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24.ネムさんに恋する
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ネムさんを探していた俺はただ今公園を探索中。そこでベンチに座って項垂れている人を発見した。
この人大丈夫かなぁと思っていると「うぅぅぅぅぅ」とその人が唸りだした。なんだか放っておけないな。
「あのー。大丈夫ですか? なんか嫌なことでもあったんですか?」
その人にそう話しかけるといきなりガバッと顔を上げた。
ネムさんだった。
「あれ? ネムさん?」
「マセラさん……こんな所を。寄りにもよってマセラさんに見られるなんて……」
よく見ると髪はボサボサ服もヨレっとした物を着ている。伏し目がちな目をしていてなんだかクマができている。
「ネムさん、どうしました?」
「ううん。なんでもないの。ただちょっと具合が悪くて」
「そうですか」
淡白にも思える返事をしたのには俺的にはそんなの気にしませんよという意味合いを込めてだった。なんとなく隣に座る。
「マセラさん、ガッカリしちゃいましたよね? こんな私の姿を見たら。私……実は人と接するのがあんまり得意じゃないんです」
「ははははっ」
思わず笑ってしまった。
なんか安心したのだ。
こんな悩むAIなんてあるか?
悩みは人間が、意志を持った人が生み出すものだ。
「笑っちゃうよねぇぇぇ」
ますます落ち込み出したネムさんに慌てる。
「あぁっ! 違いますよ? 安心したんです。なんかネムさんが生きていてくれているんだなと思って」
「生きていて安心?」
目を丸くしてキョトンとした顔をしている。
何を言っているんだろうといった感情なのかもしれない。
「はい! ネムさんは生きている! こんなに嬉しいことは無いです! ハッハッハッ!」
傍から見たらヤバいやつである。
「私が生きていることが……そんなに嬉しい?」
「はい! とっても!」
「ふふふっ。変な人」
「それは……否定できませんね」
口に手を当てて可愛らしく笑う姿は俺の心を締め上げていく。
胸の苦しさを感じながら顔が熱を帯びるのが分かる。
「マセラさん、顔真っ赤! ははははっ!」
「えっ!? 女の人と話すの慣れてなくて! すみません! は、恥ずかしくて……」
大きい口を空けて笑うネムさん。
その姿を見た俺は本当に恋に落ちてしまった。
結婚したい。運命の人だと思ったのは本当で、結婚したいとも思っていた。
けれど、もしかしたらそれは恋とはまた違っていたかもしれない。
だって、今これが恋なんだって思ったから。
俺は今までチヤホヤされてこなかったといえば嘘になる。でも、本当に好きな人なんて出来やしなかった。
みんな俺の事は見ていない。甲子園を優勝した男。プロ野球選手の男。WBCに出てた代表選手の男。
みんな俺に貼られたラベルを求めて近づいてきた。そしてそんな人達に俺は酷い対応もしていたと思う。素っ気ない態度をとったり、誘いを断ったり。
俺を一人の人として見てくれていた人はいなかった。みんなラベルを見て近づいてきたんだ。それがとてつもなく嫌で女の人とは距離を置いていた。
「ふふふっ。可愛い所があるのね? マセラさん、いつも勢いが凄いからなんか女の人に言いよるのに慣れてるのかと思ってた」
「はははっ。いや。実は全然で、ネムさんは運命の人だと感じたからもう恥ずかしいとか言っていられないと思って……」
照れ隠しに頭を掻きながらそういうと。
「意外な一面が見れて嬉しい」
「俺もですよ。ネムさんが人が苦手だなんて」
「いつも父に笑顔で接しろって言われているから。冒険者の人なんてナンパして来たりおしり触ってきたりするんですよ? もう本当に嫌になっちゃう」
俺の身体からはドス黒いオーラが出ているのではないかと思うくらいの苛立ちが心を襲う。手がプルプルしてきた。なんか身体がプルプルと震えてきた。あぁ。我慢できない。
「ネムさんに手ぇ出したヤツはどこだゴラァァァァァ! 出てこいぃぃぃぃぃ! 永遠のデスペナを食らわす!」
天に向かって大きい声で叫んでしまった。
叫んでからやってしまったことに気づいた。
「あっ、すみません。ちょっと怒りがピークになると発散しないとどうにも出来ないタチでして、昔からこれで問題も起きたことがあるんですが。いやーうるさかったですよね……」
ネムさんは目を見開いてこちらを見たまま固まっている。
しばらくすると再起動したように動き出した。
「ちょっとビックリしました。マセラさんもそんなに怒ったりするんですね。凄い顔でしたよ?」
「ですよね。すみません」
「…………ます」
ネムさんが何かを言ったみたいだが聞き取れなかった。やっぱり不味かったかなと思いながら俯く。
「すみません。うるさかっ────」
「────ありがとうございます!」
「えっ!?」
「私の為にそんなに怒ってくれて、ありがとうございます。なんかそんなに思ってくれる人がいるんだと思うと嬉しいです」
少し頬を赤らめながらそう言ってくれるネムさん。モジモジしていて抱き締めたくなる思いに駆られる。
「なんか、マセラさんとは仲良くなれそう……かな。えへへっ」
照れたような蕩けるようなネムさんの顔が俺の脳裏に焼き付いた。
俺、絶対ネムさんを嫁にする。
この人大丈夫かなぁと思っていると「うぅぅぅぅぅ」とその人が唸りだした。なんだか放っておけないな。
「あのー。大丈夫ですか? なんか嫌なことでもあったんですか?」
その人にそう話しかけるといきなりガバッと顔を上げた。
ネムさんだった。
「あれ? ネムさん?」
「マセラさん……こんな所を。寄りにもよってマセラさんに見られるなんて……」
よく見ると髪はボサボサ服もヨレっとした物を着ている。伏し目がちな目をしていてなんだかクマができている。
「ネムさん、どうしました?」
「ううん。なんでもないの。ただちょっと具合が悪くて」
「そうですか」
淡白にも思える返事をしたのには俺的にはそんなの気にしませんよという意味合いを込めてだった。なんとなく隣に座る。
「マセラさん、ガッカリしちゃいましたよね? こんな私の姿を見たら。私……実は人と接するのがあんまり得意じゃないんです」
「ははははっ」
思わず笑ってしまった。
なんか安心したのだ。
こんな悩むAIなんてあるか?
悩みは人間が、意志を持った人が生み出すものだ。
「笑っちゃうよねぇぇぇ」
ますます落ち込み出したネムさんに慌てる。
「あぁっ! 違いますよ? 安心したんです。なんかネムさんが生きていてくれているんだなと思って」
「生きていて安心?」
目を丸くしてキョトンとした顔をしている。
何を言っているんだろうといった感情なのかもしれない。
「はい! ネムさんは生きている! こんなに嬉しいことは無いです! ハッハッハッ!」
傍から見たらヤバいやつである。
「私が生きていることが……そんなに嬉しい?」
「はい! とっても!」
「ふふふっ。変な人」
「それは……否定できませんね」
口に手を当てて可愛らしく笑う姿は俺の心を締め上げていく。
胸の苦しさを感じながら顔が熱を帯びるのが分かる。
「マセラさん、顔真っ赤! ははははっ!」
「えっ!? 女の人と話すの慣れてなくて! すみません! は、恥ずかしくて……」
大きい口を空けて笑うネムさん。
その姿を見た俺は本当に恋に落ちてしまった。
結婚したい。運命の人だと思ったのは本当で、結婚したいとも思っていた。
けれど、もしかしたらそれは恋とはまた違っていたかもしれない。
だって、今これが恋なんだって思ったから。
俺は今までチヤホヤされてこなかったといえば嘘になる。でも、本当に好きな人なんて出来やしなかった。
みんな俺の事は見ていない。甲子園を優勝した男。プロ野球選手の男。WBCに出てた代表選手の男。
みんな俺に貼られたラベルを求めて近づいてきた。そしてそんな人達に俺は酷い対応もしていたと思う。素っ気ない態度をとったり、誘いを断ったり。
俺を一人の人として見てくれていた人はいなかった。みんなラベルを見て近づいてきたんだ。それがとてつもなく嫌で女の人とは距離を置いていた。
「ふふふっ。可愛い所があるのね? マセラさん、いつも勢いが凄いからなんか女の人に言いよるのに慣れてるのかと思ってた」
「はははっ。いや。実は全然で、ネムさんは運命の人だと感じたからもう恥ずかしいとか言っていられないと思って……」
照れ隠しに頭を掻きながらそういうと。
「意外な一面が見れて嬉しい」
「俺もですよ。ネムさんが人が苦手だなんて」
「いつも父に笑顔で接しろって言われているから。冒険者の人なんてナンパして来たりおしり触ってきたりするんですよ? もう本当に嫌になっちゃう」
俺の身体からはドス黒いオーラが出ているのではないかと思うくらいの苛立ちが心を襲う。手がプルプルしてきた。なんか身体がプルプルと震えてきた。あぁ。我慢できない。
「ネムさんに手ぇ出したヤツはどこだゴラァァァァァ! 出てこいぃぃぃぃぃ! 永遠のデスペナを食らわす!」
天に向かって大きい声で叫んでしまった。
叫んでからやってしまったことに気づいた。
「あっ、すみません。ちょっと怒りがピークになると発散しないとどうにも出来ないタチでして、昔からこれで問題も起きたことがあるんですが。いやーうるさかったですよね……」
ネムさんは目を見開いてこちらを見たまま固まっている。
しばらくすると再起動したように動き出した。
「ちょっとビックリしました。マセラさんもそんなに怒ったりするんですね。凄い顔でしたよ?」
「ですよね。すみません」
「…………ます」
ネムさんが何かを言ったみたいだが聞き取れなかった。やっぱり不味かったかなと思いながら俯く。
「すみません。うるさかっ────」
「────ありがとうございます!」
「えっ!?」
「私の為にそんなに怒ってくれて、ありがとうございます。なんかそんなに思ってくれる人がいるんだと思うと嬉しいです」
少し頬を赤らめながらそう言ってくれるネムさん。モジモジしていて抱き締めたくなる思いに駆られる。
「なんか、マセラさんとは仲良くなれそう……かな。えへへっ」
照れたような蕩けるようなネムさんの顔が俺の脳裏に焼き付いた。
俺、絶対ネムさんを嫁にする。
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