追放されたら無能スキルで無双する

ゆる弥

文字の大きさ
28 / 37

28.視聴者 パート2

しおりを挟む
「配信されとったの観たか?」

「…………はぃ」

「あそこまでやって、なんで仕留められんねん!」

「すんません!」

 頭を下げる男。
 その頭を踏みながらため息を吐く。
 そして、頭をグリグリと踏みにじりながら唾を吐いた。

「はぁぁ。ホント、使えんわぁぁ。なんなん? 自分? どないしようなぁ。もうあんさん、自分で当たれや。確実に仕留めてこい」

「は、はぃ」

「もし失敗しても……わかってんな?」

「……はぃ」

「次の替え用意してからいけや?」

「……それは……」

「わかってんなぁ?」

「はぃ」

 頭を踏んでいた男は足を離すと振り返り去っていった。
 踏みにじられていた男は立ち上がり汚れをパッパッと落とすとヨロヨロと立ち去った。

「つ……次で仕留めないと……僕は……」

◇◆◇

 ジィッと端末を見つめる男の子。

 座って見ている、その子の横の机にはバングルがきらりと光っていた。

「この人に……これ渡したいな」

 その子の後ろには様々なアクセサリーが並んでいた。
 一体。何者なのだろうか。

◇◆◇

「わぁぁぁ! 凄いわ! 猛!」

「あぁ。流石は俺達の子だな。しかし、さっきの映像を見るに、何者かの介入があったようだな?」

「そうねぇ。少し心配ね……」

「はぁ。俺達が一肌脱ぐか?」

「ちょっと過保護な気がするけれど……」

「しかし、猛になにかあってからでは遅いだろう?」

 そう言うと手を叩き、人を呼び寄せた。

「はっ!」

 黒ずくめの忍者のような姿の者がどこからとも無く現れたのだった。

「颯《はやて》、彼らの周りで不穏な動きがないか探ってくれるか?」

「はっ! お任せを!」

 煙のように姿を消した。

「これで少し状況が分かることだろう。しかし、彼らを狙う者か……トップを守るのに必死の彼……かねぇ」

◇◆◇

「アイツ……やるじゃないか」

 クビッとビールを煽る。
 端末をジィッとみて何かを考えているようだ。
 少し長く息を吐く。

 この男は剣神と呼ばれる仁である。
 何やら考え込んでいるようだ。

「うーむ。そろそろいいかもな……戻っても」

 何を戻す気なんだろうか。

◇◆◇

「魔法を合成ですって!? 邪道な! そんな邪道なことで強くなるなんて許せない!」

 怒り狂っているのはダンジョンであった奈々の母親である。
 その隣では美々が映像を見て微笑んでいた。

「でも……すごい。だって……私はできない」

「あんな邪道なことしなくていいわ!」

 この世界の常識としては魔法は合成できないものという認識になっているのだ。
 なぜかというのは研究者が論文を出している。

 なんでも、属性ごとに魔力の波長があり、それを合わせることは出来ないから合成魔法は不可能に近いとそう言われていた。

 しかし、奈々は出来ている。それはスキルの八属性目の時属性が波長を合わせる役割を担っているようなのだ。それは、研究者さえ知らない。

「奈々……凄い」

 実は合成魔法が使えるのは奈々が唯一かもしれない。
 しかし、制約があるのは本人達しか知らないこと。

◇◆◇

「この無能が何をしているんだ?」

「さあ? 整理なんていう、何にも使えない無能なスキルでしたのにね?」

 話をしているのはオールバックの白髪の四十代半ば程のキチッとしたスーツを着ている男性と、同じくキチッとドレスのようなものを着ている女性である。

「どうなってこうなったかは知らんが……有用な人間なのなら使わない手は無いかもしれんな」

「そうですわねぇ。このランキングシステムの意味は私達身内の人間しか知らないことですし。ランキングの上位に上がってくれば、必然的に使える者という証明になりますしね?」

「そうだな。そしたら、本人の意思は関係ない」

「ですわね。周りが勝手に求めてくれますわ」

「ふっ。そうなるのなら、それが必然だったのだろうな」

「えぇ。無能が役に立つ人間になったのならそれはラッキーですわ。その後の栄光も私達のモノになるという事ですわね?」

「あぁ。そうなるな」

 一体何の話をしているのだろうか。
 謎は深まる。

◇◆◇

「ちょっと! 真理ちゃん! 配信見た? 凄かったわね? なんだか上手くやってるじゃない?」

「薫さん! 見ましたよぉ。なんか、遠くに行っちゃったみたいで少し寂しいですよぉ」

 カウンターに肘をつきながらスキンヘッドの大男がクネクネしながら話している。
 少し残念そうな感じで話す真理。

「最下位の方ですけど、ランカーにもなった訳じゃないですかぁ」

「そうよねぇ。悪い虫がいっぱい寄ってきそうで嫌だわぁ。実はね、私、異動願い出してるのよ」

 目を見開いて驚いている真理。

「えっ……実は私もなんですよね……」

「ちょっとぉ。迷京都にじゃないでしょうね!?」

 前のめりに聞いてくる薫。
 タジタジの真理は正直に答えるしか無かったようだ。

「そ……そうです……ダメ……ですかね?」

「ここの支部どうするのよ!?」

「いやー。私達じゃなくても大丈夫何じゃないですか?」

「……まっ。そうね?」

 この田舎の支部からは後にこの二人は居なくなる。そして、突然受付に現れ、収斗達のことを驚かすことになるのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

処理中です...