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38.過去のトラウマ
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ブラックアントをなんとか倒してから少し休憩する時間があった。
所定の位置に戻っていると『嵐の夜明け』の幹部がやって来た。
「いやー。やられたよ。あんたすげぇな! どんなチート使ってるの?」
「えっ? チートなんて使ってませんけど。ただのアイテムとスキルのなせる技です」
俺は真面目に答えたのだが口角を上げたままこちらを見つめている。一体何をしたいんだろうか。
「なぁ! みんなおかしいと思わないかぁ!? だって俺たち、ランキング二位のチームが苦戦する敵をこんなランカーでもないクランの一人が倒すなんてよぉ!」
その男は仰々しく手を広げてみんなの注目を集めようとしている。そしてみんなの視線はその男に集まっていった。
「そうだよな!」
「おかしいぞ!」
「チートだ!」
「インチキじゃねぇか!」
どんどん声がヒートアップしていく。周りのみんなに取り囲まれた俺はボーゼンとしている。一体何が起きているのか理解できない。
「チート!」
「「チート!」」
「「「チート!」」」
こうなったのは実は初めてじゃない。現実世界でもあった。
あれは小学校の時、野球の試合で優勝した時だ。アイツがうまいのは親が金持ちでコーチを雇ってるからだという話が広まった。
コーチがいたのは事実だった。ただ、金持ちとかではなくただ親戚が野球をやっていたから教えて貰っていただけだった。
あの時も俺はみんなに囲まれてズルいだの卑怯だだの。野球をやめろだのと言われた。俺は耳を抑えて蹲った。それしかできなかった。
今も同じ体勢になっている。
「ギャハハハハハハハ!」
バカラさんの声が響き渡る。
「自分のできないことができる奴はチートだっていうのか!? あぁっ!? じゃあ、お前は何かやったのか!? 強くなるために!?」
「レベル上げとか……」
一人の男にバカラさんは問いかけるとそう答えた。
「ギャハハハハハ! そんなの誰でもやってんだろうが!? あんたは何かやったのか!?」
「そりゃ、攻略情報調べたりとか少し運動するようにしたりとか」
その聞かれた女性はそう答えた。
「ギャハハハハハ! その程度!」
大声でそう断言すると近づいてくる足音がした。
「コイツは、違う! 培ってきたものが違う! 小さい頃から一つの事をコツコツ、コツコツ積み重ねてきて。磨いて磨いて磨き上げて! だから、こんな芸当ができるんだ!」
バカラさんは両手を広げて皆に訴えかける。
「コイツの鍛え上げられた動体視力は凄い! 野球のプロが投げる玉も止まって見える時があるくらいだ! そうでなけりゃ、あの速度で動いても何もできやしない!」
そこまで言うと一拍置いて息を大きく吸い込んだ。
「いいかぁ!? 何も努力のしていない奴らでは到底届くことができない能力をコイツは持っている! だから、AGIに特化していても動けるんだ! お前たちのような口だけ動かしているような奴らに! コイツのことを! どうこう言う! 資格は! ない!」
周りの人達は静まり返った。
反論ができないのだろう。
「だからって、チートを使ってないって言う証拠はあるのか!?」
またこいつも『嵐の夜明け』のクランメンバーだった。
「お前らはもう終わりだ。通報システムを使った。そろそろ……」
『イベント中において、通報案件が発生した為、ただ今イベントを中断しています! この事案について調査しましたが、マセラ様にチートなどのコードが使われた形跡はありませんでした。正規のプレイヤーです』
運営の回答が急に頭の中に響いた。
バカラさんが通報していてくれたみたいだ。
俺はまだ蹲ったままだ。
「ふんっ! なんだよ!」
そういう『嵐の夜明け』の幹部。
『今回の対象クラン、嵐の夜明けは解析の結果、恫喝、脅迫、詐欺、暴行、女性プレイヤーに対する迷惑行為からわいせつ行為までが確認された為クランメンバーのアカウントは消滅します』
「はぁ!? なんでだよ! 俺たちはゲームを楽しんでいただけだ! おかしいだろ!」
「俺たちだって楽しみたかったんだ!」
「ゲームだからいいだろう!?」
「そうだ! そうd────」
クランのメンバーたちは頭からダメージエフェクトの様なものが発生し、消滅して行った。
「ギャハハハハハ! ざまぁねぇ! ギャハハハハハハハ!」
「あーぁ。マセラをチート言うのも気持ち分かるんやけどなぁ。あれはアカンわ」
「マセラを侮辱したのだ。報いをうけんとな」
キンドとシルドは冷静に捉えていた。
「マセラ様をチート呼ばわりなど、あの方の個人情報を入手して社会的に抹消してしまおうかしら」
「アイツらは胸糞悪かった。よかった。居なくなって」
シルフィとアルトは眉毛を吊り上げて言い捨てた。
「おい! マセラ! 顔上げろよ! せっかく奴らが消えていく様が面白かったのによぉ。貴重な場面見逃したな!」
顔を上げるとバカラさんが得意げに笑っていた。周りにいたみんなも微笑んでくれている。俺は本当にいい仲間に出会えたんだな。
その時だった。
天からフワフワとした何かが降り注いできた。
冷たいなにかだ。
「おぉ! 雪じゃねぇか!」
『これよりイベントを再開致します』
運営のアナウンスが流れたのであった。
所定の位置に戻っていると『嵐の夜明け』の幹部がやって来た。
「いやー。やられたよ。あんたすげぇな! どんなチート使ってるの?」
「えっ? チートなんて使ってませんけど。ただのアイテムとスキルのなせる技です」
俺は真面目に答えたのだが口角を上げたままこちらを見つめている。一体何をしたいんだろうか。
「なぁ! みんなおかしいと思わないかぁ!? だって俺たち、ランキング二位のチームが苦戦する敵をこんなランカーでもないクランの一人が倒すなんてよぉ!」
その男は仰々しく手を広げてみんなの注目を集めようとしている。そしてみんなの視線はその男に集まっていった。
「そうだよな!」
「おかしいぞ!」
「チートだ!」
「インチキじゃねぇか!」
どんどん声がヒートアップしていく。周りのみんなに取り囲まれた俺はボーゼンとしている。一体何が起きているのか理解できない。
「チート!」
「「チート!」」
「「「チート!」」」
こうなったのは実は初めてじゃない。現実世界でもあった。
あれは小学校の時、野球の試合で優勝した時だ。アイツがうまいのは親が金持ちでコーチを雇ってるからだという話が広まった。
コーチがいたのは事実だった。ただ、金持ちとかではなくただ親戚が野球をやっていたから教えて貰っていただけだった。
あの時も俺はみんなに囲まれてズルいだの卑怯だだの。野球をやめろだのと言われた。俺は耳を抑えて蹲った。それしかできなかった。
今も同じ体勢になっている。
「ギャハハハハハハハ!」
バカラさんの声が響き渡る。
「自分のできないことができる奴はチートだっていうのか!? あぁっ!? じゃあ、お前は何かやったのか!? 強くなるために!?」
「レベル上げとか……」
一人の男にバカラさんは問いかけるとそう答えた。
「ギャハハハハハ! そんなの誰でもやってんだろうが!? あんたは何かやったのか!?」
「そりゃ、攻略情報調べたりとか少し運動するようにしたりとか」
その聞かれた女性はそう答えた。
「ギャハハハハハ! その程度!」
大声でそう断言すると近づいてくる足音がした。
「コイツは、違う! 培ってきたものが違う! 小さい頃から一つの事をコツコツ、コツコツ積み重ねてきて。磨いて磨いて磨き上げて! だから、こんな芸当ができるんだ!」
バカラさんは両手を広げて皆に訴えかける。
「コイツの鍛え上げられた動体視力は凄い! 野球のプロが投げる玉も止まって見える時があるくらいだ! そうでなけりゃ、あの速度で動いても何もできやしない!」
そこまで言うと一拍置いて息を大きく吸い込んだ。
「いいかぁ!? 何も努力のしていない奴らでは到底届くことができない能力をコイツは持っている! だから、AGIに特化していても動けるんだ! お前たちのような口だけ動かしているような奴らに! コイツのことを! どうこう言う! 資格は! ない!」
周りの人達は静まり返った。
反論ができないのだろう。
「だからって、チートを使ってないって言う証拠はあるのか!?」
またこいつも『嵐の夜明け』のクランメンバーだった。
「お前らはもう終わりだ。通報システムを使った。そろそろ……」
『イベント中において、通報案件が発生した為、ただ今イベントを中断しています! この事案について調査しましたが、マセラ様にチートなどのコードが使われた形跡はありませんでした。正規のプレイヤーです』
運営の回答が急に頭の中に響いた。
バカラさんが通報していてくれたみたいだ。
俺はまだ蹲ったままだ。
「ふんっ! なんだよ!」
そういう『嵐の夜明け』の幹部。
『今回の対象クラン、嵐の夜明けは解析の結果、恫喝、脅迫、詐欺、暴行、女性プレイヤーに対する迷惑行為からわいせつ行為までが確認された為クランメンバーのアカウントは消滅します』
「はぁ!? なんでだよ! 俺たちはゲームを楽しんでいただけだ! おかしいだろ!」
「俺たちだって楽しみたかったんだ!」
「ゲームだからいいだろう!?」
「そうだ! そうd────」
クランのメンバーたちは頭からダメージエフェクトの様なものが発生し、消滅して行った。
「ギャハハハハハ! ざまぁねぇ! ギャハハハハハハハ!」
「あーぁ。マセラをチート言うのも気持ち分かるんやけどなぁ。あれはアカンわ」
「マセラを侮辱したのだ。報いをうけんとな」
キンドとシルドは冷静に捉えていた。
「マセラ様をチート呼ばわりなど、あの方の個人情報を入手して社会的に抹消してしまおうかしら」
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シルフィとアルトは眉毛を吊り上げて言い捨てた。
「おい! マセラ! 顔上げろよ! せっかく奴らが消えていく様が面白かったのによぉ。貴重な場面見逃したな!」
顔を上げるとバカラさんが得意げに笑っていた。周りにいたみんなも微笑んでくれている。俺は本当にいい仲間に出会えたんだな。
その時だった。
天からフワフワとした何かが降り注いできた。
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