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第一章 秋田編
45.ヘルフレイム・ザ・サン
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「なっ! はやいっす!」
「目で追えないですわ!」
「みえない!」
目で追えているのは俺くらいなのだろう。
魔力で強化しているので見えている。
体にめぐらせて反応できるように準備する。
ベルーゼは必ず弱いやつを狙う。
「ほいっ!」
────ギィィィィンッッ
千紗へも放たれた水の魔力で纏った手刀を刀で弾き返す。それには悔しそうにしていたベルーゼ。また視界から消えると今度は冬華、そして雷斗と次々と狙っていく。
全て弾き返して三人を水魔力のエリア外へと連れていく。
「なんで!」
────キィィィンッ
「全部!」
────ギィィィンッ
「弾かれる!」
────キンッ
「魔力が!」
────ギィンッ
「ないはずなのに!」
────ギンッ
そして、水の包囲網を抜けた。
「俺の仲間は二度と傷つけさせない!」
自分の口から出た言葉に、自分でも驚く。以前の仲間の記憶はないはずなのになぜそんなことを言ってしまうのか。
内から湧き上がる何かが俺に力をくれる。
魔素を取り込み俺の体は魔力で満たされていく。
「俺の最上位魔法を見せよう」
俺は人差し指を目の前に突き出し小さな青い火の玉を出す。それを小さくして魔力を込めていく。段々と濃くなっていく青。
ビー玉程のその玉をベルーゼへと射出する。
「ハハハハハハッ! もう魔力ないんでしょ? そんな小さな魔法がボクに聞くわけないだろう? 避けちゃうよぉ」
ヒョイヒョイとその魔法を得意気に避けている。
中心部に差し掛かると急激に大きくなり、直径10メートル程の青い球体。
「ヘルフレイム・ザ・サン」
太陽の如き熱を生み出し周囲を灼熱へと誘っていく。
目を開けていられないほどの光量で光青い太陽は皮膚を焦がされるほどの熱だった。
魔力の供給を絶つとフッと消え、涼しい風が頬を撫でる。若干焦げ臭いがそれも過ぎ去っていく。
その魔法の後にはクレーターができていてなにもなくなり遺跡さえも消え去ってしまっていた。
もちろん、祠も消え失せている。
「凄いっす……」
「凄すぎですわ」
「なんか。この世の物とは思えないわね」
「終わったな。やはり強くなっていたな……くっ」
あまりの虚脱感に膝をついてしまった。
「大丈夫っすか!? 最上位魔法を一人で行使するからっすよぉ!」
「はははっ。だな。俺のかつての仲間も一人で行使していた。だから俺もできると思ったんだ。」
「あれ? 仲間の記憶はないんじゃなかったんすか?」
「そのはずだったんだがな。思い出したんだよ。ハールスという名前の偉大な魔法使いだった」
◇◆◇
あの旅は俺達にとっていい思い出だった。
「ハールス! 俺にも魔法を教えてくれよ!」
「だぁめだ! 僕が魔法を教えたら魔王討伐の旅に付いて行く必要がなくなってしまうだろう?」
「いいじゃねぇかよぉ」
「だぁめだ! 諦めるんだな!」
そういいながらも魔法の基礎を教えてくれたのはハールスだったよな。
「魔力を練って手の先まで魔力を持っていくんだ。後は魔法のイメージをすれば自然と魔法として放たれる。いいな?」
「うん! やってみる!」
あの時は俺も若くて色々と聞いては実践してみて、失敗もした。でも、ハールスは何度でも教えてくれたよな。
白銀の肩まであるその長い髪と美貌からよくモテていつも女の子を追いかけていたことを覚えているよ。
俺達のパーティは男ばかりのパーティだったから女っ気がなくて不満をよく口にしていたよな。
若い時は俺も女の子を追いかけて『もっとも女好きな勇者パーティ』と言われていたっけ。あの時は笑ったもんだ。そんな俺達が魔王までたどり着いた。
情報が不足していた四天王が出てきたことにより俺達のパーティは壊滅したんだったよな。ハールスは魔素を吸収してほぼ無限に魔法を使えていたよな。なのにあの時は何故囮になるような真似をしたんだ?
必ずハールスは追い付いてくると信じていたんだ。それが最後まで来なかった。やられたんだと思って諦めていたんだ。
だが、記憶を取り戻して再び思ったことは、この魔素を吸収する方法であれば、あんな魔物ごときにやられるわけがないんだ。一体何があった?
◇◆◇
「空気中の魔素を体内魔力へと吸収するのを思いついたのはハールスだけだったんだ。偉大な発見だったが、魔王を討った後は必要がない。そして、時に強さは人を恐怖させる。だから秘匿したんだ」
「なるほど。そのハールスさんという人だけの専売特許だったんすね」
「そうだ。空気中の魔素を感じること自体が難しいからできる人も限られる」
「自分はやってみせるっす!」
「あぁ。できた方がいい。魔法を連発できるからな。それより、四天王のことを報告しないとな」
日が傾いていた。今から東北基地に戻れば丁度夕飯くらいだろう。
「今日は東北基地に戻りますよね?」
「あぁ。戻るか。今からなら夕食に間に合うだろう」
「私温かいの食べたたいわ!」
千紗は図太いな。命の危機にあったというのに。
「千紗は精神が強いんだな? 命の危機だっただろう? そんな飯の事よく考えられるな?」
「私は刃さんがいたから一つも心配してませんでした! それだけです!」
(いいことなのか?)
「目で追えないですわ!」
「みえない!」
目で追えているのは俺くらいなのだろう。
魔力で強化しているので見えている。
体にめぐらせて反応できるように準備する。
ベルーゼは必ず弱いやつを狙う。
「ほいっ!」
────ギィィィィンッッ
千紗へも放たれた水の魔力で纏った手刀を刀で弾き返す。それには悔しそうにしていたベルーゼ。また視界から消えると今度は冬華、そして雷斗と次々と狙っていく。
全て弾き返して三人を水魔力のエリア外へと連れていく。
「なんで!」
────キィィィンッ
「全部!」
────ギィィィンッ
「弾かれる!」
────キンッ
「魔力が!」
────ギィンッ
「ないはずなのに!」
────ギンッ
そして、水の包囲網を抜けた。
「俺の仲間は二度と傷つけさせない!」
自分の口から出た言葉に、自分でも驚く。以前の仲間の記憶はないはずなのになぜそんなことを言ってしまうのか。
内から湧き上がる何かが俺に力をくれる。
魔素を取り込み俺の体は魔力で満たされていく。
「俺の最上位魔法を見せよう」
俺は人差し指を目の前に突き出し小さな青い火の玉を出す。それを小さくして魔力を込めていく。段々と濃くなっていく青。
ビー玉程のその玉をベルーゼへと射出する。
「ハハハハハハッ! もう魔力ないんでしょ? そんな小さな魔法がボクに聞くわけないだろう? 避けちゃうよぉ」
ヒョイヒョイとその魔法を得意気に避けている。
中心部に差し掛かると急激に大きくなり、直径10メートル程の青い球体。
「ヘルフレイム・ザ・サン」
太陽の如き熱を生み出し周囲を灼熱へと誘っていく。
目を開けていられないほどの光量で光青い太陽は皮膚を焦がされるほどの熱だった。
魔力の供給を絶つとフッと消え、涼しい風が頬を撫でる。若干焦げ臭いがそれも過ぎ去っていく。
その魔法の後にはクレーターができていてなにもなくなり遺跡さえも消え去ってしまっていた。
もちろん、祠も消え失せている。
「凄いっす……」
「凄すぎですわ」
「なんか。この世の物とは思えないわね」
「終わったな。やはり強くなっていたな……くっ」
あまりの虚脱感に膝をついてしまった。
「大丈夫っすか!? 最上位魔法を一人で行使するからっすよぉ!」
「はははっ。だな。俺のかつての仲間も一人で行使していた。だから俺もできると思ったんだ。」
「あれ? 仲間の記憶はないんじゃなかったんすか?」
「そのはずだったんだがな。思い出したんだよ。ハールスという名前の偉大な魔法使いだった」
◇◆◇
あの旅は俺達にとっていい思い出だった。
「ハールス! 俺にも魔法を教えてくれよ!」
「だぁめだ! 僕が魔法を教えたら魔王討伐の旅に付いて行く必要がなくなってしまうだろう?」
「いいじゃねぇかよぉ」
「だぁめだ! 諦めるんだな!」
そういいながらも魔法の基礎を教えてくれたのはハールスだったよな。
「魔力を練って手の先まで魔力を持っていくんだ。後は魔法のイメージをすれば自然と魔法として放たれる。いいな?」
「うん! やってみる!」
あの時は俺も若くて色々と聞いては実践してみて、失敗もした。でも、ハールスは何度でも教えてくれたよな。
白銀の肩まであるその長い髪と美貌からよくモテていつも女の子を追いかけていたことを覚えているよ。
俺達のパーティは男ばかりのパーティだったから女っ気がなくて不満をよく口にしていたよな。
若い時は俺も女の子を追いかけて『もっとも女好きな勇者パーティ』と言われていたっけ。あの時は笑ったもんだ。そんな俺達が魔王までたどり着いた。
情報が不足していた四天王が出てきたことにより俺達のパーティは壊滅したんだったよな。ハールスは魔素を吸収してほぼ無限に魔法を使えていたよな。なのにあの時は何故囮になるような真似をしたんだ?
必ずハールスは追い付いてくると信じていたんだ。それが最後まで来なかった。やられたんだと思って諦めていたんだ。
だが、記憶を取り戻して再び思ったことは、この魔素を吸収する方法であれば、あんな魔物ごときにやられるわけがないんだ。一体何があった?
◇◆◇
「空気中の魔素を体内魔力へと吸収するのを思いついたのはハールスだけだったんだ。偉大な発見だったが、魔王を討った後は必要がない。そして、時に強さは人を恐怖させる。だから秘匿したんだ」
「なるほど。そのハールスさんという人だけの専売特許だったんすね」
「そうだ。空気中の魔素を感じること自体が難しいからできる人も限られる」
「自分はやってみせるっす!」
「あぁ。できた方がいい。魔法を連発できるからな。それより、四天王のことを報告しないとな」
日が傾いていた。今から東北基地に戻れば丁度夕飯くらいだろう。
「今日は東北基地に戻りますよね?」
「あぁ。戻るか。今からなら夕食に間に合うだろう」
「私温かいの食べたたいわ!」
千紗は図太いな。命の危機にあったというのに。
「千紗は精神が強いんだな? 命の危機だっただろう? そんな飯の事よく考えられるな?」
「私は刃さんがいたから一つも心配してませんでした! それだけです!」
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