紗さんには何を言っても無理じゃないっすか? ついてきますよ?」
「ワタクシもそう思いますわ。刃さんが千紗さんに口で勝てると思いませんわ」
二人とも笑いながら俺のことを馬鹿にしている。たしかに俺は口では勝てないが、そういうことじゃないんだがなぁ。なんでわかってくれないんだか。
困った顔をしていたんだろう。
「そんな困った顔しないでくださいよ? わかってますよ。私達の命のことを考えてくれているのは」
「だったら……」
「でも、だからって行かないのは違うと思います。私達はパーティです。同じ部隊です。いわば一心同体! ということは、離れることはできないのです!」
何も反論する言葉が見つからなかった。みんなそんな風に思ってくれていたんだな。
「わかった。一応武岩総長にも相談してみるからな」
「相談したって、付いて行きますよ?」
千紗は大分頑固をこじらせているようだ。
どこかの岩の様に心を動かさない最強ジスパーダを想起させる。
「さっ、東北基地に着きましたよ? 休みましょう。その前に報告ですかね?」
「だな。報告までは仕事だ」
この頑固娘はどうすればいいんだろうか。だが、恐らくその親も同じであろう。胃が痛くなる。
「そうですわねぇ。ワタクシ達では歯が立ちませんでしたわ」
東北基地への帰り道そんな話をしていた。
遺跡の秘密が少しわかったこともあり、ちょっと気を緩めて話をしていたのだ。
パワースポットを見つけたのは秋田を含めて四カ所。
そこには四天王が眠っていると考えてまず、間違いないだろう。そして、その四天王が出てくるキーとなるのは俺が触れること。
俺がこの異世界化のキーになっているかもしれないということ。そうなると……。
「なぁ。あの四天王が最弱だとしたらみんなどうする?」
しばしの沈黙が車内を包み込む。
「えっ!? 冗談っすよね?」
「あれは四天王最弱と言われたベルーゼだ。この上に三人もいる。そうなった時、みんなのうちの誰かが命を落としてもおかしくないんだ」
再び沈黙。
「なんですか? 私達を置いて行くつもりですか?」
きつい目をさせて睨んでくる千紗。
俺が言いたいことをわかったからのその反応なんだろう。
仲間を死地に連れて行きたくはない。
「私達みんなで異世界化調査部隊なんですよ!? そりゃ、刃さんが居なきゃ私達は死んでいたかもしれない。足手纏いかもしれないけど!」
千紗がハンドルを叩きながら怒りを露わにする。それはそうだよな。ここまで一緒に来たのにいきなりお留守番じゃな。でもなぁ。
「刃さんの言ってることはもっともっすよ。足引っ張ってるっすもん。今のままなら刃さんだけの方がいいにきまってるっす」
「雷斗は残るっていうの!?」
雷斗に食って掛かる千紗。だが、雷斗は冷静にその言葉を受け止めている。
「今のままではって言ったっす。刃さん、後はどこに祠があるかわかってるんすか!?」
「あぁ。大体の見当はついている。後三カ所ある」
「どこっすか?」
「北海道の東側、石川県能登の辺り、後は鹿児島より南の辺りだ」
しばし沈黙している。今後の動きを考えているのだろう。
「今考えている今後の予定だが、このまま北海道に移動しようと思っている。一度戻ってしまうと二度手間になる。空にも魔物がいる今、移動手段は陸路しかない。今行かない手はないと思っている」
「でも、北海道っすよ?」
「海底トンネルを行く。あとはひたすら目的の祠を探すしかない。北海道基地にもよって休憩するが」
「すぐに出発するんすか?」
「武岩総長と相談するよ。ただ、一個の祠を壊したことで何か世界が変わっていくかもしれない。そうなった場合は、急いだほうがいいかもしれない」
「時間が欲しいっす。自分は必ず空気中の魔素の吸収に成功してみせるっす。そしたら連れて行って欲しいっす!」
「あぁ。わかった」
雷斗の言う通り魔素の吸収に成功すれば魔法を撃ち放題だ。戦力になることは間違いない。そして、最上位魔法が撃てる。
そう思ったのだが、女性陣二人はそれが不満だったらしい。
「私はどうするんですか!? 運転手は足手纏いだからいりませんか!? そりゃ魔人でもなければ普通の治療しかできない治癒部隊員ですよ!」
「ワタクシも魔法銃しか撃てませんわ。魔法も撃てるように鍛錬すればいいんですわね? わかりましたわ。やってみせますわ」
「冬華はいいわよね! 私は!? 用済みですか!?」
凄い剣幕である。恐い恐い。
「いや、そのな。命を落とすことになるかもしれないから、それは嫌だと思ってだなぁ」
「そんなの刃さんだけで行く方がいいでしょうけど、この部隊から捨てられたら私どうしたらいいんですか!?」
「千紗、俺は千紗、雷斗、冬華、誰にも死んでほしくないんだ。だから岩手で待っててくれないか?」
チラッとこちらを見ると口を尖らせる。そして「むー」と唸っている。考えてくれるかな。
「私がいなくなったら嫌ですか?」
「んーそうだな。うん。嫌だぞ!」
「じゃあ、ついていきますね?」
「なんでそうなる!」
後ろではクスクスと笑っている。なんだか俺達の会話を楽しんでいるようだ。なんでこんな剣幕の千紗を前に笑っていられるのだろうか。
「刃さん、千紗さんには何を言っても無理じゃないっすか? ついてきますよ?」
「ワタクシもそう思いますわ。刃さんが千紗さんに口で勝てると思いませんわ」
二人とも笑いながら俺のことを馬鹿にしている。たしかに俺は口では勝てないが、そういうことじゃないんだがなぁ。なんでわかってくれないんだか。
困った顔をしていたんだろう。
「そんな困った顔しないでくださいよ? わかってますよ。私達の命のことを考えてくれているのは」
「だったら……」
「でも、だからって行かないのは違うと思います。私達はパーティです。同じ部隊です。いわば一心同体! ということは、離れることはできないのです!」
何も反論する言葉が見つからなかった。みんなそんな風に思ってくれていたんだな。
「わかった。一応武岩総長にも相談してみるからな」
「相談したって、付いて行きますよ?」
千紗は大分頑固をこじらせているようだ。
どこかの岩の様に心を動かさない最強ジスパーダを想起させる。
「さっ、東北基地に着きましたよ? 休みましょう。その前に報告ですかね?」
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