NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~

ゆる弥

文字の大きさ
35 / 46

35.奮い立つ

しおりを挟む
 いよいよこの日はイベントの始まる週末の土曜日。
 リアルの時刻午前九時から始まることになっている。
 俺は飯をしっかり食べてことに挑む。

 インするとたくさんの人が集まっていた。
 初めて見るその人だかり。
 このゲームを始めてこんなに人がいるのを見るのは、初めてであった。

 俺が街の中にクランメンバーを探しに歩いていくと、定食屋『膳』の前にキンドさんがいるのが見えた。
 
 そこに手を振りながら向かっていく。キンドさんが中に声をかけているようだ。少しするとネムさんが顔を見せた。

「ネムさん! おはようございます! この街は絶対守りますから!」

「おはようございます! マセラさん! みんながいるから安心してるよ! この街は安全よね?」

 いつもの可愛い顔で束ねた紫の髪を振りながらガッツポーズをする。

「はい! ネムさんには指一本触れさせやしません! それより、店は大丈夫ですか?」

「ありがと! お店は大丈夫。みんな守るために出てくれるからお客さんいないんだ」

 笑いながらも少し寂しげな顔をするネムさん。その顔に胸が締め付けられる。

「この街を救ったら、必ず、またご飯を食べに来ます! 絶対です!」

「うん! マセラさん。死なないでね?」

「必ず、生きて帰ってきます!」

 俺がネムさんの前で熱く語っている横でキンドさんが。

「まぁ。おっちんでも生き返るしな」

 と冷めたことをいっていた。

 そんなやりとりをしているとぞくぞくと集まってきた。

「おぉ。お熱いねぇ。最後の別れってか? ギャハハハハ!」

「止めといた方がええで? 今、マセラスイッチはいっとるから」

 キンドさんが止めるようにバカラさんに注意している。たしかに俺は今アドレナリンが出ていて、イケイケの精神状態になっている。これはWBC決勝を迎えるときの状態ににている。

「バカラさん。マセラ様をからかわないでください」

「別にいいけど、うるさいのはやめて。恥ずかしいから。人がいっぱいいるのに」

 シルフィとアルトも冷めている。バカラさんに対してだが。

「みなさん。絶対にこの街は守りますよ!?」

「わぁってるから。でかい声出すな!」

 バカラさんに頭を叩かれた。
 ダメージはくらわないんだけどいたいんだよな。

「やぁ。久しぶりだね。マセラ」

 声をかけてきたのは『白雷の空』のクラマスであるソラさんであった。
 あいかわらず、後ろに沢山の人を伴っている。

「おひさしぶりです! ソラさん」

「協力の話をくれてありがとう。こちらとしても助かるよ。ボクたちだけだと限界があってね。どうやらナンバー1の『攻略連合』はでないみたいだね」

「やっぱりそうなんですか。まぁ、大丈夫ですよ。これだけの人数いれば!」

 俺は本心でそう思っていた。これだけの人数入れば魔物の軍勢など蹴散らせるだろうと。

「おうソラ。俺には挨拶なしかぁ!?」

 後ろから怒鳴ってきたのはバカラさん。

「バカラさん。落ち着いて下さい。対等の立場ですよ。どちらが上とかないんですから」

「ぐぬぬぬ。ソラ。協力感謝する」

 バカラさんが歯を食い縛っている姿を戦々恐々として見ていた。頼むから殴りかからないでくれよと願いながら。

「あぁ。僕としても渡りに船だったからね。よかったよ。まぁ、バカラに言われていたら受けない話しだっただろうけどね」

「あぁぁん!? なんだとゴラァ!?」

「話を受けてやってんだ! 文句あんのがゴラァ!?」

 二人が顔を近づけながらいきなり臨戦態勢にはいる。

「ソラさん。バカラさん。落ち着いて。今はそれどころではありません。いいですか?」

 俺が真ん中に入り二人を突き放す。

「ちっ! しかたねぇ」

「あぁ。マセラくん。すまないね」

 少しすると離れたところから黒い鎧と兜を装備した人が歩いてきた。人か?

「防衛について話し合いたいのだが。みんなで協力するだろ?」

 その言葉とは裏腹に協力しないと排除するような声色が含まれていた気がする。
 こちらは協力するつもりだったが、協力しない人はどうなるんだろう。
 そんなことを考えながら、ソラさんを見る。

「ボクが話をしてくるから待っててくれ」

「はい! お願いします」

 俺はお願いするとソラさんを通して話し合いをしてもらった。
 イベント開始まであと十五分しかないから、急いでもらわないと。

 雑談をしながら待っていると五分前になってソラさんが戻ってきた。

「なんだか言うこと聞けとか指示通りやれとか言われたがよ。ようは俺達の下っ端クランは街の入口の前で防衛だそうだ」

「えっ!? 『白雷の空』を下っ端扱いですか?」

 俺がそういうと眉間に皺を寄せて目を細め虚空を睨み付けていたソラさんがこちらを見る。

「やつらは二位、俺達は八位ということなのさ。それだけ」

「でも……」

「いいんだ。街の近くを防衛ということは、何もなければただ突っ立っているだけということ。でも、危なくなったら、最後の要ってことだ。そう考えれば、やる気が出てくるだろう?」

 ソラさんはやっぱりすごい。バカラさんも俺達を奮い立たせる言葉を発したりするが、このソラさんはその上を行くかもしれない。だって、こんなにもやる気に満ちてくるんだから。

「うおぉぉぉぉぉ! やってやろぉぉじゃないかぁぁぁぁ!」

「うぅるせぇ! マセラ」
「うっさいわ。恐いわ」
「いい気合いだな」
「マセラ様勇ましいですわ」
「マセラ、黙って」

 痛烈な突っ込みを受けながらも街の入口へとすすんでいく。

 いよいよ。イベントが始まる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...